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おうちスクーリング開始に必要な手続きは?

今回は「おうちスクーリングを始めたい」という思いが具体的になったときの、報告や手続きの手順について書きます。

1.おうちスクーリングに関する資料

2020年現在、おうちスクーリング(ホームスクーリング)を始めるにあたってのガイドラインとなる公式な資料が以下の3点になります。

①「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日

②不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行なった場合の指導要録上の出欠の扱いについて
https://www.mext.go.jp/content/1422155_001.pdf

③民間施設についてのガイドライン(試案)
https://www.mext.go.jp/content/1422155_004_2.pdf

まずは上記3点をご一読ください。
その上で、私なりの考えを踏まえ、おうちスクーリングを始める際の学校、先生方への意思表示の手順についての一例をご紹介いたします。

2.おうちスクーリングを始めるために必要な手続き

先に提示した3つの資料は、「児童生徒が不登校になった場合の支援についての考え方」について記されてはいるのですが、具体的に話を進めるにあたってのフローについては示されていません。
疑問に思い、実際に文部科学省にお電話で問い合わせてみたところ、「文科省として定めている手続きや書式はありません。基本的には文科省のHPや不登校支援関係のNPO団体のHPを見ながら、各学校の学校長の指示に従って進めてください」とのご返答でした。

3.「おうちスクーリング始めます」まずはだれに伝えればよいか

それでは、「おうちスクーリングを始めます」の意思表明を、まずは誰に対して行えばよいのか?
「おうちフリースクール」を運営してきた立場として、あくまでも私の経験をもとに手順をご紹介したいと思います。


(1)新入生の生徒さんの場合

小学1年生、または中学1年生にあがる前におうちスクーリング開始の意思表示を行う場合、最初にそのことを伝えるべき窓口として、次の選択肢が挙げられます。

・入学先の管理職の先生(校長先生、教頭先生、副校長先生)
・さわやか相談員さん
・教育相談担当の先生

まずは入学先の学校にお電話をかけてみて、「入学後はホームスクーリングを考えています。担当の先生にお繋ぎいただけますか?」と聞いてみてしまうのが一番良いかと思います。

「ホームスクーリングを希望するなんて、学校から嫌がられないだろうか…」と心配に思われる親御さんも多くいらっしゃいますが、最近では一部の例外を除いてほとんどの学校の先生方が不登校支援について豊富な知識をお持ちでいらっしゃり、大変丁寧にご対応下さいます。
先に示した【「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日】も、私がこれまでにご挨拶に伺った校長先生方ほとんどが、しっかりと内容を把握していらっしゃいました。

まずは、入学予定の学校宛てにお電話をなさってみてください。

(2)すでに入学して日が経っている場合

入学して日が経ったのちにおうちスクーリングを検討されている生徒さんの場合は、まずは学級担任の先生にご相談されるのが良いかと思います。
このケースにおいては、「ホームスクーリングに切り替えます!」とはっきりと意思表示する他、「欠席が続いているので、しばらくの間、家で勉強を見ようと思うんです」というニュアンスでお伝えする場合もあるかと思います。
後者の場合、「欠席期間中にICT、通信教材等を用いて家で学習に取組ませた場合、要録上出席にしてもらう方法はありませんか?」という聞き方もありだと思います。
まずは担任の先生に相談をして、担任の先生から担当の先生につないで頂くというのがスムーズだと思います。

いずれのケースにおいても、最後は校長先生との綿密な打ち合わせが必要になると思います。

(3)【万が一】学校への問い合わせがうまくいかなかったとき

本当に珍しいケースですが、稀に、「ホームスクールなんか!」「フリースクールなんか!」と、不登校支援のあらゆる手段を一切受け入れない姿勢の校長先生もいらっしゃいます。
私も、過去に一度だけこのような校長先生と出会いました。
「まずは学校に問い合わせを」と言われても、学校とでは話にならない場合にはどうしたらいいか。
こういった場合には、市区町村の教育委員会に相談をしてみましょう。

「学校外での学習日を出席扱いにする?話にならない。学校に来ている子達は頑張っているのに。人として欠落しているから集団生活に馴染めないだけじゃないか」とおっしゃる校長先生は、嘘みたいな話ですが、本当にいます。(子どもは本当にいい子です)
某県内の公立中学校のお話です。

