
叱ること、本当に必要? 村中直人(2022)『〈叱る依存〉がとまらない』,紀伊國屋書店,を呼んで
最近、子どもたちから、「うちのママは厳しい」、「自由がない」、なんて、話をよく耳にします。
そこで、以前読んだ『〈叱る依存〉がとまらない』を思い出しました。
この本には叱ることのメカニズムが書かれていました。僕の感想を以下にまとめます。
01 「叱る」とは
この本において、「叱る」とは以下のように定義されます。
言葉を用いてネガティブな感情体験(恐怖、不安、苦痛、悲しみなど)を与えることで、相手の行動や認識の変化を引き起こし、思うようにコントロールする行為
ここでポイントなのは、ネガティブな感情体験を与えることで、他者をコントロールしようとする行為ということです。
02 叱ることの脳科学的な影響
① 叱る側の脳の変化:報酬系の活性化(ドーパミン)
叱ると「相手をコントロールできた」と感じ、快感をもたらすドーパミンが分泌される。これが繰り返されると、叱ることが快感になり、やめられなくなる=「叱る依存」。
② 叱られる側の脳の変化:ストレスホルモン(コルチゾール)の増加
叱られると、ストレスを受け、**コルチゾール(ストレスホルモン)**が分泌される。コルチゾールの過剰分泌が続くと、記憶や学習を司る海馬が萎縮し、子どもが適切な判断をしづらくなる。
叱るという行為は、叱る側には快感が、叱られる側にはストレスが起こる。叱る側が叱る依存に陥ってしまうと子どもたちに及ぼす影響は計り知れません。
03 叱られ続けるとどうなる?
- 「学習性無力感」につながり、挑戦しなくなる
例「どうせ僕なんて…」
- 「叱られないための行動」しかしなくなる
例「なんとかしてこの時間を早く終わらせたい」
→「叱られたとき、どうしたらすぐに説教が終わるか」
- 指示待ちの姿勢が強まり、自主性が育たない
例「叱られないと行動しない。」
子どもたちが、自分で判断して行動することができなくなってしまいます。
本来、保護者も学校関係者も、そういった子どもの姿を望んでいるはずはありません。
04 叱られずに子どもが成長するには?
- 「ダメ!」ではなく、具体的によい行動を伝える
例「○ ○ するといいんじゃない?」
- 子どもの視点に立ち、共感する
例「どうして?」ではなく、「悲しかったんだね」と思いを受け止める聴く姿勢が大切
- できたことを認める習慣をつくる
例「○ ○ を頑張ったんだね!」 結果ではなく、過程を受け止めていく。
叱るよりも「できたこと」を伝える方が、子どもは自主的に行動を選択できるようになるんですね。
05 「叱る」を手放そう
- 叱ることは一時的な効果しかない
- 叱るよりも「伝える・認める」関わりが大切
- 「叱らない子育て」を考えてみよう
- 学校教育の〈叱る依存〉を考えよう
→強制された我慢で人は強くならない。
→罰を与えれば反省するという幻想
06 まとめ
結局、他者を強制的にコントロールしようとしても、うまくいかない。人間はそんな単純ではない。
子どもも大人も同じ、どのように接することが良いのか、もう一度、これまでの当たり前を問い直していきたい。
この本に書かれていることが全て正しいということではなく、この本をきっかけにして、これまでの自分の行動についてふり返る機会になればいいなと思っています。
多くの教育関係者に届きますように。