【マス研員の本棚企画vol.2】宮沢賢治とシェイクスピア、留学少女の旅する本棚

読んだ本が私たちの糧になる。
ならば選び抜かれた本棚には、
その人を知る〈なにか〉が詰まっているはず…!
この企画では個性あふれる本棚を紹介しながら、
日々雑誌作りに関わるマス研員の裏側に迫ります。



一人目:「旅する本棚」


国を超え、時代を超えた本たち。好奇心の赴くまま、本の世界を旅しています。


学部 学年 イニシャル:文化構想学部2年S・O
所属分科会:取材分科会
好きな作家:上橋菜穂子、梨木香歩、シェイクスピア、太宰治、
      宮沢賢治、米澤穂信

・この本棚のこだわりは?
空間さえあれば何も考えずに本を詰めまくること!
並べるときには何も考えていない。「とりあえず入れとけ!」みたいな感じ。強いて言えば、良く読み返す本は手前に置いている。

・好きな本、おすすめしたい本は?
①米澤穂信『さよなら妖精』


1991年4月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。謎を解く鍵は記憶のなかに――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。『犬はどこだ』の著者の代表作となった、清新な力作。

創元社HP『さよなら妖精』より
さよなら妖精 - 米澤穂信|東京創元社 (tsogen.co.jp)

 日常の謎系ミステリ。後味がビターで切ない。ストーリーにユーゴスラヴィア紛争が絡んでいて、1990年代の時代背景が深く関わっている。青春小説・推理小説として楽しむこともできる一方で、戦争や社会について考えながら読むこともできるので、色んな層の人が楽しめる。

②草野道夫『旅をする木』


広大な大地と海に囲まれ、正確に季節がめぐるアラスカ。1978年に初めて降り立った時から、その美しくも厳しい自然と動物たちの生き様を写真に撮る日々。その中で出会ったアラスカ先住民族の人々や開拓時代にやってきた白人たちの生と死が隣り合わせの生活を、静かでかつ味わい深い言葉で綴る33篇を収録。

星野道夫『旅をする木』(文春文庫)裏表紙より

アラスカで動物や自然の写真を撮っていた写真家によるエッセイ集。
著者・星野道夫の眼から見た自然のありさま、動物や人々の生きざまが綴られる。
読んでいて心が軽くなる一冊。
通学の電車の中で読んでいると、都会にいるのに、心がアラスカの自然の中に飛んでいくような気持ちになった。
都会の喧騒に生きていて疲れた人、心をふっと軽くしたい人におすすめ。

③福永武彦『草の花』


研ぎ澄まされた理知ゆえに、青春の途上でめぐりあった藤木忍との純粋な愛に破れ、藤木の妹千枝子との恋にも挫折した汐見茂思。彼は、そのはかなく崩れ易い青春の墓標を、二冊のノートに記したまま、純白の雪が地上をおおった冬の日に、自殺行為にも似た手術を受けて、帰らぬ人となった。まだ熟れきらぬ孤独な魂の愛と死を、透明な時間の中に昇華させた、青春の鎮魂歌である。

新潮社HP『草の花』より
『草の花』 福永武彦 | 新潮社 (shinchosha.co.jp)


とても繊細な青春小説。書かれたのがやや昔だが、文体も読みやすい。
人の心の弱い部分や、愛されたい気持ち、孤独について考えさせられる。
心が震える一冊。


・好きな作家と、その理由
好きな作家:上橋菜穂子、梨木香歩、シェイクスピア、太宰治、
      宮沢賢治、米澤穂信

【上橋菜穂子】
小学生の時によく読んでいた。
ファンタジーが好き。架空の世界の物語を読むからこそ得られる感動や、
現実世界にも通用するような学びに心惹かれる。

【梨木香歩】
母親から借りて読むことが多い。
『西の魔女が死んだ』など、子供向けなのかもしれないけど大人にも刺さる本を書いていて好き。

【シェイクスピア】
中学生の頃にハマったあさのあつこさんの『NO.6』にシェイクスピアの作品が登場していた事がきっかけで読み始める。時代を超えて、今読んでも面白いのがすごい。
戯曲だから読みやすく、電車の中でざっと読む感じ。

【太宰治】
どうしても、一般的に「暗い、難しい」というイメージを持たれがちな太宰治。けれど太宰の短編は軽くて面白く、ユーモアたっぷり。技術面でもうまいと思う。
例えば、『駆け込み訴え』。テンポ感がすごい。
太宰に対して、「暗い」「難しい」イメージを持っている人は、ぜひ短編を読んでほしい!

