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#アジア本
【読んでみましたアジア本】食べて、知って、読んで、楽しむ:崔岱遠・著/李楊樺・画/川浩二・訳『中国くいしんぼう辞典』
月初めに東京に中国や香港の映画を観に行ったとき、もう一つ楽しみにしていたのは、昨今東京界隈で激増しているいわゆる「ガチ中華」だった。
ネットやSNSではすでに、あれも、これも、どれも、すでにここまで……!というほどさまざまな「今の中国で普通に食べられている中華料理」が、中国からの留学生、そして移住者の激増によって、どんどん日本に流入している。彼らをお客として狙って展開されるだけではなく、日本への
【読んでみましたアジア本】2024年を前に読んでおきたい、お薦めアジア本
今年最後のアジア本は、恒例の年始年末お薦め本。今年、「読んでみましたアジア本」でご紹介した本の一覧を書き出したところ、なかなか収穫の多い1年であったように思われる。
特に、今後アジア情勢を観察する際に、基礎的知識を身につけるための「教科書」として何度か読み直すだろうと思われる本が数冊入っており、きっと将来、「読んでてよかった…」と思えるときがくると感じている。というか、すでに感じている。
ただ
【読んでみましたアジア本】劉慈欣・著/大森望、光吉さくら、ワン・チャイ・訳『超新星紀元』(早川書房)
中国関連本の世界では超快進撃を続けていると言ってよいSF作家、劉慈欣氏の最新翻訳書を手に取った。紹介によると、大ヒット作『三体』シリーズを含め、劉慈欣の日本語翻訳作は9作目になるという(その他、短編が別の中国SFアンソロジーに収録されているが、それは数に入っていない)。翻訳、というだけで嫌がられる日本において、特に中国の小説本としては、過去にない大ヒット作家になってしまった。
この「読んでみまし
【読んでみましたアジア本】若い女性にかぶせて語られる、100年前の志士たちの姿/笠井亮平『インド独立の志士「朝子」』(白水社)
日本では、「アジア」という言葉を聞くとまず「戦争」を思い出す人たちが、多分まだ一定数いると思う。もちろん、そんな「戦争」や「戦後」(だけから)の視点から脱却しようとする動きは明らかにあるし、初めての「アジア」体験がそれ意外だという世代もかなりを占めようになっているので、必ずしも「戦争」絡みの話題がいまだに日本人のアジア視点の中心だといい切るつもりはない。
正直、筆者もアジアといえば戦争の記憶(あ
【読んでみましたアジア本】単純な「軍 vs 民主派」の図式が覆される/タンミンウー・著『ビルマ 危機の本質』(河出書房出版社)
うーん、重い一冊だった。本の重量も、そしてその内容も。
以前ご紹介した、同じ著者の前作『ビルマ・ハイウェイ』も中身の濃い一冊だった。ビルマを中心に東南アジアの成り立ちとその位置関係を歴史的な人的流動(とそれにまつわる文化や言語、民族、そして宗教)をもとに解説した貴重な資料で、ビルマはちょうどそのど真ん中に位置しているというのが著者の説明だった。然り。
そして、本書ではビルマ出身の元国連総長を祖
【読んでみましたアジア本】甘いデザートから始まる、温かいSF小説集:チョン・ソヨン『となりのヨンヒさん』(集英社)
これまで、この「読んでみましたアジア本」で韓国の書籍を取り上げるたびに、「自分は韓国映画もドラマも見ないし、韓国にはあまり強い関心がない」と繰り返し書き続けてきた。それは「好き嫌い」という感情からではなく、その「好き嫌い」のどちらもをまったく感じていないので関心が向かない、という話もしてきた。
その一方で、「アジア本を読む」と言いながら、日本から一番近い「アジア」である韓国を取り上げないのもおか
【読んでみましたアジア本】2022年に読んだおすすめアジア本5選
さてさて、年の瀬恒例の「今年のおすすめアジア本」となった。
