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文字の亡霊

黒鉛の気が触れるほどに

殴打烈しく書き捨てた文字の亡霊達

手を合わせる暇も余白もなく

紙帳の墓場に野晒し御免


感情の性で野心や情念を宿した文脈の一節に

太陽が当たることはない

湿気の多いぼたぼたに散らかる部屋の

擦れ押す引き戸の押し入れに

お祓いを受けずに暴殺に押し込まれる


私が殺した文字の山は

私を黒く塗り潰す

私が吐き出す感謝や慈悲の一文も

取り憑かれたら紫黒色


腹を括り

墓場に横たわる感情の一文字ずつを

刻の許す限り呑み込んだ


塵と殺した文字の亡魂は

私を鋭い眼孔で睨み耽って

言葉にならない粗悪の粘着を背負い

私の腹のなかで唸っては

みな

泪を溢して私に帰還した


私は思う

書き記した黒鉛は私自身よりも大きく

膨大に膨れ上がっては

私の内骨を刻のページに挿み込む

駄と蹴飛ばした文脈の骨山は

私自身の墓場である


書き殴った一瞬の孤像を

愛していけたら

肋骨はもっと頑丈に

背骨は狼狽に鎮むこと勿れと


頭の奥に花を供えた

せめてもの可憐な狼煙である

私が私を書く為に


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