食べもの日記。

食べるよりも、食べるものを作る過程が楽しくなってきたこの頃。 食べ物に纏わる日々のよし…

食べもの日記。

食べるよりも、食べるものを作る過程が楽しくなってきたこの頃。 食べ物に纏わる日々のよしなしごとを綴っています。 たまに脱線あり

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いちじくのブリュレ

吹く風に冷たさを感じ、金木犀の香りが鼻の奥を燻る。 足元には茶色い落ち葉。散歩に出かけるとどこからか大きな竹箒がテンポよく地面をこする音が響いてくる。 何だか急に秋めいてきたと思う、今日この頃。 八百屋さんの店先にはスイカが堂々と居座っていたのに、気がつけばブドウやみかんが顔を並べ始めた。 秋の果実の色どりに見惚れる中、小さなスペースで大事そうに並べられているイチジクに目が留まった。 摘んでまだ浅い、野菜感残るイチジク。 ブリュレにして、食べようと思った。 熟して甘

    • 湯むきトマト

      トマトをお湯に入れると、皮がペロンと剥ける。 その割に内側の実はしっかりしていて、ジューシーさも健在だ。 時折、この湯むきトマトを食べたくなって仕方がなくなる。 それもミニトマトじゃなくて、大きいトマトの。 大きいトマトを料理に使う時、さあ作るぞ、と腕まくりをしてから台所に立つ。 何でかちょっと気を張るのだ。湯むきトマトは尚のこと。 鍋にたっぷりの水を張って、強火で一気に煮立たせる。 その間に、トマトの表面に包丁を滑らせて十字の切れ目を入れたなら、1つずつ静かに湯に沈め

      • 程々に。

        何年ぶりかに、口内炎ができた。 というのも、ひょんなことから近隣のカフェでお菓子を焼かせてもらえることになり、打ち合わせては試作をして、味見をして改善して..を毎日の様に繰り返しているからだと思う。 焼き菓子をこんなに連日食べていたことはここ数年なかったのだろう、小麦のお菓子に水分を奪われ口内炎を更に刺激するので、味見どころではなくなってしまった。 お菓子を焼くのが楽しいので一日中厨房に立つことは全く問題ないのだけれど、やっぱり体力にも胃袋にも限界というのがあり、疲れと食

        • しその実の醤油漬け

          この夏は、しそジュースを沢山作った。 お隣さんにいただいた大葉達がそれはそれは元気に増え続けたので、自分たちの分も幾度となく作り、両親たちや友人たちへの手土産に持っていったりもした。 週に一度は、しその香りを織り交ぜた湯気が台所に立ち込めていた夏だった。 途中で植えた赤紫蘇も順調に育っていたので、時折混ぜて可愛らしい色に仕上げては心を躍らせたりもして、、我ながらよく飽きもせず作り続けていたと思う。 お盆を過ぎ夏も終わりに近付いてくると、摘んでは葉っぱをますます茂らせていた

        いちじくのブリュレ

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        • おやつ帳
          11本
        • ごはん帳
          4本
        • 手仕事帳
          10本
        • 雑記帳
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        • 菜園帳
          5本
        • 道具帳
          2本

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          バナナシェイク

          台風に備えて買い込もうと、家から少し離れた大きめのスーパーに駆け込んだ。 特別バナナを買うつもりは無かったのだけれど、シュガースポットを沢山身に纏ったバナナが割引棚に並んでいるのをみて、2袋買ってしまった。 いつの日も熟されたバナナには目がない。 沢山買ってそのまま食べると言うよりは、冷凍しておいたり、お菓子作りに使ったりすることが多い。 熟したバナナを冷凍したまま使ってよく作るのが、バナナシェイクだ。 と言っても、基本の材料はキンキンに凍ったバナナと牛乳のみ。だから、

          バナナシェイク

          実山椒

          プチッと噛むと、シュワっと香りが広がる、実山椒。 祖母がちりめん山椒をよく作っていたので、幼い頃からすっかり山椒の虜になっていた。 子供の頃は実山椒=山椒と思っていたけれど、歳を重ねるにつれて色々な形の山椒があることを知っていく。 うな重に振る粉山椒、 ハイボールに沈める葉山椒、 辛さに奥行きを加える坦々麺の花椒、、 どれもみんな、大好き。 近隣を散歩していると空き地の茂みの中に時々葉山椒を見かけるので、葉っぱをちぎって鼻に当て、深く吸っては口から息を吐き出すのを惜し

          金柑の木

          日中の暑さは相変わらずで、セミもまだまだ元気に鳴き続けている。 ただ、夕方から朝方にかけてはもう冷房もいらない程に涼しい日も増えた。 それに、庭に佇む金柑の木が少し前に一斉に花を咲かせてからというもの、沢山の虫たちが忙しなく飛び交い、蜜を吸って、或いは運んでいたのに、もうすっかり羽の音も白い花々も見えなくなった。 もう実が着く頃なのかなと近くに寄って見ると、花の咲いていたほとんどが青々しくかわいらしい実に代わっていた。 木の周りを通る時、毎回頭のてっぺんを勢いよく横切っ

          オオカミの口

          スコーンを焼いた。 実は最近まで、スコーンはやたら手がかかるイメージを持っていたから、前向きに作ろうと思えないでいた。 過去に作ったことが2,3度あったものの、あれはレシピがよくなかったのかわたしの腕がなかったのか、納得のいく形のものが出来た試しがなかったのだ。 けれども最近、本場仕込みのブリティッシュスコーンのレシピを見る機会があって、あれ?そもそも材料も手順も少ない?なんてことに気が付いた。 しかも、出来る限りグルテンを発生させないために捏ねる作業もなく(というより捏

