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サクラサク。

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吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ご主人様がいる家の帰り道を忘れて、ニンゲン・サクラと出会う。ニンゲンとネコは、生きるスピードが違うのだ。それでも、神様に飼われるその日まで、相手…
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2020年5月の記事一覧

サクラサク。ep16

サクラサク。ep16

夜と朝が挨拶を交わす。特別だと思っていた金色の世界。
だけど、お日さまはどんどんと登り、景色はあっという間に見慣れた色へと移ろいゆく。

「帰ろうか」

サクラが、自分に言い聞かせるようにつぶやく。
人間と猫による愛の逃避行は、あっという間だった。金色の世界に包まれているときから、きっとサクラはそう言い出すだろうと、名残惜しい気持ちもあるが、何処かではわかっていた。

仕事へと向かう人の波に逆らっ

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サクラサク。ep15

サクラサク。ep15

ガタン、ゴトン。
生まれて初めて乗った電車は、人間に抱きしめてもらった時の、鼓動のリズムと何処か似ている気がした。
全ての生き物は、生まれた時から死ぬまでに胸打つ鼓動の数が同じだと聞いたことがある。ただ、音の速さが違うのだ。

ネズミは早いから寿命も早く訪れるし、カメはとてもゆっくりだそうだ(ご主人様が言っていたことだから、本当かは微妙だ)。

吾輩は猫であるが、人間の心臓の音は、猫より少しゆっく

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サクラサク。ep14

サクラサク。ep14

『銀河鉄道の夜』みたいだ。
--黒猫である吾輩・朔(さく)は、生まれて初めて乗る電車を見てそう思った。何しろ、人生(ネコだから猫生だろうか?)の大半を、ご主人様の家で過ごしてきたのだ。
ご主人様が語ってくれる電車なんて乗り物は、小説の中でしか存在しない空想上のものだと思っていた。
それなのに、吾輩は人間•サクラと電車に揺られている。ご主人様の知らないところで。

「電車の中に入ったら、大人しくして

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サクラサク。ep13

サクラサク。ep13

「クロ、起きてる?出かけよう」

吾輩は猫である。そんな毎度お決まりの挨拶をする暇もなく、サクラは空が明るくなる前に、吾輩をカバンの中に押し込んだ。

思い返せば、サクラは昨晩から様子が不自然だった。
「ただいま」
いつものように玄関まで迎えに行ったが、サクラはしゃがみ込んでしばらく動かなかった。
顔を隠して、何も言葉を発しない。
お腹でも痛いのだろうか。ミャーと鳴いて声をかけてみる。サクラはやっ

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サクラサク。ep12

サクラサク。ep12

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ご主人様と離れて人間・サクラと暮らし始めた。なお、サクラと一緒にいる間はクロと呼ばれている。

お互いが、お互いのいる生活に慣れ始めた。
「ただいま、クロ」
玄関まで迎えに行くと、靴をきれいに揃えるサクラが、吾輩の頭に触れる。吾輩は甘んじて受け止める。

一緒に暮らし始めた当初、サクラは慌てたように帰って来ていた。吾輩のことが心配だったらしい。サクラは今まで猫を飼

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