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【コラム】法務視点で見るベンチャーファイナンス(資金調達)

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はじめに

スタートアップ専門の弁護士さんほどではないのですが、ベンチャー界隈で5年以上法務をやっていると、年に何回かは資金調達のご相談を受けます。
資金調達の主要プレイヤーはどちらかというと会計・財務のプロフェッショナルの皆さんなので、基本はそういう人たちにお繋ぎするのですが、ふと『法務視点のファイナンスってあんまり聞かないなぁ🤔』と思ったので、書いてみようかなと思い立ちました。

会計士・税理士の皆さんほどファイナンスに詳しくないのと、あまりに難しい話をすると記事を読む方をむやみに絞ってしまうことになるので、今回は誰でも読めばわかる範囲でお話させていただこうと思います。
想定する読者層としては、スタートアップを創業したばかりの若い経営者、または先々起業したいと思っている若手の皆さんです。


1.ベンチャーファイナンスの種類

御存知のとおり、ベンチャーのファイナンス(資金調達)には、エクイティ(Equity Finance:出資による資金調達)とデット(Debt Finance:借入れによる資金調達)があります。

このあたりについては、最近の若手の皆さんも知識として入っているかと思いますが、改めて説明させてください。


(1)エクイティファイナンスとは


エクイティファイナンスとは、株式を活用した資金調達です。

株式とは、会社の所有権そのものです。

この認識をしっかりと持った上で資金調達計画を立てることが極めて重要です!
大事なことなのでもう一度言いますが、株式は、会社の所有権そのものです!!!
だからこそ、一度渡すと、原則としてなかなか取り返しがつかないのです。

起業家になろうと思っていらっしゃる方には、単にお金のためとか、単に有名になりたいというちょっと微妙な目標を掲げている方もいらっしゃいますが、そういう方については別に好きにやってもらってOKです。

一方で、ベンチャー界隈で成功されていらっしゃる方の多くは、そういう俗世間的な欲望から切り離され、一段高いレベルで思考していらっしゃる方が多いです。
こういう方達は、お金とか名声とかよりも、世界をもっと良くしたい!理想の状態に近づけたい!という心の奥底から湧き上がってくる情熱に突き動かされています。

それゆえに、お金に無頓着なところがあって、資本政策が疎かになっていることがよくあります。
いいですか、起業家の皆さん。
初期段階のエクイティファイナンスで会社の所有権である株式を大量に他人に渡してしまうと、会社の経営に大きな支障が出ます!
そのため、株式がどれだけ貴重なものなのか、どれだけ重要なものなのかを認識してください。

エクイティファイナンスというものは、会社の所有権を切り売りして資金を調達する方法です。
創業間もない頃の株式はまだ価値が低いため、一歩間違うと多くの割合を他人に持っていかれることになります。
そうすると、資金調達がシリーズA→B→Cと続いてい際に、創業経営者が持っている株式割合がどんどん少なくなっていって、IPOの前にはほとんど雇われ経営者の身分に落ちてしまうことがあります。
そうなるともう自分の思い通りには経営できませんから、下手をするとベンチャーらしさは消え去ります😱
株式市場からも「あぁ、これはVCの利確案件だな。上場ゴールだわ」と思われてしまう可能性があります。

起業家の皆さんは、株式が会社の所有権そのものなのだという認識を改めて持ってほしいと強く思っています。
もっと平たく言うと、安売りしないでほしいのです。


(2)デットファイナンスとは


デットファイナンスとは、借入れによる資金調達です。
そのため、返済義務があり、かつ、利息がつきます

エクイティファイナンスは出資なので返済義務もないですし、利息もつきません。
そうすると、一見すると、エクイティファイナンスの方が良くないか?と思うかもしれません。
でも、先程申し上げたとおり、エクイティファイナンスは会社の所有権そのものを切り売りして資金を調達する方法です。
そのため、ほぼ確実に返せるのであれば、圧倒的にデットファイナンスの方が有利です!

