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花に嵐の映画もあるぞ(邦画編)。

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わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦…
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#大映

シスコン勝新太郎。ブラコン大谷直子。増村保造の異常性愛映画「やくざ絶唱」。

自分の思うままに生きようとする子供っぽさ。どこまでも危なっかしく、だからこそ周りの元気のいいヤツラを魅了し集めてくる人たらしぶり。河内弁のやくざにせよ仕込み杖の按摩にせよ前線からの脱走兵にせよ妥協のない完璧な演じ方を見せてくれる男。 勝新太郎は、今なお、多くの映画ファンを魅了する。 そんな勝新太郎が大映も末期、1970年に主演した増村保造監督『やくざ絶唱』より。はいはいヤクザ映画ヤクザ賛美と席を立つのは待ってほしい。 時はまさにエログロバイオレンスの映画ばかりが受けた時代。

田宮二郎、黙っていても、もの扱いでも、いい男。増村保造監督「爛」。

"「ただ自分の現実を描く」ことしかなく、「作者が持ち得るべき思想」が一切なかった""次第に文学者仲間以外の興味も同感もひかぬ特殊な内容を持つようになった""作家が社会の塵埃を知らない、本質的にはのほほんとしたエリートであるが故の、自我の孤独と優越の文学"etc. 今となっては功罪半ばして評価される、日本の自然主義文学。 本家のモーパッサンやゾラと異なり、映像化の恩恵をまるで受けていないのも、この世代の作家に共通した特徴。田山花袋、国木田独歩、正宗白鳥、近松秋江、岩野泡鳴、真山

名前負け!ガメラの監督による"大映最後の青春映画"「成熟」

独り歩きする伝説、というのも存在する。崩壊寸前の映画会社が最後に送り出した、それも伝説的なシリーズの監督が携わった映画であれば、なおさら。 1970年、関根恵子(現:高橋惠子)氏は「高校生ブルース」にて、妊娠する女子高校生という当時としては衝撃的な役で、大映映画からスクリーンデビューを果たす。 以後『おさな妻』『成熟』と、悪者だらけの家族に囲まれ、自然早熟するほかなかったティーンエイジ役にてキャリアを積んできた彼女。1971年主演第7作、大映青春映画路線最終作にして、大映最

市川雷蔵「ある殺し屋」_四畳半住まいの、無口な、殺し屋。

殺し屋の物語にどうして人は惹かれるのだろうか。それは、彼らが非現実の世界にいき、「人が人を殺してはいけない」というしごく当たり前の倫理を易々と超越した場所で、遊ぶからだろう。 では、こんな殺し屋はいかがだろう。 ニヒルで無口で自分に厳しい殺し屋。 普段は料理屋を経営し、裏家業は針一本で獲物を仕留める凄腕の殺し屋。 小料理屋の主人・塩沢は高額な金で殺人を請け負う殺しのプロという裏の顔を持っていた。暴力団の幹部・木村の依頼で、敵対する組織のボス・大和田を見事に仕留めた塩沢に、

倍返しだ!市川雷蔵の時代劇「大殺陣 雄呂血」。

皆様は、周防正行監督 最新作の「カツベン!」をご覧になっただろうか? 本作に対する私の感想は、また別の機会にするとして…。 この映画の「後日談」に、広げた風呂敷が収束する脚本の巧みさには、さすが周防監督と感嘆しきり。(ホンに酔っているキライもあるけれど。) ニッポンの無声映画最高傑作と称される 阪東妻三郎主演の時代劇「雄呂血」につながるよう、計算されている。 この映画が当時どれだけ画期的だったかは、 主人公の運命のあまりの変転について行けない観客向けに、 弁士が「夢オチバ