「自由進度学習」、公教育で広がる 実験、学び合い…楽しみながら意欲引き出す 広島・廿日市市立宮園小での実践事例①
文部科学省の有識者会議で、広島県廿日市市立宮園小学校における【自由進度学習】の実践事例が共有されました。
その内容を、数回に分けてご紹介します。
▷自由進度学習とは
→学校教育の現場では、1人の教員が30〜40人程度の児童生徒に対して一斉に、一律の内容を教授する授業が一般的。
これに対して自由進度学習は、児童生徒(学習者)が授業の進度を自由に決めることができる。
なお宮園小では、自由進度学習について
《『学習計画表』に基づき、自分のペースで教科内容を学び進める学習方法。
教師は、子どもたちの自立した学習が成立するように、学習材や学習環境を整える》
と定義している。
【自立した学び手】の育成を掲げている宮園小。
その手段として、自由進度学習を2020年から取り入れています。
キーワードは
学習計画表づくり
“コーナー”設置による、学習環境の工夫
のようです。
異なる教科・単元を合体。関連付けて理解
こちらは『学習計画表』。
「単元ごとに計画表をつくり、子どもたちと共有するイメージ」(中谷一志校長)だそうです。
画像の計画表のテーマは、『重さ』。
算数『重さ』、理科『物の重さをくらべよう』の2つの単元を合体させ、1枚にまとめてあります。
両単元は別々の授業として展開されるのが一般的ですが、その内容には共通する要素が多いため、関連付けて学ぶことで理解をより深める狙いがあります。
自分で決めて、自由に取り組む学習
学習計画表に記された『学習活動』は
【必ずやり終える学習】と【自分で決めて自由にやる学習】に分けられます。
(画像の学習計画表では『1〜3、13・14』=必ずやり終える学習、『4〜12』=自分で決めて自由にやる学習)。
【自分で決めて自由にやる学習】は、どこから手を付けてもOK。自由進度学習の名称通り、自分で選び進めることができます。
教室の外に多彩な実験コーナー
子どもたちは授業の始め、【必ずやり終える学習】に取り掛かります。ペアを組み、教室内で学ぶ時間です。
ところがしばらくすると、子どもたちは次々に教室の外へ出て行きます。
【自分で決めて自由にやる学習】に移った子たちが、教室の外に用意されている各種“コーナー”に足を運んでいるのです。
コーナーとは、学びを体験によって理解するために設けられた区画のこと。
『重さ』のテーマでは全12種類のコーナーが設けられ、各コーナーには秤や粘土、ブロックといった道具が置かれています。
「ミッションA:すなや水を使って、1kgぴったりをつくってくれ!」
「ミッションC:ねん土の形をかえると、重さがかわるのか調べてくれ!」
「アトラクション⑧:きょうりょくして、1tにしてくれ!」
…など、各コーナーのお題に沿って実験などを行うことで
各単元の知識を体感として理解できる仕掛けです。
なお、実験は自分のタイミングで何度でも出来るそう。
知識の定着を図るツールとしては、スモールステップごとに作られたワークシートや
アプリで自動採点できるチェックテストなどを活用。
子ども1人ひとりの進捗状況を把握し、個別に支援しているといいます。
「楽しい」「授業を楽しみに登校している」
「楽しい」
「自分のスピードで進められるのが、いい」
「普通の授業より自由にできるから、やりやすい」
自由進度学習に対する、子どもたちの声です。
こうした授業を参観した保護者たちからも
「我が子が授業を楽しみに登校する姿を見ていた。
実際に見てみると、誰もが楽しく積極的に取り組んでいて、自由の中にしっかり学びがあると感じた。
我が子はこなすこと・させられることが苦手で、やる気をなくしてしまうタイプなので、今回の学習スタイルは合っていると思う」
「自由進度学習が始まり、家でもとても楽しそうに話をしていた。
参観で子どもたちの姿を見て、意欲的に取り組んでいると感じた。
子どもたち同士で協力したり、自分で進め方を考えたりしていて、成長した姿を見られた」
といった声が寄せられているそうです。
中谷校長も有識者会議の場で、「子どもたちの姿に確かな手応えを感じて、今日まで進められてきた」と語りました。
次回投稿では
なぜ、同小が自由進度学習に取り組むことになったのか
どのような試行錯誤を経てきたのか
にスポットを当ててご紹介します。