それに、今の時代、金利なんて雀の涙レベルまで落ちていますから、借入れのハードルはかなり下がっているのです。
上手にデットファイナンスを活用すれば、エクイティファイナンスを最小限にした状態で大きく成長できるかもしれません。

そもそも、ベンチャー≒急激な成長という等式って正しいのでしょうか?🤔
半ば強迫観念のように「ベンチャーだったら急激な成長をしないと!」という起業家を私は違和感を持って眺めています。
自分の身の丈を超えた成長を志す必要がどこにあるのかと。
会社は経営者の成長以上の成長はしませんよ。
一時的に金の力で拡大しても、どうせ経営者の器に戻ってくるのです。

そもそも、経営者だって人間なんですから、絶対にインプットの時間が必要です!
インプットの時間が全然取れないほどずっと働き続けるなんて馬鹿げているとすら思います。
経営者にも成長の時間が必要なんです。
じっくり考える時間、本を読む時間、家族を大切にする時間…
そういう心の豊かさを取り戻す時間がないとすぐに限界が来る。

私は法律屋(法律に則って現実的な考え方をするタイプ)なので、どうも無理な成長を志す姿勢に違和感があります。
無理なことをすれば必ずどこかに歪みが出ます。
その歪みは組織崩壊や倫理違反、最終的には不正行為を招来します。

そんな無理な成長をして、結局崩壊するなら無駄じゃないですか😱
それなら健全な成長を志すべきです。
どの程度の成長率が健全なのかは経営者によると思いますが、年間20~25%程度の増収率なら十分でしょう。
そのくらいの成長なら無理な大型エクイティファイナンスをする必要はない気がするのです。
少額のデットファイナンスでも十分対応できるのでは?と。

市場の平均的な伸び率より遥かに高い増収率を出してしまっている場合は要注意とすら思っています。
どこかに歪みが溜まっていて、その歪みは組織内の誰かが抱えているのです。
人間の心は無限ではないので、いつか誰かが犠牲になるのです。

個人的見解としては、創業から数年間は自己資金またはデットファイナンスで健全に成長し、十分な体制と耐性が整った段階で一気にエクイティファイナンスで拡大する方が良いのではないかと思っています。
その方が企業価値が高くなっているので、エクイティファイナンスも合理的に行えるはずです。

そのため、デットファイナンスもベンチャーの資金調達の手段の候補にあげていいのではないかと思っています。

以上がエクイティファイナンス・デットファイナンスの概要ですが、実はさらに細かい類型が存在するので、今日は簡単にご説明させていただこうと思います😁


2.エクイティファイナンスの類型

エクイティファイナンスは、資金調達に活用する株式の種類によって、大きく3つの類型に別れます。

(1)普通株式
(2)種類株式
(3)新株予約権(ストックオプション)


(1)普通株式


最もオーソドックスな方法が「普通株式」を活用した資金調達です。
この株式は、文字通り一般的な普通の株式で、通常発行される株式は全部普通株式となります。
シンプルでわかりやすい資金調達方法です。
昔はこの普通株式を活用する資金調達が一般的でした😁
今でも小型のスタートアップやシードラウンド(創業直前期の資金調達)では普通株式が使われることが多いかと思います。
熟練したプロのエンジェル投資家を除き、エンジェル投資の場面でも普通株式を活用することが多いだろうと思います。

ただ、出資者(投資家)から見ると、普通株式は若干不利になるので、どうしても株式価値を低く見積もらざるを得ません。
そうすると、大型の資金調達の場合は、投資家に多くの株式を渡さないといけなくなり、結果的に創業メンバーにも不利になってしまいます。
そのため、プロ投資家、つまりベンチャーキャピタル(以下、VC)や機関投資家から出資を受けるエクイティファイナンスでは、あまり活用されなくなってきています。
その代わりに活用されているのが次項の種類株式です。


(2)種類株式


最近のベンチャーファイナンスの主流は、おそらく「種類株式」だろうと思います。
VCやプロ投資家から出資を受ける場合は、ほぼ種類株式による資金調達になるのではないでしょうか。

この種類株式というのは、普通株式とは異なる特別な権利が付与されている特別な株式だと思っていただけば良いかと思います😁

ちょっと難しいお話をすると、種類株式は、特別な株式なので、その種類がある程度限定されています。
会社法108条にその定めがあります。
一応引用しておきますが、読まなくてもOKです!

【会社法108条】
株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、指名委員会等設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。
一 剰余金の配当
二 残余財産の分配(←重要!)
三 株主総会において議決権を行使することができる事項
四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
五 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。
六 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。
七 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。
八 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第四百七十八条第八項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの
九 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。次項第九号及び第百十二条第一項において同じ。)又は監査役を選任すること。

上記の類型の中で、最も多く利用されているのが2号「残余財産の分配」について異なる定めをした種類株式です。
これは、会社を解散するときに、残った財産(残余財産)を優先的にもらえる権利が付与された種類株式です。
VCはビジネスとしてベンチャー投資を行っているので、損をするわけにはいきません。
そのため、出資先のベンチャー企業が上手く行かなかった場合は、残余財産を優先的にもらいます!という株式を使って出資をするのです。

