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【キネマ救急箱#5】『355』〜”女スパイ映画”ではなく“スパイ映画”である〜

こんにちは!
ニク・ジャガスです🧚🏻‍♂️

毎度、ゆるっとした映画感想文をUPするキネマ救急箱ですが、
今回はチョットだけ語ってしまいました…☺️笑

映画『355』についてのレビューです。

結論から言うと、とても良作でした!
俳優や物語の内容だけで語るには勿体無いかも…?と感じてます。

この想いを、うまく書けるか少し不安です。
語彙力のない自分は、いま辞書を丸呑みしたいです。

が、ハリウッドの映画制作において、エポックメーキングな作品になったのではないでしょうか。

それでは、背景も含め魅力溢れる『355』について、レビューしていきます!
※ほんのりネタバレを含みます。ご注意ください。

映画『355』の紹介

あらすじ

アメリカのCIA本部に緊急情報がもたらされた。あらゆるセキュリティをくぐり抜け、世界中のインフラや金融システムなどを攻撃可能なデジタル・デバイスが南米で開発され、その途方もなく危険なテクノロジーが闇マーケットに流出しようとしているのだ。この非常事態に対処するため、CIAは最強の格闘スキルを誇る女性エージェント、メイスをパリに送り込む。しかしそのデバイスは国際テロ組織の殺し屋の手に渡り、メイスはBND(ドイツ連邦情報局)のタフな秘密工作員マリー、MI6のサイバー・インテリジェンスの専門家ハディージャ、コロンビア諜報組織の心理学者グラシエラと手を組んで、世界を股にかけた追跡戦を繰り広げていく。やがて中国政府のエージェント、リンもチームに加わるが、彼女たちの行く手には想像を絶する苦難が待ち受けていた……。果たして第三次世界大戦を阻止することができるのか——

公式サイトより

主要登場人物

■メイソン・メイス・ブラウン(演:ジェシカ・チャスティン)
  所属:アメリカ CIA
■マリー(演:ダイアン・クルーガー)
  所属:ドイツ BND
■ハディージャ(演:ルピタ・ニョンゴ)
  所属:イギリス MI6
■ドクター・グラシエラ(演:ペネロペ・クルス)
  所属:コロンビア DNI
■リン・ミーシェン(演:ファン・ビンビン)
  所属:中国政府

■ルイス(演:エドガー・ラミレス)
  所属:コロンビア 特殊部隊要員
     グラシエラの患者
■ニック(演:セバスチャン・スタン)
  所属:アメリカ CIA
     メイスの相棒

ここが推せる!2つのポイント!


世界を股にかけて活躍する、多国籍な女優たちの共演。
言わずもがな、本作の大きな魅力の一つですよね!

私自身、「5人の女優が、強く、美しく、華麗に戦う姿を拝みたい」という極めて自然な心持ちで、劇場に向かいました。

結果、本作を語る上で、それは序章に過ぎませんでした。。
私が、これほどまでに強く「推せる!」と思ったポイントは次の2つです。

①“女スパイ映画“ではなく、“スパイ映画“であること
②出演女優たちによるエンパワーメントの集結

①“女スパイ映画“ではなく、“スパイ映画“であること


まず最初に伝えたいこと。
本作は「女スパイ映画」ではなく「スパイ映画」であるということです。

ハリウッド映画史において『ミッション:インポッシブル』『007』シリーズなど、例の枚挙にいとまがないほど、スパイ映画は男性主人公であることが圧倒的に多い。

最近でこそ、『オーシャンズ8』や『ブラック・ウィドウ』といった、自立した女スパイを描く作品も徐々に出てきましたが、全体からすると微々たるもの。

それと同時に、従来の女スパイ像に観客は(少なくとも私は)こんなポイントを勝手に探していました。

  • 「華やかさ」「女性らしさ」「完璧な美」を備えている

  • 屈強な男どもを、華麗にノックアウトする

  • 無敵、滅多に負けない

  • どんな男性も誘惑できる自信と色気がある

一方、『355』はどうか。

彼女たちは皆、リアルで泥臭い。
特にメイスとマリーは顕著です。

メイスは、ロンドンの巨大魚市場で壮絶な銃撃戦を繰り広げた際、ヒール靴でマリーを容赦なく階段から蹴り落としたり。
かと思えば、靴の幅ほどしかないような鉄骨を歩く直前、一瞬だけためらいの表情を見せたり。
中国オークション会場では、屈強な男一人を倒すのに満身創痍になったりもします。

