鹿嶋市は決してグイグイこない。(家族移住体験:鹿嶋市#1)
「暮らす旅」と銘打って、最初の地として何となく選んだ茨城県鹿嶋市を滞在一日目にして好きになっている。
本日は反省もかねて準備から振り返りたい。
「クリスマス前に夜逃げでもするんか」と思うほどの荷物は、インドア派だからだろうか
約一週間の滞在のために準備にかかった時間は約3時間。
夫は4人分の基本的な荷物を、娘は自分のお手伝い用のエプロンを、息子は車のおもちゃをせっせとバッグに詰め込んでいる。
「最低限の準備だけをして、現地で色々揃えればいいよね」という話だったのに、最終的には
その他にも書ききれないのだが、これら諸々を車に詰め込んだ。
「ねえ、加湿器はどうする?」と私が聞くと、
夫は家の中をざっとと見渡して
「・・・俺たち、クリスマス前に夜逃げでもするんか?」とつぶやいた。
加湿器は踏みとどまったものの、その他諸々を元に戻すのもしゃくなので
車のトランクぎゅうぎゅうに上記の荷物を詰め込んで、私たちはほぼご近所さんである鹿嶋市に旅立った。(自宅から2時間半ほどで到着)。
ところで、遠出する際に何を用意していいのかがこんなにもよく分からないのは、インドア派とかそういうのは関係あるのだろうか。
アポに30分もの大遅刻をし、あわや離婚騒動
「鹿嶋市の話を聞かせてほしい」と言うお願いを快諾してくださった鹿嶋市役所政策秘書課の職員さんと約束した時間はAM9:00。
夫が道に迷い始めた時刻はAM8:45。
大慌てで遅れる旨を連絡し、なんと最終的に鹿嶋市役所に到着したのは9:30・・・。
あまりの申し訳なさから、眩暈がしてきた。
眩暈と同時に過去の夫の愚行がグルグルと頭の中を渦巻く。
「亮ちゃんさ、前にも目の前の黄色い車を追い越そうとして、別な抜け道を知ったかぶりして走ったのに、抜け道を終えて大きな道路に戻ったら目の前にさっきと同じ黄色い車がいたなんてことあったよね」
私の必要のない事実確認をきっかけに、車内の空気が悪くなる。
私がこれ見よがしに大きくため息をつくと、助手席でウトウトしていた5才の娘が「お母さんどうしたの?」と聞いてきた。
「なんかちょっと、一気に疲れちゃってさ」と大人げなく娘に答えると(いや、娘を通して夫に答えると)、
「ふぅん疲れちゃったのかぁ。私から言えることは、そうだなぁ・・・」
2秒くらいの間を空けた後、爽やかな笑顔で振り返った娘は、
「それがどうした?ってことかなぁ」
という辛辣な一言を残して再び眠りについた。
確かに、私が疲れようが疲れまいが、過去に夫がドヤ顔で通った道が抜け道だろうと抜け道じゃなかろうと(しつこい)、それがどうした?以外のなにものでもない。
とにかく引き続き急いで向かい、謝り倒し、鹿嶋で暮らしてみるのみだ。
離婚騒動に発展するんじゃないかというほどの緊迫した空気が流れるなど、すったもんだはあったものの鹿嶋市役所になんとか到着。
約束していた鹿嶋市役所の職員さんは、電話から聞こえたおだやかな声の印象の通りとても柔らかい笑顔の方で、大遅刻した上に冷戦状態を隠している私たち一味を労ってくれた。
思い返せば、必死の形相で市役所の階段を家族4人で駆け上がっていた時も、足がもつれて遅れをとる息子が夫に抱えられてラグビーボールと化した時も、すれ違う職員さんはみんなにこやかに挨拶をしてくれた。(職員さんが着ている鹿島アントラーズのロゴがあしらわれたジャンパーは印象的だった)
移住した際に、一番先に行くのは役所だ。
役所の方がこんなに温かく迎えてくれるのだったら、このまちを選んでよかったなととても安心するだろうと思った。