この他にも様々な種類株式を活用してベンチャー出資は行われますが、長くなるので割愛します😁
細かいところを学びたい方は、以下の書籍をお読みいただくといいかもしれません。


(3)新株予約権


最後に、「新株予約権」を活用した資金調達もあります。
最近では「ストックオプション」または「SO」と言った方が伝わるかもしれません。
この新株予約権は、将来、特定の価格で株式を買える権利のことをいいます。
そのため、新株予約権自体は株式ではありません。
ただの権利です。
その権利を行使した段階で「株式」となります。

もうややこしいですよね(笑)
でも、ベンチャーでは本当によく活用されます。
資金調達という意味合いももちろん一部あるのですが、ベンチャーが使う場合は、主に従業員や役員への報酬として活用されます。

ベンチャーが優秀なメンバー、経営層を獲得するためには、採用競争で大手に勝たないといけません。
しかし、年収帯や福利厚生で大手に勝つのはなかなか難しいです。
一時的な高待遇はできるでしょうけど、現実的に考えてそれが永続する可能性はかなり低いです。
一方で、ベンチャーには将来の成長可能性というアップサイド(上値余地)があります。
そこで、創業数年以内にストックオプションを発行しておいて、それを報酬の代わりとして従業員に配るのです。

そのベンチャーが運良くIPO(新規上場)したり、大型のM&Aで大手に売却されたりしたら、そのストックオプションを行使し、創業時の安い価格で株式を取得できます。
その上で、市場またはM&Aの買手に株式を売れば、差額が利益となります。
そうそう上手くいく事例はないので宝くじ要素が大きいですが、そういう夢を持った人たちが集まるのがベンチャーです👍
なお、M&Aでは、通常ストックオプションはそのまま権利の状態で売買されることが多いかと思います。

エクイティファイナンスでは、上記の他に「株主間契約」という契約がよく締結されます。
これは、種類株式だけでは補填できないリスクをコントロールするために用いられたり、実質的に種類株式を発行したのと同じような効果を得るために締結されたりします。
小難しい手続(株主総会や取締役会、登記等)を要せず、株主同士の契約責任で相手を法的に拘束できるので便利なのです😁
この株主間契約は結構曲者なので、絶対に弁護士のチェックを入れておいた方が良いものです。


3.デットファイナンスの類型

続いてデットファイナンスの類型についてご説明させていただきます。

ベンチャーが活用できるデットファイナンスには、主に以下の4つの種類があると考えられます。

(1)銀行からの借入れ
(2)日本政策金融公庫からの借入れ
(3)ノンバンクからの借入れ
(4)ベンチャーデットでの借入れ


(1)銀行からの借入れ


まずは最も知名度が高い借入れ方法が銀行からの借入れです。
まだ「ベンチャー」や「ベンチャーキャピタル」という言葉が一般的では無かった頃は、日本の中小企業を支えていたのは銀行です。
今でも多くの中小企業を支えてくれている重要な金融インフラの一つです。
銀行が無かったら潰れてしまっていた中小企業は山程あるでしょう🤔

銀行は、大きく分けると都市銀行、地方銀行、信託銀行、ネット銀行の4つに分かれます。

都市銀行はいわゆるメガバンクです。
現在では、みずほ、三菱UFJ、三井住友、りそなの4行がメガバンクに位置づけられています。
ベンチャーがメガバンクから借入れができる例は少ないかもしれませんが、しっかりとした事業計画があって、ある程度実績も出せているのであればチャンスはあるかもしれません!
また、東京に本店を構えるベンチャーの場合、メガバンクがメインバンクになることもあると思うので、その場合はメガバンクに相談に行きます😁

地方銀行は、各都道府県に1行はある銀行です。
ふくおかフィナンシャルグループ、横浜銀行、千葉銀行、静岡銀行、ほくほくフィナンシャルグループなどが有名です。
日本の中小企業を支えてくれているのがこの地方銀行なので、ベンチャーのデットファイナンスではまずは地方銀行に相談に行くのが通常かなと思います。

信託銀行はベンチャーとはあまり関わりがない銀行ですが、信託型のストックオプションを発行したい場合などには活用することがあります😁
有名所で言うと、三菱UFJ信託銀行、三井住友信託銀行、みずほ信託銀行などです。

最後に、ネット銀行は文字通りネット銀行です。
楽天銀行、住信SBIネット銀行、ソニー銀行などが有名ドコロかなと思います。
ベンチャーに貸付けを行っているところは少ないでしょうが、事業性融資として住信SBIネット銀行は融資を行っています。
SBIはベンチャーキャピタルも持っているので、比較的ベンチャーには詳しいかもしれません。