一方マリーは冒頭パリのチェイスシーンで、道端にあるものをひたすら倒してメイスを足止めしようとしたり。
モロッコに移ると、追手を撒くため、とっさに露店の金を掴んで地面にばら撒き、大勢の子供たちに拾わせることで道を塞ぐ。
決して華美ではない、小汚いショルダーバッグに銃口を隠して敵を仕留めたりもする。

そうなんです。
彼女たちは、数回の蹴りで相手をノックアウトしたり、万能なガジェットを手に入れることはありません。
その場にあるものを瞬時に判断し、己にある力を最大限に活かして必死な戦闘を繰り広げる。

敵を倒した後、右眉だけクイッと上げて颯爽と立ち去る、なんて描写はないんです。

唯一戦闘に関わらない心理学者グラシーの存在も大きい
映画によくある「さっきまで一般人だったのに、急に戦闘力が上がって敵をぶちのめす」なんてことはありません。

彼女の武器は知性です。
男性から情報を得る場面でも、色気の利用に抵抗を示し、自身の心理学テクニックを活かします。
弱音ばかり吐いていた彼女が、勇気を振り絞って行動を続け、変わっていく姿は爽快です。

そんな彼女たち呼称するならば、“女スパイ”ではなく、ジェンダーの概念を取り払った“スパイ”だと、思うのです。

女性である以前に、一人の人間として、戦っている。
男性と比較して遜色ない、といったものでなく、絶対的なもの。

唯一アンリアルだったところは、各国エージェントが手を取り合うところですかね。笑
リアルを追求する本作で、唯一エンタメ要素があったならば、そこかな。。

②出演女優たちによるエンパワーメントの集結

ファン・ビンビン演じるリンの台詞に、こんなものがありました。

「私たちは言葉は違っても中身は一緒」

5人とも国籍は違うし、背負っているものも、言語も違う。
だけど、一人の人間同士として、そこに違いはない。対等なんだと。

ともすれば、「綺麗ごと」とも捉えられる一言かもしれません。
ですが、『355』の製作背景がそうは言わせないのです。

本作プロデューサーを務めるジェシカ・チャスティンが、2017年のカンヌ国際映画祭に参加した際、世界から集まったアクション映画に女性主人公の作品がほとんどない、と言う事実を目の当たりにして、本プロジェクトが発足。

制作スタッフはもちろんの事、主要キャストもチャスティンによる直接交渉。
どんな役柄を演じたいか本人たちの希望を聞き出し、対等に映画制作に携わってもらえるようギャラも同額、という徹底ぶり。

撮影スタジオには子供用トレーラーを設け、女性キャスト、スタッフが安心して仕事ができる環境を作るなど、
従来のハリウッドにおける人種、性別で扱いに差がついてしまう現状に疑問を呈し、自らの手でメスを入れています。

これらの取り組みが業界全体に浸透するには、きっと時間がかかるんでしょうね…。
無謀だという声も、少なくないのかもしれません。
ただ、チャスティンの取り組みは映画作品となって結実し、不可能ではないことを見事に証明しました

アメリカの独立戦争時代にジョージ・ワシントン大統領のもとで働いた、実在の女性スパイのコードネームに由来する『355』という題名。

これまで歴史の影に隠れ、人知れず活躍してきた女性たちに対し、主演女優たちのエンパワーメントを集結させて賞賛を送った作品なんだと感じました。


熱く語ってしまいましたが、そんなに考え込まなくても十分に楽しい映画です!興味がある方はぜひ、劇場でご覧ください。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました😊

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