季蝶の文
彼方には薄浅葱の空
カステラ色の蝶の群れが一斉に羽音をたて
私と空の真ん中のビル間を横切る
其れ等は青柳色の蝶が住む木に
押し掛けるように群衆で集った
青柳色の蝶の群れは其れをうけると
羽根いそいそと一斉に飛び立ったては
ビルの影裏に消えていった
私はひとつ また夏を見失った
きっとこれから中禅寺湖への
峰いろはでは
ポスト色の蝶の群れがばさばさと
青柳色の蝶が眠り落ちそうな頃合いに
集い木に押し掛けていくのだろう
彼等の羽音は耳障りな筈なのに
何故だか美醜と爽然さを纏い
私の目の前にあるスクリーンに季移りの尊さを
映し出してくれる
蝶達が地に落伏せするまでに
私は誰かの詩本に目を向け
ひたすらと私心に問い続けたい
この季の様に穏やかな詩を
北風に吹き飛ばされる迄に
お腹いっぱい食べておきたいもんで
そのうちに来る冬眠前の文準備として