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花に嵐の映画もあるぞ(邦画編)。

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わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦…
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#ロシア映画

ボーイ・ミーツ・ガール・アンド・グッド・バイ。ロシア映画「動くな、死ね、蘇れ!」

どん底へようこそ。舞台は第二次大戦直後のロシヤの片田舎。暖かさ、朗らかさとは真逆の辺境。  少年期 という言葉の持つ煌めきと、はるかに程遠い、ほろ苦い土地。 非常に荒寥として寒々しい風景。地面は常に湿っぽく、いつもどんよりとした曇り空。建造物、丘陵、機械、家畜、何もかもが、よどみ、くすんでいる。 それは季節が冬のせい だけではない、スターリンの大粛清が人心に暗い影を落としているせいでも、あるだろう。ケガレなく輝くのは、24時間ぶっ通しで稼働し続ける(そしてこの片田舎の存在

戦争映画の臨界「炎628」_目が口よりものを言う、来たりて見よ。

現代の視点から見ると、80年代ほどノンキな時代はなかったと思う。 核の傘を前提にして、世界中の人間が生きていた。 アメリカの庇護、ソ連の庇護が、絶対的な秩序をもたらしていた。 (日本のバブル経済も対ソを意識したアメリカの庇護を前提に、成立していた) 核戦争は怖いけど、平和な世界はこの先も続くだろう。これも冷戦のおかげ。 アフガン?遠いよ。 アフリカ?野蛮。 WW2?昔そんなのもあったね…。 独裁政治は、共産主義のせい。 社会の不平等は、資本主義のせい。 などと、ノーテンキ

ソ連製戦争映画「ワーテルロー」_壮大な夢の、破れ。

この一軒家が、人類の星の時間を決定した。 今回は、ナポレオンという巨人が、全世界に対して挑んだ、最後の戦いを、ある種宇宙的・運命的響きを帯びて描いた戦争映画を紹介しよう。「ナポレオン」がこの先どうなるか知るための予習にも、もってこい。 それが1968年のソ連製戦争映画 「ワーテルロー」だ。 英雄ナポレオンと智将ウェリントンがヨーロッパの運命をかけて、ワーテルローの地で激突した戦いを描く。製作は「さよならを言わないで」のディノ・デ・ラウレンティス、監督は「戦争と平和」のセル

1962年金獅子賞受賞「僕の村は戦場だった」。 最後の眼差し、忘れられない。

ロシアを代表する映画監督:アンドレイ・タルコフスキー(1932年〜1986年)のキャリアは、戦争映画から始まった。 元々この映画は別の監督の手で製作が進んでいたが、中座していたもの。タルコフスキーはそれを引き継いだこととなる。 いわば、会社(当時所属のモスフィルム )から押し付けられた企画なのだが、この演出でタルコフスキーはその天賦の才を発揮することとなった。 じっさい、実質的なこの処女作において、タルコフスキーは1962年のヴェネツィア国際映画祭にて金獅子賞を受賞すること

ソ連を憎み娘を愛した男、ニキータ・ミハルコフの「太陽に灼かれて」に始まる三部作。

1994年 第67回のAcademy Award for Best International Feature Filmを受賞したのは、ニキータ・ミハルコフ監督のロシア映画「太陽に灼かれて」(原題:Утомлённые солнцем)だった。 彼は本作で自ら主人公:コトフ大佐を演じ、また、ミハルコフ自身の愛娘:ナージャ・ミハルコフが、コトフ大佐の愛娘ナージャを演じている。(授賞式のステージにはこの父娘で上がった) 「太陽に灼かれて」 これは、誰からも愛された。 時は193