職員さんたちの表情と挨拶で、勝手にだが鹿島市自体に受け入れてもらっているようにさえ感じた。
新しいまちに行くことを楽しみにしながらもどこか不安にも感じていたんだな、ということに気付く。(大遅刻しておいて何を言うだが)
鹿嶋市の魅力を聞いていたらいつの間にか茨城県の魅力の話になっているほど強い茨城愛
私、夫、子ども二人の家族4人と、職員さんと地域おこし協力隊の方、合わせて6名で用意いただいた席に着く。子どもたちは足をパタパタさせながら、緊張した顔にも、嬉しそうな顔にも見えた。
(その後は残像が残るんじゃないかってくらいのスピードで会議室内を走り回っていて大変申し訳なかった)
職員さんたちの話から、
鹿嶋市は高台が多く地震に強い安定した地盤で、災害リスクの少ないことが大きな財産の一つだということ、
そして首都圏の食卓は茨城に支えられているといっても過言ではないことが分かった。
茨城県は都道府県別の農業産出額が北海道・鹿児島に次いで全国3位となっている。
また、鹿嶋市から都内までは高速バスで2時間弱。
満員電車と違って、自分の座る席を確保できるバスで悠々と都心へ向かう通勤者は少なくないそうだ。2時間あったら通勤前に映画が見れるし、職場に到着する頃にはゲームのレベルも爆上がりしているだろう。(自分の例として伝えたが、ほとんどの方は読書をしたり、仕事を進めたりしているようだ)
鹿嶋市の魅力を聞いているのに、隣の市の自慢や茨城全体の自慢を自然と盛り込んでくる控えめな職員の方々のお人柄に、鹿嶋市に好感を抱かずにはいられない。
鹿嶋市では海水浴もできるし、
潮干狩りもできるし、
釣りもできるし、
子育て環境としては夜間小児救急や病児保育サポートもあるし、
40年以上前から新一年生全員にランドセルを入学祝としてプレゼントしているし、
小学5・6年生向けには火起こしから自分で行う10泊11日の原生活体験も自然体験学習として実施しているし、
鹿島アントラーズの選手が市内全小学校を訪問して小学生と交流しているなど、
新型コロナウィルス感染拡大の状況によって実施できていない行事もあるが、掘れば掘るほどザクザクと「すご!」が出てくる。
(鹿嶋市がこんなにも奥ゆかしいなら、せめて私が・・・!とい気持ちが抑えられず、一息に説明した次第だ。)
さらには、「暮らすように滞在したい」という我々の思いを汲み取って下さり、
観光地である鹿嶋神宮のほかにも、海を眺めながら海に滑りおりていくような、全長154メートルのジャンボローラーすべり台がある公園、住民から人気のあるスーパーにレンタサイクルなど、暮らしに役立つ情報をいただいた。
こんな情報を求めていたのかも
「もし夜に時間があるならば、鹿嶋灯台の近くから空を見上げて星を見てみてほしい」
これは、最後の最後に「個人的なおすすめスポット情報は?」と伺った時の地域おこし協力隊の方からの一言だ。
スマホで撮影した星空を見せてもらい、ここで夫と子どもと空を見上げようと決めた。
満点の星空が暮らしのすぐ上にあること。
もしかしたら今回私が一番求めていた情報かもしれない。
鹿嶋市は決してグイグイこない。
誤解を恐れず言うなら、何もないようで全てがあるような、そんな市のように、滞在一日目にして思えている。
整った環境も欲しい。ほどよい田舎も欲しい。ほどよい都会も欲しい。海も山も。そして星も。
贅沢な滞在になりそうな予感。
この時点でまだ10:30。
長くなったので、初日の家族全員のタイムスケジュールやリモートワークはまた別で!
おまけ▼「しやくしょではなしました」という絵日記。子どもにとってのハイライトは、市役所で大人と一緒に会議に混ざったことだったようだ。