私が出会ったカナダのファーストネーション(先住民)の人達
今回はNoter さんでバンクーバー島にお住いのCindyさんの
面白いファーストネーションの話に刺激されて、
私が出逢ったカナダのファーストネーションの人達の
一部の方をエピソードを交えながら、書いてみました。
Cindy さんの記事、おススメです。
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コスタリカ出身のレニーが突然、
「私はキリスト教とかカソリックって嫌いなんだよね。」
と言い出しました。
私が毎週のようにカソリックの教会に
行ってクワイヤーで歌っているのを知っていて
悪意なく言っています。
私は教会で祈る雰囲気や歌うのが好きなのであって
キリスト教信者ではないので
その言葉に別に違和感は感じません。
「でも教会に来てる人はやさしくていい人多いよ。」
と私が言うと
「そんなフリしてるだけ。」
とレニーが言う目の前で
ファーストネーション(先住民)のボニーが
口元に笑いを浮かべながら、下を向いてうなずいています。
「えー、そうなの?」
とボニーに向いて尋ねると笑いをかみ殺すように
さらに大きくうなずいていました。
キリスト教徒と社会正義
確かにキリスト教には黒歴史、闇、疑問も多い。
以前レニーから
「コスタリカはカソリックが国教で
もし妊娠中絶はしたら違法だから逮捕されるよ。」
と聞いたときはかなりびっくりしました。
宗教の教えが基準で正義がある社会って息苦しい。
ファーストネーションのボニーにしても
カソリック教会に良い印象があるはずもありません。
悪名高きレジデンシャルスクール(寄宿学校)を
率先して管理運営していたのはカソリック教会ですからね。
白人文化に同化させ先住民を近代化するという
身勝手な大義名分の下、
強権的にファーストネーションを管理し、
文化的アイデンティティー、家族、コミュニティを破壊し、
率先して無力化させてきたキリスト教社会です。
最後のレジデンシャルスクールが廃止されたのが1996年。
地域にもよりますが、現在の30代半ばの以上の世代には
レジデンシャルスクールを経験した人がいるのです。
ボニーの身近な、両親や祖父母、親戚の中にも
レジデンシャルスクールの虐待、劣悪な環境の
トラウマを持つ人がいるはずです。
なので当然キリスト教の信者を
私の様に単純に「いい人たち」とは言えないよね。
ファーストネーションに対する偏見
こうしたカナダの黒歴史ともいえる
ファーストネーション(先住民)に対する政策を
2008年、カナダのハーバー首相は謝罪し、
「Truth and Reconciliation Commission of Canada」(和解委員会)を
設立し、調査や補償など和解をすすめる動きが出てきました。
その中でカナダ人ですら知らなかったファーストネーションの
実態が明らかになり、理解し、尊重し合おうという風潮は進んでいます。
とは言え、私は現在でもファーストネーションに対する
カナダ人の偏見を感じることがあります。
ファーストネーションの人達が抱える問題点として
があげられますが、こうした実態を元に
ファーストネーションの人はどうしようもない、
怠け者、政府の補助に依存している、教育レベルが低い、貧しい、
といった差別的、蔑視に近い見方を持っている人も多いのです。
ファーストネーションの過去の歴史を知って
哀れみや罪悪感を感じても自分には関係ない人たちと
思っている人も多いのです。
ファーストネーションの人達との出会い
「バンクーバー島はファーストネーションの人を
よく見かける」なんて言う人がいます。
私もカナダに来た当初は
ファーストネーションの人達って特殊な人たち、
と思っていたので「出逢えるのかな」なんて思ってましたが、
やはりここはバンクーバー島、しっかり出会いました。
一番最初に出逢ったのは大学の1か月の
「就職支援の無料プログラム」でした。
クラスは10人でそのうちの4人(男性2女性2)が
ファーストネーションでした。
このクラスでは、とにかくファーストネーションの
男性2人は大人しくて無口。
女性は面倒見が良くてやはり控えめ。
私は言葉が上手く話せないので
彼らの控えめでゆっくりでやさしいところが
居心地がよかったです。
さらに彼らはファーストネーションならでは
美しさや逞しさがあるので
きっと時代が時代ならポカホンタスに出てくるような
勇者たちや首長の娘やお母さんなんだろうなぁと
よく妄想していました。
でもあまりにも男性が大人しすぎて
見た目に反して弱く感じるので
女性のジェリーに
「なんでみんなそんなに控えめなの?」
と聞いたら
「ファーストネーションは自己肯定感が低いの。
それも大きな課題なんだけど時間かかるよね。」
と答えました。
後でその勇者のような見た目で無口の男性のコビーが
アルコール依存症のリハビリを受けた後で
今回のプログラムで就職活動につなげたいと考えている
ことを知りました。
その後、彼はヘルスケアの資格を取得し、
この小さな町から都会に出て自立して暮らしています。
ジュリーもプログラム終了後、ファーストフードの
マネージャーになったと聞きました。
その後も何人かのファスートネーションの人達と
出逢ってますが、そのほとんどがコツコツと働いて
普通に生活をしています。
カナダ人がファーストネーションにイメージする、
「いい加減でどうしようもない、可哀想な人たち」では
決してないのです。
そんな偏見や哀れみが未だに彼らを惨めな気分
にさせていると思います。
イクラある?
