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ホームスティをした学生から遅れて届いた年賀状


今年の1月20日過ぎ、日本からエアメールで年賀状が届きました。
それは数年前に我が家にホームステイしていた男子学生A君からのものでした。年賀状がこんなに遅れたのには理由があります。カナダポストがクリスマスシーズンからしばらくストライキを続けていたのです。

A君は私から年賀状を受け取った連絡がなかなか来ないのを心配して、インスタグラムでメッセージを送ってきました。それをきっかけに久しぶりに彼とメッセージのやり取りをしました。今年も忘れずに年賀状を送ってくれたA君の元気な様子とその律義さが嬉しかったです。

年賀状が遂に届いたその日、お天気もよかったので、A君が過ごしたカナダの町の写真を撮りに出かけ、それらをインスタに投稿したことをA君に伝えました。
「そうだったなぁ、あんな感じだったな。そんなこともあったなぁ。また行きたいなぁ」と誰かに嬉しそうに見せているA君の姿を想像しながら。
同時に私もこれまで我が家にホームステイしてきた学生たちのことを思い出しました。


夕陽を観に行った夕方の海

カナダで日本人学生をホストするということ

私たちの町には毎年、中学生から大学生まで、多くの日本人学生が学校や団体のプログラムで短期語学研修にやってきます。短ければ1日から3週間ぐらいまで、日数はさまざまです。
時には違う学校の学生が合計で100人以上同時期にホームステイをすることもあり、ホストファミリーの確保が難しいこともあります。また、英語以前にコミュニケーションそのものが苦手な学生もいます。そんな時に私も頼まれて都合がつくようなら日本人学生をホストすることがあります。

A君が我が家に来たのは、ホスト不足がきっかけでした。私たちは日本人家庭ですが、ホストと学生は基本的に英語で会話します。よほどの事情がない限り、日本語は使いません。現在でもA君とのやり取りは全て英語ですよ。

カナダでホームステイというと、多くの人が欧米系の家庭を想像するかもしれません。しかし、カナダは多文化共生の移民国家。ホストファミリーもさまざまなバックグラウンドを持つ人たちです。中国系、フィリピン系、インド系など、英語を母語としないカナダ人も多くいます。英語の流暢さやアクセントも千差万別ですが、それもまたカナダの魅力です。

なぜなら、海外で英語を話すときに必ずしも発音も文法も完璧でなくても良い、ということに気づき、英語を使う心のハードルが下がるからです。
また、いろいろな移民者を見ることで自分自身が海外で暮らすとどうなるのかのヒントもあるでしょう。
学生たちは、カナダの多様性や移民の逞しさに触れる貴重な経験にもなるでしょう。


ホストファミリーと学生が集まって野外パーティ

ホームステイの想い出

これまで私がホストした学生たちは、中国人高校生と日本人高校生です。
それぞれに思い出深いエピソードがあります。

中国人の男子学生2人とは、クラシックカーと飛行機のエアショーのパンケーキブレックファーストに行ったり、公園になっている無人島で散歩をしたりしました。途中、遊歩道に「クーガー出現のため通行禁止」の写真付き張り紙があり、みんなで驚いて張り紙と一緒に写真を撮ったのは楽しい思い出です。

一方、中国人の女子学生2人は、バスを乗り過ごして迷子になり、ヘルプの連絡をしてきたり、学校でシャネルの口紅を盗まれたと悔しがりながら、翌日にはシラーっと同じ口紅を買いに行ったり、よく見るとコムデギャルソンのTシャツにEBISUのジーンズだったり、ツンデレ気味のお嬢様っぷり。そんな彼女達が最終日には大きな花束をプレゼントしてくれて泣いていた姿に、こちらが驚かされました。

ナイトマーケット・夜7時でもこの明るさ

日本人学生の思い出も多くあります。男子高校生3人を同時にホストした時は、まさに修学旅行のノリで賑やか。彼らをカナダ人の友人がいるキャンプサイトに連れて行き、キャンピングカーを見学したり、ソーセージを焼いたり楽しんで、ニコニコしているものの、すっかり大人しくなってしまいました。それでも時折り簡単な英語で助け合いながら一生懸命コミュニケーションを取ろうとする姿が微笑ましかったです。

散歩に行った湖。浮かぶプライベートデッキ

また、別の日本人男子学生2人を知合いの家のThanks giving dinnerに連れて行った時のこと。彼らはコミュニケーション自体が苦手なのか、私達とも会話が「Yes」や「No」で終わるのですが、知人の家でもやはり「Yes/No」クイズ状態で一向に会話にならず、知人も戸惑い、学生も居たたまれない様子だったので、早々に帰ったこともありました。でも、彼らがレストランで教えた英語を使って注文したり会話をして、それが通じた時の嬉しそうな顔は忘れられません。

一緒に歌った教会

今回年賀状を送ってくれたA君ともう1人のB君は、特に印象深い学生たちでした。英語での意思疎通もでき、なんでも積極的でした。近所のイギリス人老夫婦にお願いして市内観光に連れて行ってもらったり、教会のミサにも参加してみたいと言いました。自宅での歌の練習にも熱心に取り組み、教会ではクワイヤーメンバーとも話をしている様子に感心しました。そんな経験を新鮮に感じてくれたり、ちょっと自信がついたようで「世界は面白い。もっと話せるようになりたい」と二人とも思ってくれたようでした。

学生も思わず写真を撮りたくなる夕焼け

ホームステイがもたらすもの

こうして振り返ると、英語力があることでホームステイの楽しさが何倍にもなることを改めて感じます。英語が話せれば新しい経験も増え、積極的になれるのです。これは一時的なホームステイだけでなく、海外移住者にも同じことが言えるでしょう。
私は「Yes/No」だけでも精一杯だった日本人学生の気持ちも、3人いたからこそカナダ人の中でその場を乗り切れた学生の気持ちも、なんとか少しでも話をしてみようと勇気を出した学生の気持ちもよくわかります。
私自身がまさにその状態からカナダ生活を始めているからです。

カナダ人の他のホストから
「日本人学生は食事以外はすぐ部屋に閉じこもる。日本人同士だとあんなによく楽しそうに話しているのになんで私達とは話そうとしないんだ?だからこちらも話しかけるのを諦めた」という話を聞くことがあります。

それに対して
「彼らは悪気はなくて英語で上手くコミュニケーションができないので、恥ずかしかったり、どんな話をしたらいいのかわからなかったり、ストレスを感じているだけで、ホストに不満があるわけじゃないよ。」と説明したりします。学生も辛いけどホストも不安になったりするものです。

バレンタインデーのデコレーションをしているお宅(珍しいです)

短期間の語学研修プログラムでは、思うように英語を話せなかったり、悔しい思いをする学生も多いかもしれません。それでも、少しでも英語で話せたことや新しい経験が、これまでのホームスティをしてきた学生たちやこれからのホームスティをする学生たちにとって、A君のように少しでもさらなる好奇心、次の挑戦への意欲やにつながればいいなぁと心から願っています。

春の息吹を感じるようになった湖で一服

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カナダで時々お抹茶(西島わけい)
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