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詩集 幻人録

322
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2021年11月の記事一覧

反省のうた

反省のうた

私はこの頃風に煽られていません
吹く風は白く抜けてくだけです

私はこの頃月を見ていません
やはりぼんやり浮かんだ透明色なのです

私はこの頃街を歩いていません
レールの上を弾くトロッコの様に
押し流されて転がるばかりです

私はこの頃誰とも喋っていません
口から吐き出るは未完の手紙だけでして

私はこの頃何も食べていません
感謝のひとつも忘れていました

このうたは私が反省する為のうた
このうた

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ふわっと足を着いたから

緩やかな斜面にふわっと足を降ろす
転がらないように

ここはゆっくり眠りながら
そおっと滑っていく斜面

ゆっくり ちょっとね

みんなよちよち滑っていくが
ぱちっと目を覚ましてからは
だんだんとスピードが出る

転がる者
ぶつかる者
止まる者

いろんな滑りになるみたい

私は斜面を登ろうとしたが

爪が割れてしまい
登れなかった

この斜面にふわっと足をついたから
滑っていくのも
ふわっとさら

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水平線

水平線

潮騒を五月蝿く感じたら
私が私じゃない合図

可憐で繊細な波粒の欠片が
私の傷口に刺さっているの

カモメに笑われたら
私の胸中にある海の水量が
溢れてしまう合図

気高いカモメの群れさえも
敵だと認識してるみたい

そんな私は私じゃないから
ここでのお話は内緒にしてね

海はいつでも無垢で綺麗に問いかけてくる

あどけない水平線からこちらへ

灼球

灼球

癇癪起こした太陽
燃えたのは
心構えのない白球

ひょろっと好天に打ち上がる
ぽつんと回転 
青に白
見上げた熊の外野手は
大きな左手をガブリと開いた

瞬間は空白のページ

手繰り寄せたのは目は眩む閃光
太陽炉に灼かれた両目
視界は黄色いインクに染まった
灼球は何食わぬ表情で
矢継ぎ早に向こうの芝と仲良く遊ぶ

歓声は落胆に
落胆は歓声に

熊は転がり
ヌクヌク遠ざかる灼球を目指した
川上で狩を

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赤季

赤季

もの悲しい もの悲しい

高い美空はもの寂しい

大地と空が離れた分だけ

私の身体は小さくなるの

そしたら私の心まで

縮んでしまってもの悲しい

熱を出したもみじに言われた

あんたの色素が羨ましい

身体が熱くて野暮ったい

もの寂しいのは

温度のわからぬ風に吹かれて

頭がカラカラするからなのか

遠くでカラスに笑われた

踊るイカ

踊るイカ

踊るイカ

海中の奥 アンコウの光

足は流れる 水流のうねり

今宵は月が落ちてきて

ミラーボールが回る様

みなさま

どうか観ていってちょうだい
なんなら一緒に踊ってちょうだい

暗い筈の海中は
今宵は煌々のお立ち台

命が燃えたら
残りかすにはならないもんで

燃えた分だけ生きれるもんで

だから今夜は激しく生きる

踊るイカ

踊るって情熱

あちちちち