カナダの西海岸は魚介類が豊富で
個人で釣ったり、採ったりもできますが、
サーモンとなると釣るのも捌くのも大変。
サーモンは店頭でもたくさん並んでいるので
釣らなくても食べられますが、
イクラが店頭に並ぶことは多くありません。
そこでお願いするのが
ファーストネーションの知合いです。
ファーストネーションには商業的漁業が認められていて、
イクラを食べる習慣もあるので彼らに
イクラを分けてもらうのです。
私も一昨年はファーストネーションの知人にお願いして
イクラを2本買いました。
なんのサーモンのイクラかも気にせずに買いましたが、
ほぐすのが大変すぎて正直懲りました。
もうお願いすることはないでしょう。
その他、喫煙者の中にはファーストネーションの
知人にタバコを購入してもらう人もいます。
ファーストネーションのID(身分証明書)があると
煙草やお酒の税金が掛からないからです。
この政策がいいのかはちょっと疑問ですが、
優遇税制となっています。
この他、大学の学費が安くなるなど
教育面での支援もあります。
高等教育を多くの人が受けることによって
ファーストネーションの人が
社会で活躍する場が広がることにも期待したいです。
存在感を増すファーストネーション
ファーストネーションと言うと前述のイメージで捉らえて
「そんなドラック中毒の人、わたしの知合いにいないし」
って感じで自分とは接点がないと思うかもしれません。
でももしかしたら実は彼らの存在に
気が付いていないだけかもしれません。
なぜかというとファーストネーションと言っても
見た目がまるっきり白人の人もいるからです。
遺伝的にはメスティーソ(混血)かもしれませんが、
生まれも育ちもファーストネーションコミュニティーの人です。
彼女や彼らが自分から言わない限りはわかりません。
それにファーストネーションは普通に
あちこちで働いていたり、大学で勉強しています。
ファーストネーションの人の中にも低所得の人もいるし、
高所得の人もいます。それはカナダ人と全く同じです。
ちなみに前述のボニーは5人の息子を持つ
フルタイムのシングルマザー。
上の二人の息子は成人していますが、一番下の息子は12歳。
最近、家賃$2600(28万円程度)のボニーの実家に近い
一軒家に家族で引っ越しました。
お兄ちゃんたちが下の子の面倒を見たり、
経済的にも家族を助けてると思うけど、
なんだかとっても頼もしい。
家賃$2600の家を借る、ってなかなかできませんよ。
あなたのファーストネーションのイメージとは
ちょっと違ったんじゃないですか?
市や大学の式典でもファーストネーションの人の
パフォーマンスやスピーチが行わるようになってきました。
1996年から6月21日は、「National Aboriginal Day」
(先住民の文化と貢献を祝う日)。
2021年より9月30日は「The National Day for Truth and Reconciliation (真実と和解の日)過去の過ちを忘れない日」になりました。
BC州では、2023年より法定祝日です。
同時にこの日はオレンジシャツデーで、
当日はオレンジ色のシャツを着ている人を良く見かけるでしょう。
「すべての子どもが大切(Every Child Matters)」というメッセージとともに、レジデンシャルスクールで亡くなった子どもの遺族や生存者とその家族、コミュニティへの敬意を表します。
このようにファーストネーションの歴史、文化、信仰、思想、
コミュニティーが、カナダの観光資源としても注目されるなか、
カナダ社会の中で彼らが存在感を強めていくことを
私は期待しています。
特定の民族が不利な状態にあったり、
不当に蔑視されたり、卑下するような社会は
カナダらしくないし、面白くないし、楽しくないですからね。
今回は長々と書きましたが、ここまでお付き合いいただき、
ありがとうございました。
Cindy さんは他の記事で
アイヌの話も書かれているのでおススメです。
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