ただ、よくよくお話を聞いてみると、このような反応を示す校長先生は、昨今の教育関係の通知に一切目を通していないんですね。
「自分がよく理解していない話題」=「こわい」という気持ちから、威張る、威嚇するという反応を示されます。
なので、私はこの校長先生のところには文科省の通知を印刷してお持ちし、大事なところにマーカーで色をつけながら、「最近文科省からこのような通知が出ていて、学校外の施設にて指導を受ける場合には…」と丁寧にご説明申し上げました。

この学校においては、校長先生だけでなく、教頭先生も「こんな通知初めて見た」とおっしゃっていました。
しかし最後には「出席と認める判断するのは私だ。おたくらフリースクールは部外者だから、今後連携していく義務もない。」と言い出してしまいました。
その後いつまで経っても「不登校は怠け」といって、フリースクールでの学習日を要録上出席扱いを認めて下さらなかったので、仕方がなく私から市の教育委員会の先生にご相談し、市教委の先生から校長先生にご指導を入れて頂きました。
その翌日に、要録上出席扱いの許可がおりました。

※念のため加えておきますが、「出席扱いにしてくれない=悪」なのではなく、正しい知識や基準を持たずに、個人の主観のみに基づいて子ども達の将来に大きくかかわる事項について判断を下してしまっていることが、問題だと考えています。

本当はこんなことしたくないのですが、ごく稀にこのようなケースもあります。
学校との連絡相談がどうしてもうまくいかない場合には、市区町村の教育委員会の先生方のお力に頼るというのも手です。

4.学校かおうちか ー どちらかに決めなくてはいけないものではない

おうちスクーリング(ホームスクーリング)と学校への登校というのは、「どちらかに腹をくくれ!」と子どもに迫るべきものではなく、もっと流動的でいいのではないか、というのが私の基本的な考え方です。
システム的な観点からみても、おうちスクーリング中の子も、フリースクールに通っている子も、その籍はもともと通っている学校置かれ続けるわけですし。

個人的なウェットな感覚でお話すると、私は教育者として、日々変化し成長を続ける子どもの気持ちや考え方に寄り添いたい。
だから、不登校支援者の立場としては、「しばらく学校を休みたい」という子には、「おうちやフリースクールで勉強する方法もあるんだよ」と言ってあげたいし、かつて学校教員だった立場としては「もう一度学校で頑張りたい」と言う子には「ずっと待ってました。ここでよければいつでも帰っておいで」と言える学級担任でありたい。

5.おうちスクーリングをすすめていく際の基本的な姿勢

少し前までは、“不登校”というと“家庭対学校”のような対立的な構図がイメージされがちでしたが、もちろん個別のケースの事情は異なるにせよ、最近では少し状況が変わってきているように感じます。

あくまでも私の理想ですが、教育は、子どもを中心に据え、家庭、学校、地域(または民間)が手を取り合い、得意なところを補い合いながら行っていくべきものだと考えています。
かつて埼玉県上尾市内のとある中学校の先生が、私にこんな言葉をかけて下さいました。


「学校とわたなべさんのフリースクールで、生徒を奪い合うでもない。押し付け合うでもない。協力し合いながら○○くんの成長を一緒に見守っていきましょう。いつも本当にありがとうございます」と。


おうちスクーリングにおいても、基本的に考え方は同じだと思います。
「おうちスクーリングを始めるから、もう学校の手は借りられない。これからは親の力だけでこの子を育てていかなければ。」
と背負い込むのではなく、
「この子が学校ではやりづらいことを、おうちで見守ってあげよう。わからないことは、学校の先生や民間の仕組みに頼ってみよう」
そんな気持ちを持っていただきながら、うまく学校等と連携して頂けるとよろしいかと思います。
もしも何らかの事情で学校とはうまく連携が取れない状況でしたら、市区町村の教育委員会や、教育センター、その他民間の教育関係機関等を大いに頼って頂けたらと思います。

今回は「おうちスクーリングを始めたい」と思った時のアクションの起こし方と、おうちスクーリングを始めるにあたって、私自身が大切にしたいと思っていることについて書きました。

次回は、学校との連携上必要になってくるであろう連絡内容や、協議事項等について具体的に書いていきたいと思います。

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