          すいかのグラニータ

          とっても大きなすいかを一玉買って、半分に切って冷蔵庫にしまっていた。 この夏に、ゆっくり時間をかけて食べていこうとワクワクしながら。 ある日半玉分を取り出して、机に置いたまま包丁を取りに行って戻ったら、どういう訳かすいかがひっくり返って落ちていたのだ。 半端に崩れた断面をきれいに切って均し、またひっくり返ってしまわぬよう冷蔵庫にしまった。 悲しさと虚しさと闘いながら、切り落としたぼろぼろの部分を、どう食べようか考えた。そのまま食べるには、虚しさに打ち勝てる気がしなかったの

          すいかのグラニータ

          クレームブリュレ

          卵黄をたっぷり使った甘い甘いクリームをじっくり蒸し焼きにして、仕上げに砂糖をまぶしたら、蓋をするようにパリッと焼き上げる。 一見かしこまった佇まいでありながら、食べた人の心をとろけさせる不思議な力を持っているクレームブリュレは、誰かと深く語らう時間に、傍らに置いておくのに相応しいスイーツだと思う。 スプーンの先で、こんがり香ばしく焼かれた表面を決して強くはない力で少しずつ砕き割る。 ようやく割れたならそれだけでほんのり穏やかな気持ちが芽生え、その下に隠れているクリームも出

          クレームブリュレ

          白湯

          温かい飲み物は、深呼吸を思い出させる。 正確には、温かいよりも熱めなくらいが、わたしにとっては丁度良い。 沸かしている時の水面のぐらつきも、カップに注ぐ時に立ち昇る蒸気も、眺めているだけでコリ固まった心身をほぐしてくれる。 お湯が沸き立ったら大きめのマグカップにたっぷり注ぎ、一口啜ればお腹の底まで蒸されるような感覚に満たされて、もっと隅々まで届くようにと呼吸が深まっていく。 1日を始める最初の1杯に、熱い白湯を口にする。 寝起きのコリ固まった体に染み渡り、浅くなっていた呼

          かしわごはん

          祖母が用意する食卓に、しばしば登場した"かしわごはん"。 それを炊き込みご飯とも呼ぶことを知ったのは、小学校の給食の献立を見る様になってから。 さらに大人になってから、かしわごはんと呼ぶ郷土料理が北九州の方に存在することを知った。 共働きで帰りの遅い両親に代わり、平日は毎日祖母が夕食を用意していた。 中学校に上がって部活で忙しくなるまではお手伝いする日もあったので、かしわごはんのレシピも教えてもらっていた。 創味のつゆで濃い目に味付けして、水を多めに柔らかく炊いたごはん。

          ふかし芋

          ほくほくのお芋が食べたくなった時。 おやつにちょっぴりお腹に溜まるものが欲しい時。 だけど、お腹のことも労りたいとき。 そんな時、決まって作るおやつは、ふかし芋。 通年手に入りやすいじゃがいもはもちろん、さつまいもが美味しくなる頃には、毎年沢山作る。 芋の種類によっても芋それぞれでも味や食感が違うのが楽しくて、そのままはもちろん味付けも無限の可能性を秘めているので、何度作っても飽きが来ないところが魅力的。 寒くなるころに旬を迎えるさつまいもは、凍えた体を内側からゆっくり溶

          朝ごはん

          週に1回は、朝ごはんをサボりたくなる日がある。 ひどく疲れたり夜更かしをしたわけでもないのに、とにかくどう頑張っても寝起きからエンジンがかからないのだ。 それでもお腹はすくし、寝るまで元気に過ごしたいから朝ご飯は食べておきたい。 だからそんな時は冷凍庫にしまってあるおもちを温めてお雑煮にしたり、余っているご飯でお粥をつくったり、準備も食べるのもできるだけぼーっとしながらできるものを用意する。 温かいごはんができたら、少し冷ます間に沸かしたてのお湯でお茶をいれて、一口一口

          レモングラス

          贈り物をする時、しばしばハーブを小さな束にして添えることがある。 ラベンダーやローズマリー、バジルなんかは香り高く、花も飾って楽しめるので喜ばれることが多い。 しかしこの時期、受け取った側がどう使おうか悩むので贈り物に添えるのは少し迷うものの、花壇の端っこでそれはそれは元気に育っているハーブがある。 レモングラスだ。 果物のレモンの旬は冬なので、レモンが気軽に手に入る季節は真反対。夏はハーブの力を借りてレモンを楽しもうと思ったのがきっかけで植えることにした。 葉っぱをちぎれ

          夏場の台所にて

          台所の窓を開けると、モミの木がこちらを覗き込む。 家の高さと背丈がほとんど変わらないので、日陰にはなるけれど風通しが特に良くなるわけでもない。 けれど彼らが立ち並んで風を防いでくれるから風雨が入ってくることもなく、家の前は車通りも人通りもほとんどないので、何か作業をする時はいつも捗って仕方がない。 だから毎朝、ごはんの支度が一段落つく頃に沢山の蝉の声が鳴り響いていることに気がついて、ようやく安堵する。 つい漏れ出てしまうため息は、朝の忙しなさに一区切りついたからか懐古的な

          夏場の台所にて