いずれにしても、銀行から借入れをするのはなかなかの難易度です。
納得感のある事業計画、過去の実績・経歴書、その他様々な書類を用意して融資申し込みを行うことになりますが、創業間もないベンチャーの場合は審査に通ることのほうが稀だと思います。
CEOが一人で対応するよりは、財務担当者の力を上手に借りて行うべき案件です。
WARCでも公認会計士チームがデットファイナンス支援を行っているので、必要であればお声掛けください。


(2)日本政策金融公庫からの借入れ


知名度は低いのですが、実はベンチャーのデットファイナンスの主役は日本政策金融公庫からの借入れです。
私が知っている限りでも、銀行融資は上手く行かないケースが多いのです。
なぜなら、融資審査がとても厳しいからです😱
銀行は少なくとも3年以上黒字が続いている会社でない限り貸してくれないでしょうね…
もちろん黒字でない場合も貸してくれる場合はあるでしょうけど、よほど良いコネクションがない限りは門前払いに近い対応をされると思います。

一方で日本政策金融公庫は、ひとまずは話を聞いてくれます。
もちろん100%貸してくれるわけではないですし、普通に融資審査はあるのでダメな場合もありますが、銀行よりはハードルが低いかなと思います。

まずオススメしたいのは、新創業融資制度(創業後2期未満)です。

詳しくはホームページを見ていただきたいですが、原則として無担保無保証での融資です。
融資限度額は3,000万円です。
多くのベンチャーは、創業時または創業間もない時点では3,000万円もいらないでしょうから、十分に対応可能な融資枠です。
ベンチャーの強い味方と言っていいでしょう。

創業から2期を超えているベンチャーにもまだ融資枠があります!
それが、新規開業資金です。

この融資は、新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方を対象とした融資で、上限枠は7,200万円となっています。

私が知る限りでは、銀行で借りられた事例より、日本政策金融公庫から借りられた事例の方が圧倒的に多いです。
日本政策金融公庫は素晴らしいのです😍
ベンチャー・中小企業の味方と言っても過言ではない!

他にもいろいろな制度融資をしてくれているので、ベンチャー起業家は一度は相談に行ったほうが良いと思うのです。

ちなみに以下が相談窓口です!


(3)ノンバンクからの借入れ


続いてノンバンクからの借入れも選択肢としては存在します。
銀行や公庫からの借入れと比べるとどうしても利率が高いのでオススメはしませんけども、選択肢としては存在するので一応ご紹介しておきます。

有名所でいうと、オリエントコーポレーション(通用オリコ)、オリックスなどが事業性融資を提供しています。

その他、不動産をお持ちの経営者については、不動産担保型事業性融資(不動産担保ローン)もあります。
最も有名なところは東証一部上場のアサックス等が挙げられます。

ノンバンクからの借入れや不動産担保ローンは、銀行・公庫両方に断られ、かつ、信用金庫なども全部回ったあとで検討の余地があるかなという感じです。
ただ、かなりスピーディーに融資が受けられるので、スピードだけで見ると結構有利な点があります😁
そのため、銀行等から借入れが実行されるまでのつなぎ融資としても活用できる場合があります。


(4)ベンチャーデットでの借入れ


最後にご紹介したいのはベンチャーデットと呼ばれている新しいベンチャー融資/投資です😁
この仕組みは、エクイティファイナンスとデットファイナンスの中間と言われていますが、スキーム(手法)によって内容が変わるので一概にはいえません。
融資だけを行う場合、社債を活用する場合、新株予約権付社債を活用する場合など、様々なスキームが考え出されています。

新生銀行やあおぞら銀行がサービスを提供しているので一度相談してみるのもありかもしれません。
ただし、難易度が高いので、必ず自社側のファイナンスの専門家を同席させた上で相談をしましょう!
WARCにも公認会計士いっぱいいますから、必要な場合はお声掛けください。
手が空いている会計士探します🙄
※忙しすぎて空いてなかったらすみません。


4.法務視点で見るベンチャーファイナンス

さて、最後に私見を。

上記の通り、ベンチャーのファイナンスは、様々な種類があります。
今回は簡単なところしか書いていませんが、実際にはもっと複雑で、もっと数が多く、さらに奥深いものです🙄

