見出し画像

知らないから学び できないから習う #03 七転八起

何事も最初から最初から上手く出来るものではありません。
その意味でも、学習や教育が重要となります。

縁起だるまのモデルであり、中国で仏教を布教させた禅宗の開祖とされる達磨大師は、二入四行論を唱えたとされます。
その中で、修行には、二入として理入と行入の二つの入り方があるとしています。

理入(りにゅう)とは、理論、理屈から入る形式知(ナレッジ)と言えるかと思います。
対する行入(ぎょうにゅう)とは、行動から入る暗黙知と言えるかと思います。

そもそも、理屈だけで、頭で理解しているからと言って、それが行動に反映されるとは限りません。
逆に行動を妨げることも少なくありません。
反面、何も考えないで闇雲に行動する場当たり行動は無謀とも取れます。
何事も理屈を理解した上での行動の方が再現性が高いとも言えます。

学習とは、知識だけを高めるのではなく、その知識を如何に行動として発揮するかです。
また、人材の教育では、理入と行入の機会を繰り返し与えてあげることが必要なのだと思います。
暗黙知を形式知に置き換え、更に暗黙知で再現するナレッジマネジメントであるとも言えます。

学習の過程を学習の5段階レベルとして可視化した考え方があります。

1段階:知らないからできない(無意識的無能状態)
知らないからできない状態です。
車の運転であれば、運転のしかたを知らないから運転できない状態です。

2段階:分かっちゃいるけどできない(意識的無能状態)
知識を得た。分かちゃいるけど、できない状態です。
車の運転であれば、教習所で運転のしかたを教わったものの、まだ免許を取得できない状態です。(形式知を理入する段階)

3段階:がんばればできる(意識的有能状態)
何度も繰り返すことで、ある程度できるようになってきましたが、まだ習慣化されておらず、ある程度の集中力が必要な状態です。
車の運転を教習所で練習することで、免許を取得できましたが、まだまだ余裕のない初心者状態です。

4段階:あたりまえにできる(無意識的有能状態)
意識しなくても、あたりまえ(無意識)に実践することができる状態です。
車の運転であれば、助手席の人と話をしたり、音楽を聴いて楽しんだり、意識しなくても運転できる状態です。(暗黙知と置き換わった段階)

5段階:無意識的有能に意識的有能
あたりまえ(無意識)にできることを、意識して人に教えることができる状態です。
車の運転であれば、例えば、教習所の教官などの状態です。学習する側から教育する側に転じたことになろうかと思います。

学習の5段階レベル


この5段階をステップアップして行く中で、最もハードルが高い存在が2段階における「現状を現状のまま維持したいと思う無意識の欲求」であるといわれている現状維持バイアスかと思います。
意識していても、なかなか行動に移せない状態ですので、ここから抜け出すのは容易ではありません。

しかし、2段階から3段階に進むと、意識すると出来るようになるので、集中力が必要な反面、面白さも出てくるハズです。
後は、ここでの失敗にめげずに繰り返しすことで、4段階のあたりまえにできるレベルに到達できるはずです。

また、この学習の5段階レベルは、指導する側にとっても大切な考え方です。
特に、指導する相手が今、どの状態にあるのかを把握することです。

例えば、4段階:あたりまえにできる(無意識的有能状態)にある人に対して、1段階:知らないからできない(無意識的無能状態)の指導をしたらどうなるのかです。
当然、指導を受ける側には、一定のカタチがありますので、激しく拒否反応を示す可能性があります。

「角を矯めて牛を殺す」と言う諺があります。
「牛の曲がった角を直そうと手を加えているうちに牛を殺してしまう」ことです。
転じて、少々の欠点を直そうとして、かえって全体をダメにしてしまう例えです。

何事も成長する上では、1段階:知らないからできない(無意識的無能状態)で学ぶべき基本が大切なのは、事実であると思います。
しかし、ガチガチの基本だけを頭ごなしに押し付けても逆効果です。
基本があるからこそ、個性を活かした応用や独自の価値を生み出すことができることを諭すことも重要なのだと思います。

現代は、目まぐるしく変化し、先行きの見えにくい環境にあると言われます。
専門的な知識に長けた人であっても、その専門的な知識が、デジタルに置き換えられたりして、あまり活用価値がなくなることもあります。
そうなることで、職を失うことになれば、リスキリング(学び直し)が必要となります。

環境の変化を否定していても始まりませんので、気持ちを切り替えて、リスキリングすることも必要な時代となっています。その意味でも、学習とは、正に、達磨の如く七転び八起きです。

いいなと思ったら応援しよう!