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【キネマ救急箱#12】ナイル殺人事件 〜65mmフィルムと見事な撮影セットが織りなす、エキゾチックな1930年代のエジプト〜
こんにちは。
ニク・ジャガスです。
ついに。ついに観てきましたよ。
2年待ち焦がれた『ナイル殺人事件』を!
チケットを予約した夜は、興奮して眠れなかった…。
「明日ポアロを見るんだ!見るんだ〜!」と、イソップ物語に出てくる子供みたいにハシャいでました。笑
フォロワーさんの記事で、IMAXでの鑑賞がオススメ!と拝見していたので、500円追加してIMAXシアターにて鑑賞。
これがもう最高でした。さすが65mmフィルム。
1930年代エジプトの崇高な雰囲気と、豪華すぎる俳優陣の存在感を余すことなく表現していました。
現像はKODAKの関連会社、スキャンはFOTOKEMの関連会社なんですね。
フィルム撮影作品が限られる昨今のハリウッドで、本編マルっと65mmネガが届いたら、現場も腕まくりして張り切っただろうな…。
※以下、『ナイル殺人事件』の重要なネタバレを含みます。ご注意ください。
あらすじ
エジプトのナイル川をめぐる豪華客船内で、新婚旅行を楽しんでいた大富豪の娘リネット(ガル・ガドット)が何者かに殺害される。容疑者は、彼女とサイモン(アーミー・ハマー)の結婚を祝いに駆け付けた乗客全員だった。リネットに招かれていた私立探偵ポアロ(ケネス・ブラナー)が捜査を進めていくうちに、それぞれの思惑や愛憎が絡み合う複雑な人間関係が浮き彫りになっていく。
異国旅情を存分に醸し出すIMAXのドヤ感
すでに沢山のレビューで触れられているかと思いますが、今回、本当にエジプト殺人旅行に自分も参加している気分になれます。
65mmフィルム撮影×IMAX上映という最高峰のボディブローを2時間受け続けるため、没入感が半端じゃない。
驚いたのが、実物と見紛うほどの撮影セット。
なんと、アスワンのカタラクト・ホテルも、アブ・シンベル神殿も、豪華客船カルナック号も、全て撮影セットを一から組んでいるという!
またまた〜、小さいセット沢山作ったんでしょうよ〜と思っていたら。
本編の中盤くらいで、船首に立つリネット(ガル・ガドット)がデッキをずーーーーーっと歩いて船尾に辿り着くというワンショットが入るのです!!
「どうですか?7ヶ月かけて製作した本物よ?」という声が、ポアロの奥に潜むケネス・ブラナーから聞こえてきます。
追加情報で、船内の装飾やインテリアなども本物と知り、膝から崩れ落ちました。
もうとにかく、映画の最初から最後まで「豪華絢爛」という一言に尽きます。
物語から話は逸れますが、上映前に流れるIMAX紹介映像のドヤ感すごいですよね。笑
「ほらここから…(ドゥンドゥン)、ここからも…(ドゥゥゥゥンドゥゥゥゥン)」みたいな。
いつも「すげーーーー!」ってなっちゃうんですけどね。
予告編挟んで本編始まるかな?って思ったらカウントダウン始まるし!
「もうスゴいのは分かったって!笑」って思いながらも、観客をIMAXに引き込もうとしてくれる映像が愛おしい。
最後の「映画を見るか、それとも、映画の一部になってしまうか」の一言は毎回痺れます。
前作と比べ、立ち上がりはスロー
ケネス・ブラナー版ポアロの前作、『オリエント急行殺人事件』と比較すると、『ナイル殺人事件』の立ち上がりはスローです。
物語の前半は主に、登場人物の関係性や、痴情のもつれの描写に充てられます。
原作シリーズの予備知識が乏しいため、予告編でしか本作のことを知らず、どうやら船で殺人が起こるらしいということは理解していました。
なので、「あれ?全然船に乗らないな?」と気になってしまい、少しだけ間延びした印象を持ってしまった感じです。
ただ、鑑賞後に読んだある記事では、原作も前半部分は人間模様が描かれるパートだと書かれていたので、忠実な再現だったと言えるのでしょう。
こういう推理映画は、次の展開がはやく知りたいあまり「早く殺人起きないかな〜」とモラルの欠片もない発言に繋がるため、注意が必要ですね。笑
今回は、生前の美しいリネットを存分に見られたので良しとします。
人は愛のためになんでもする
ポアロが口にする「人は愛のためになんでもする」は、この映画のキーフレーズです。
「愛」という情熱的で、時に人の理性を失わせる、美しくも恐ろしい力。
リネットを中心に、複雑に絡み合う12人の「愛」に、名探偵ポアロの推理も混迷を極めます。
全乗客に殺人容疑をかけ、激しい言葉で揺さぶりをかけるポアロ。
真相が見えないままに犠牲者が増え、極め付けには心の友を救えず、目の前で絶命させてしまいます。
友情という「愛」に手をかけた犯人を、絶対に逃すまいと復讐心を燃やすポアロ。
その犯人は、ポアロが長年閉じ込めていた脆く悲しい思い出を、「この子の憎しみを止められるなら」と思って告白した相手、ジャクリーンでした。
打ち明けた真意を踏みにじり、かけがえのない友人を奪ったジャクリーン。
ポアロが彼女に向けた銃口は、ともすれば引き金を引く準備はできていたはず。
しかし、ジャクリーンが下した決断は、誰しもの想像を超えるものでした。
港に到着し、5人の遺体が船から運び出され、次々と乗客が下船します。
楽しいはずの新婚旅行は、それぞれの「愛」の醜い部分を白日の元にさらし、見つめ直す旅路になってしまったのでした。
ラストシーンのポアロの真意
リネットの結婚パーティが行われたのと同じ会場で、歌のリハーサルをしているサロメ。
彼女を見つめるのは、お決まりの席に座ったポアロ。
なんと、亡くなった婚約者のアドバイスで生やし続けた髭を、全て剃り落としていたのでした。
このポアロの行為、観客を推理タイムに誘ってますよね。
さながら『シェーン』のラストシーン、彼は生きてるのか死んでるのか、みたいな…。
個人的な解釈に過ぎませんが、髭は亡き婚約者への想いの象徴だと考えています。(ケネス・ブラナー版ポアロにおいて)
その髭を全て剃り落とした彼は、次の愛に進もうとしている。
また、それとは別に、髭は戦争で負った傷を隠すものでもありました。
あえて傷をさらけ出すことで人に伝えにくい過去も、サロメのように隠すことなく堂々と見せながら生きていく。
そこで初めて自分とサロメが対等になり、さぁ関係性を始めようというポアロの決意を感じとることができました。
『ナイル殺人事件』は推理映画としても、愛憎劇としても、旅行ムービーとしても必見の作品です。
気になった方は是非、劇場で(よければIMAXで!)チェックして見てください。
今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました😊