今年は、コロナの香港パンデミック(運悪く香港入りしていた…汗)や、予想もしなかった上海2カ月ロックダウンという「事実は小説よりも奇なり」を地で行く大事件が続き、今もまたコロナ措置は緩和されたけれども「!!」という状況で、この1年を振り返ろうとしても自分が何を読んできたのか、すっかり思い出せなかった。その分、資料としてたくさんたくさん、コ
【読んでみましたアジア本】移民労働者が支える国の個人と家族の物語/西尾善太『ジープニーに描かれる生: フィリピン社会にみる個とつながりの力』(風響社)
フィリピンという国について、もともと確固たる知識を持っているわけではなかった。それこそ、まだフィリピンどころか世界についてもあまり基礎知識を持っていなかった頃にフィリピンでは軍を巻き込んだ政治権力闘争が激しく、大統領候補として人気の高かったアキノ氏が帰国した途端、空港で暗殺された事件だったり、その意志を継いだ夫人のコラソン・アキノ氏が大統領に選出されたこと(確か、アジアで初めての女性元首だったはず
もっとみる【読んでみましたアジア本】愛でもなく憎しみでもなく…体験して考えることの重要性/木村幹『韓国愛憎 - 激変する隣国と私の30年』(中公新書)
たった今読み終えたところ。面白かった。
1966年生まれの著者は世代的にわたしとかぶるところがあり、ある意味、同じ時代を見てきた。但し、本書は韓国政治の研究者の半生記だから、もちろんその過程で著者が目にした、わたしが知らない韓国の細々とした変化がたくさん綴られている。
我われの間には、堂々たる韓国現代政治の研究者と一介のライターという社会的地位、そして関心を向ける先も韓国と香港あるいは中国とい
【読んでみましたアジア本】この国の「多様性」「寛容」は宗教だけじゃないと思うんだけどな/加藤久典『インドネシア――世界最大のイスラームの国』
香港でこれを書いている。
香港に来ると、日本にいるときよりもぐっと「東南アジア」が近くなる。最近では地方都市でも「アジア飯」のお店も見かけるようになったが、それでもそれは「独特のムードを漂わせる店」であり、あなたが何らかの理由でその店の常連客ではない限り、「街に馴染んでいる」とは言えないであろう。
でも、香港はにぎやかな通りを曲がったところに、普通にマレーシア料理やインドネシア料理、ベトナム料
【読んでみましたアジア本】興味つきない、東西をつなぐヒンドゥー文化を知る/森本達雄『ヒンドゥー教 インドの聖と俗』(中公新書)
今年もあとわずか。今年読んだ本をとりあげるのは今回が最後となる。
正直、今年読んだ「アジア本」にはなかなか読み応えというか、「手応え」のある本が多かった。「読み応え」は人それぞれだと思うが、ここで「手応え」というのは「こんなことが! ほとんどメディアでは触れられてないよね?」みたいな「発見」が多かったという意味である。
自分が持っている知識を第三者の書籍でなぞったり、確信づけるのもそれはそれで
【読んでみましたアジア本】ずんずんと文化の深みにはまっていく面白さ:紀蔚然・著/舩山むつみ・訳『台北プライベートアイ』(文藝春秋)
以前もなんどか書いたが、わたしはあまり文学的な素養に対しての関心があまりないので、そうした作品にのめり込んで読む、という習慣を小学生以来もってこなかった。決して文学をバカにしているわけではなく、それはそれとして、ある人たちにとっては当然存在価値のあるものだとは認めつつ、フィクションの世界に没頭するという気分になった記憶がほぼない。
とはいえ、米ドラマなどある種のフィクションにはわりとハマるので、
【読んでみましたアジア本】2021年を前に読んでおきたい、おすすめアジア本
もう今年もあとちょっと。
もうねぇ、今年はどうしたもんかねぇ、愚痴ばっかり出てきますよねぇ。振り返ってみても、ずるずるーずるずるーと見えない力に引っ張られてここまで来た、というモヤモヤ感いっぱいです。
わたしは取材に出かけられないので、取材アイディアが浮かんでも実行に移せない、試作品も作れない、という中途半端な宙ぶらりんな状態が続きました。
そんな中で今年「やったよ!」と言えるのは、2月に白