法務的に見ても、資金調達の分野は極めて難易度が高く、簡単に理解できる内容はあまりありません。
結局こういうことでしょ?と思っていても、あれ?違うやん!ということがよくあります。
ガッツリ数十時間~数百時間学ばないと本質が見えないものばかりです。
その上で、契約書もややこしい書き方をしますし、長いです。
弁護士によって書き方が全然違いますし、VCや銀行によっても全く異なります。
そのため、同じ契約書というものが存在しないのです。
ベンチャー業界で広く使われている雛形も徐々に出てきてはいますが、結局は個別性が出てくるので専門弁護士が作ることになります。

そんな状態だから、起業家の皆さんが混乱したり、困惑したり、あまり理解せずに資本政策失敗してしまったりするのも致し方ないことだと思います。
だからこそ、申し上げておきたいのは、ファイナンスを一人でやろうとしないでということです😱
ファイナンスに詳しい友人を複数人捕まえておいてほしいです。
法律に強い人と、会計に強い人で、できれば弁護士、会計士、税理士のお友達を!
資金調達時に毎回弁護士・公認会計士を入れるのはお金がかかるでしょうからできないかもしれませんが、最低でも契約書チェック、スキームチェックくらいは専門家の力を借りましょう
それだけだったら、10~30万円程度で済むと思うのです。
スキーム全体に関わってもらうと100~1000万円くらいかかるので厳しいですが、ピンポイントでなら費用は安くなります。

そして、何よりも初期段階から長期的な視点で資本政策を考えた上でファイナンスの手法を選んでほしいと思っています。
前述の通り、株式を用いたファイナンスは、会社の所有権を切り売りするタイプの資金調達です。
本来であればデットファイナンスで十分に対応できる場面でも「返さなくていいから」という甘い誘惑に負けてエクイティファイナンスを選択しがちです。

しかし、忘れてはならないのは、エクイティファイナンスを行う投資家は、あくまでもビジネスとして「リターンを獲得するために」出資を行っているという点です。
ビジネスである以上、それ相応のリターン(儲け)が必要なんです。
投資家は、返済義務がない出資を行っている以上、借入れによる利息(年利1.0~10.0%程度)よりも遥かに高いリスクを負っているのです。
当然、そのリターンも利息以上のものを要求してきます。

それに応えられるのかというのをしっかり考えないといけません。

確かに、エクイティファイナンスだと返済義務は無いのですが、実際には創業経営者らに対する買取請求権がつけられていたり、重要事項に関する事前承認条項がついていたりして、経営に支障が出るような内容になっていたりすることが多いのです😱
その他にも、創業経営者にとっては不利となり得る条項が多く存在します。
もちろんそれらの条項自体が悪いわけではないです。
投資家視点では意味・意図があって入れているのですから、正当なものです。
しかし、創業経営者側が内容をろくに理解しないままでファイナンス系の契約を締結する事例がまだ結構あります。

上手く行っている間は問題となりませんが、経営が傾いた瞬間にそれらの条項が意味を持ってきます。
創業経営者が法律をよく理解しないまま締結していると、その時点で揉めます😱
投資家と創業経営者の関係値が悪化してしまったら、経営は少なからず滞るでしょう。

エクイティファイナンスは、会社の所有権を渡す資金調達ですから、長期的な視点で行う必要があります。
ただの出資者・創業者という関係を超えて、経営のパートナーとして適切なのかという視点がとても重要なのです🤔
これは、創業者間での株の分配でも同様のことがいえます。
株主間契約も一切なく、多くの株式を創業メンバーに分配してしまって、後々仲が悪くなって離脱したけど株式は回収できていないなんて笑えない話です。
※たまにそういう事例を見るので意外とあるある。

起業という極めて高度な活動をやろうとしているので、ある程度のリスクは取るべきですが、最大のリスクは「リスクを知らないまま実行してしまうこと」だというのを知っておいてもらえると幸いです!
知っているだけで備えられるし、交渉もできます。
経営者にとって、無知が最大のリスクになり得るのです。
だからこそ、上手に専門家を活用してください😁

なお、経済産業省が中小事業者のエクイティファイナンスについて概要を学べるスライドを公開してくれていますので、ご紹介しておきます!
無料で学べる上に、信頼できる内容なのでとても良いスライドです。
これから起業家になろうとしている皆さん、及び、若手起業家の皆さん、是非ご一読ください。



おわりに

今日は難易度の高いファイナンス分野について簡単にですが解説及び私見を述べさせていただきました。
最近の優秀な起業家の皆様はすでにこの程度の知識は入っていることがほとんどだと思いますが、今一度復習がてら読んでいただけると幸いでございます。

ベンチャー業界で生きるおっさんの一人として、これからもベンチャーが健全な発展を遂げることを心から願っています。


ではまた書きます!


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著者:瀧田 桜司(たきた はるかず)
役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長
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