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<はじめての手帳スケッチ> その7.丸い果物、長い野菜の線描練習
はじめに
その6.ではA4の紙を使って、直線、曲線、円をペンで描くときの、ペンの持ち方、手と腕の動かし方を学びました。
ここでは、実際に野菜・果物を目の前においてA4の紙に大きく描く練習です。
習得してほしいのは、1)モノの観察の仕方 2)モノの輪郭(特徴)を空で覚えてから描く、3)陰影、反射の表現ではなく、線だけで立体として見せる方法の三つです。
なお、本記事も、すでに投稿した下記の記事と内容が重なります。詳しくは記事をお読みください。ここでは、エッセンスを記します。
丸い果物と細長い野菜の形を描く
丸い果物の代表として柑橘類(ミカン、グレープフルーツ)を描きます。また、長い野菜の代表としてキュウリを描きます。出来上がりの線描を次に示します。
![](https://assets.st-note.com/img/1644115933653-Cul9cuhJrm.jpg?width=1200)
描く前に実物をどのように観察したらよいか
まず、結論を先に述べます。(下の図)
![](https://assets.st-note.com/img/1644118471003-hMKK7eAyjF.jpg?width=1200)
一般に、「対象をよく観察して描くこと」と言われていますが、「どのように観察したらよいのか」を具体的に説明している例はほとんどありません。
そこで私の教室では初心者の方に次に示す原則を説明しつつ、実際にデモンストレーションして理解していただいています。
どのように観察するか:原則
原則1:物の形の特徴を観察すること。物には固有の名前があり、どのよ
うな形の特徴からその名前が付いたのかを考えて観察する。
(特徴となる形をパーツにわけ、それぞれの輪郭線の曲り具合、大
きさや長さの相互の比率を観察し把握する)
原則2:物の立体を、表面の突起物や模様の形と関連付けて観察する。
(表面の曲がり具合と模様の曲がり具合、正面と端の部分での模様
の相互距離、分布の違いを観察し把握する)
以上の原則に基づいて観察したのち、どのように線描するかの原則を下に記します。
どのように線描するか:原則
原則1:実物を目の前にして、特徴となるパーツごとに輪郭を描く。
原則2:30~40秒間輪郭を眺めて、空で覚えた後、実物を見ずに線を引き
ます。
(少し線を引き、実物を見て、また線を引くような繰り返す描き
方はしない)
原則3:線を引いた結果、実物の輪郭が正確に描かれてなくてもよい。観
察した特徴を正確に描くことが重要である。
原則4:表面にある模様や小さなくぼみ、突起物を利用して物が立体的に
見えるように線を引く。
具体的な観察について:事例
それでは、実際の果物・野菜を使って観察の仕方を説明します。
まず、ミカン(グレープフルーツでも同じです)の観察方法です。
![](https://assets.st-note.com/img/1644120004433-PbxI3Q2Frm.jpg?width=1200)
次に、細長い野菜、キュウリの観察方法を下の図に示します。
![](https://assets.st-note.com/img/1644120533581-ORrmiu1oHI.jpg?width=1200)
以上、文字で書くと大変複雑なように思われるかもしれませんが、教室では線描のデモンストレーションをするときに実物を指し示しながらその内容をお話しするため、たいていの方はすぐに理解していただけます。
この記事の読者はデモンストレーションを見ることが出来ないので、実物を見ながら順番に文章を読んで確認してください。
観察結果をもとにどのように線描するか:具体例
ミカンの線描
![](https://assets.st-note.com/img/1644120987948-LM6QqaWsC9.jpg?width=1200)
上の図で4.および5.は、人の錯覚を利用して、線描だけで立体に見せる技術を述べたものです。その錯覚の利用とは、次の通りです。
人はミカンの表面上に多量のぼつぼつの模様を見るときに、ぼつぼつの間隔はすべて等しいと思っている。
人は、眺めているミカンの正面の部分のぼつぼつ模様の間隔が一番広く、周辺に向かって徐々に狭まり、最終の縁の部分で最小になると思っている。
以上の人の思い込み通りに、正面の表面のぼつぼつの間隔を広く、周辺に向かって狭く点を打つ。すると、人は周辺部に向かって丸く回り込んでいるように錯覚してその絵を見ることになる。
キュウリの線描
![](https://assets.st-note.com/img/1644121953382-LQEAPXGZmZ.jpg?width=1200)
上の図で5.および6.は、人の錯覚を利用して、線描だけで立体に見せる技術を述べたものです。その錯覚の利用とは、次の通りです。
人はキュウリの表面上にヘタから尻にかけての線の平行模様を見るときに、それら平行線の間隔はすべて等しいと思い込んでしまう。その場合、
人は、眺めているキュウリの正面の部分の平行線模様の間隔が一番広く、周辺に向かって徐々に狭まり、最終の縁の部分で幅が最小になると思っている。
以上の人の思い込み通りに、正面の表面の平行線の間隔を広く、周辺に向かって狭く線を引く。すると、人はキュウリの周辺部に向かって丸く回り込んでいるように錯覚してその絵を見ることになる。
次に、表面の突起物の人の錯覚の利用について説明します。
人はキュウリの表面上に小さな山形の突起物を見るときに、周辺部の見え方と真正面での見え方は違うはずだと思っている。富士山に例えると、羽田から見える富士山は頂上から麓にかけて典型的な火口から裾野までの富士山型で、飛行機が富士山の真上では火口がまん丸に見えるだけで山の形は見えません。そして、静岡方面から後ろを振り返るとまた地平線に典型的な富士山型の山が見えると考えます。
以上の思い込みを利用すると以下の通りになります。
人は、眺めているキュウリの正面の部分のぼつぼつ模様の山頂の口は真ん丸になると思う。
一方、地平線(すなわちキュウリの胴体の上下の輪郭部分)では富士山型の山が見えると思う。
その正面と地平線(胴体の輪郭線)の間では、火口は楕円に見え、山頂からの山裾も見えると思う。
以上の人が思うように、キュウリの正面では火口のまん丸を、胴体の輪郭線には山の真横から見た姿を、正面と輪郭線の間は、楕円の火口と山裾の形を描きます。すると、人は錯覚してキュウリの胴体が丸くなっているように見えるのです。
以上の結果が、冒頭のスケッチ例になります。下に再掲載します。
![](https://assets.st-note.com/img/1644124259246-FN3PNdNUvF.jpg?width=1200)
以上をまとめると、
1.写真のように正確に描かなくても、輪郭の特徴を描くことで、名前が
示すその物の形を描くことが出来る。
2.物の表面の模様をある規則に従って描くことで、線描だけで立体に見
せることが出来る。
上で述べた観察方法と線描方法は、目の前に見えるどんな物にも適用することができます。机の上に置いていろいろなものを描いて練習してみましょう。(正確に言うと、人間が作った人工物については、観察方法に少し違いが出ます。それについては別の記事で紹介します。)
おわりに
上で述べた練習はA4の紙で実施してください。手帳サイズになっても、観察の原理、線描の原理は同じです。紙が小さくなる分、手や腕の動かし方が窮屈になりますが、大きな紙で練習した後は、自分にあった動かし方を工夫すれば慣れると思います。