視点・視野・視座を変える #109 リフレーミング
人は何らかのフレーム(枠)の中に事象を納めて物事を考えます。
そして、そのフレームを切り替えて事象を見極める手法にリフレーミングがあります。
マネジメントにおいて、人の視点、視野、視座のあり方を 虫の眼、鳥の眼、魚の眼、コオモリの眼と喩えるのも、この手法ともいえます。
虫は、小さな生き物ですので、草木や地面などに近い低い視座にいるからこそ、高い所からでは見えないことを見ることが可能です。
三現主義という考え方があります。
ターゲットを明確にし、現場、現物、現実の3つの現を重視し、机上ではなく実際の現場や現物を観察して、現実を認識した上で、目の前の問題の解決を図ることです。
つまり、虫の眼とは、三現主義を実践するための視点であるといえます。
鳥は、高く飛ぶことができますので、広い視野でもって全体を見渡すことが可能です。
決して三現主義を否定するのではありません。
しかし、その現場、その現物、その現実に対して最良の解決方法が、実は、もっと大きな枠で見た場合に正しいとは限りません。
つまり、鳥の眼とは、部分最適に偏ることなく、組織を俯瞰的に捉え、全体最適を実践するための視野であるといえます。
よって、この虫の眼の視点と鳥の眼の視野のリフレーミングは、常に表裏一体で切り替えられるようになる必要があろうかと思います。
次に魚は、水の中にいますので、海や川などの流れを感じ取りながら泳ぐことが可能です。
現代は、先が読めない、読み難い時代と言われています。
しかし、それが、先を読まなくて良いこととは違います。
常に流れを見極めながら、最善と考えられる先を読んで決断しなければならないこともあります。
つまり、魚の眼とは、透察力、偶察力、洞察力、観察力、考察力・・・成り行き任せの場当たりではなく、環境変化を時系列の視座で捉え、ビジネスチャンスやリスクを見逃さずに察する能力です。
時系列で捉えることで、現在の失敗が将来の成功に向けての糧となる可能性とあります。
逆も然りです。
また、最近では、コウモリの眼と表現される視点・視座もあります。
ご存知の通り、コウモリは、逆さになって止まります。
つまり、常識では発想できなかった潜在的な価値や問題を、天地を逆転するかの様な視座で見出だせる、イノベーションの眼です。
とにかく、世の中には、定説などないことを覚悟して、常に様々な視点あるいは視座で物事と接する必要があるのだと思います。
以上の通り、虫の眼、鳥の眼、魚の眼、コウモリの眼などと喩えられる眼は、異なる視点・視野・視座である以上、決して噛み合うことがないのかもしれません。
しかし、組織においては、どの視野も非常に大切であるかとは間違いありません。
従来の日本型のメンバーシップ型雇用では、適材適所と称される通り、社内で経験値を高めて、その人材に適した地位や仕事などの職務を与えます。
この場合、新入社員や経験の浅い人材には、まずは虫の眼的な職務を与えます。
最初は、三現主義を実践して基本を身に着けることが何よりも大切になるからです。
しかし、経験を積むことで、虫の眼だけでは、部分最適の偏った考えになりかねません。
そこで、次のステップとして、鳥の眼が必要となる職務を与えることになります。
鳥の眼によって、より広い視野で、組織の全体最適に努めることでマネジャーの資質が磨かれることになります。
そして、鳥の眼と虫の眼をバランス良く使い分けられるようになったら、物事の本質を見極め、先を見通すことができる魚の眼も養われ始めているはずです。
この魚の眼ですが、組織を統率する経営者や上級マネジャーには欠かせないものであるはずです。
つまり、
・担当者は虫の眼、
・マネジャーは鳥の眼と虫の眼、
・経営者は魚の眼と鳥の眼と虫の眼
を持ち合わせていなければならないのだと考えます。
そして、決して既成概念に惑わされることなく、常に現状に満足することなくカイゼン意識を持ったコウモリの眼は、如何なる立場にあっても必要な眼であると考えます。
組織において、カスケードダウンが重要と指摘させることもあります。
カスケードダウン(Cascade down)とは、「滝の流れが落ちる」意味で、経営層が設定した上位レベルの目標や戦略が、担当レベルの部や課、社員へと細分化されて共有できていることです。
しかし、現実は、表層は理解できていても深層となると実際に、その立場でなければ見えない景色もあります。
将軍の見る景色。
それは、ある意味、将軍だから見なければならない景色。
組織のトップとして、決して、目を逸らしてはならない景色です。
そして、その景色を如何にして共有するかも、組織づくりでは重要なのかと思います。