【読んでみましたアジア本】劉慈欣・著/大森望、光吉さくら、ワン・チャイ・訳『超新星紀元』(早川書房)
中国関連本の世界では超快進撃を続けていると言ってよいSF作家、劉慈欣氏の最新翻訳書を手に取った。紹介によると、大ヒット作『三体』シリーズを含め、劉慈欣の日本語翻訳作は9作目になるという(その他、短編が別の中国SFアンソロジーに収録されているが、それは数に入っていない)。翻訳、というだけで嫌がられる日本において、特に中国の小説本としては、過去にない大ヒット作家になってしまった。
この「読んでみました」でも過去、『三体』をはじめ、過去何回か劉の著作及び作品を紹介してきたが、彼の持ち味は一筋縄ではいかない「掌返し」である。まず小説の大前提となる事件や出来事が紹介され、そこから現代人が暮らす世界とは違う常識が通用する世界が展開する。その流れでストーリーが発展していくかと思いきや、必ずといっていいほど終盤でそれまでのメインストーリーにどんでん返しが準備され、そこからさらに大きく別世界が開ける形で終章を迎える、それがパターン。
2022年にご紹介した短編集『円 劉慈欣短編集』は、そんな「劉慈欣スタイル」を理解するのにもってこいの一冊だった。短編だとストーリー展開はそれほど複雑ではないので、読みやすいし、読み終わってからその全体像をつかみやすい。長編小説に慣れておらず、また全体像から掴みたい人にはぴったりだ。
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