【宮沢賢治】
『銀河鉄道の夜』がとにかく好き!
主人公・ジョバンニとその友人・カムパネルラを中心とした世界観に心惹かれる。
人の孤独について考えるのが好きなので、ジョバンニとカムパネルラが抱えている孤独に惹かれる。

【米澤穂信】
『氷菓』から始まる古典部シリーズが好き。あれはみんな読んだ方がいい!
(ちなみに、一番好きな一冊は『いまさら翼と言われても』。)
米澤穂信さんは「青春×謎」が上手い。エンタメ性もありつつ、考えさせられる部分が大きい作家。

・図書館派?書店で購入派?
大学に入ってから書店で購入派に変わった。
中高時代は学校の図書室で借りることが多かったけれど、大学の図書館は文芸関係の新刊に出会いづらい……。
また、図書室で本を借りてしまうと、そのまま放置して期限が切れてしまうことがあるため、書店で購入することが多い。
あとは、書店で買うことで書店や作家さんを応援したい!という気持ちがある。
(みんなも本屋さんで本を買おう!)

・次に読みたい本は?
去年の10月からユゴーの『レ・ミゼラブル』を読んでいて、全四巻あるうちの三巻途中で止まっているところ。いいかげんに読み終わりたい……!
あと、洋書は買っただけで満足しているのが多いので、ちゃんと一冊読み切りたいと思っている。

・本棚企画員からのコメント

 ひとつの本棚から、興味の赴くまま、翼を広げて自由に旅をしている。そんな持ち主の様子が目に浮かぶような本棚です。具体的に紹介してもらうと、本棚に並んでいるのは、読書好きなら読みたくなるようなものばかり。取材しているうちに、筆者はすっかり彼女のプレゼンに聞き入ってしまいました。『草の花』、読みたい……!
持ち主である彼女の、深い知性と鋭い感性、自由な探求心がひしひしと感じられた本棚でした。


二人目:日常の中の異世界

大人っぽい、落ち着いた雰囲気の本たちが並ぶ今回の本棚。

学部 学年 イニシャル:教育学部2年 A・M
所属分科会:取材分科会、企画分科会、デザイン分科会
好きな作家:伊坂幸太郎、三浦しをん

本棚Q&A

・この本棚のこだわりは?

表紙がいいなと思ったものを本棚に並べている。
積読本を手前に置いているのは「読むぞ!」という気持ちの表れ。

でも、衝動的に本屋さんで新しいのを買ったり、図書館で借りたりしてしまう。
読みたい本はスマホのメモに書き留めている。

・好きな本、おすすめしたい本は?

①筒井康隆『残像に口紅を』

「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えてゆく。愛するものを失うことは、とても哀しい……。 言葉が消滅するなかで、執筆し、飲食し、講演し、交情する小説家を描き、その後の著者自身の断筆状況を予感させる、究極の実験的長篇小説。

Amazon.co.jp: 残像に口紅を 復刻版 (単行本) : 筒井 康隆: 本

読書を好きになったきっかけ。
文章の雰囲気がどんどん変わっていって、言葉で遊んでいる感じが好き。
映画やドラマではなく、小説だからこそできる話。

②カズオ・イシグロ『クララとお日さま』

子供の成長を手助けするAF(人工親友)という人工知能搭載のロボットのクララは、ジョジーという病弱な少女の家庭で暮らすことになる。やがて二人は友情を育んでゆくが、一家には大きな秘密があった……愛とは、知性とは、家族とは? 生きることの意味を問う感動作。ノーベル文学賞受賞第一作。

クララとお日さま: 書籍- 早川書房オフィシャルサイト|ミステリ・SF・海外文学・ノンフィクションの世界へ (hayakawa-online.co.jp)

人間のアイデンティティ、その人をその人たらしめるものは何か?というテーマ。(そういう内容のものが好き。)
暗い雰囲気の中にも温かさがある作品。

・好きな作家と、その理由
好きな作家:伊坂幸太郎、三浦しをん

娯楽として楽しみたいので、キャッチーな作品をよく読む。
今挙げた二人の作家は、気軽に読むことができるけれど、きちんと内容に入り込めるところが好き。

・図書館派?書店で購入派?
図書館派!
シンプルにお金がない。また、図書館の方が気軽に行けるから。
書店は、新刊や書店員さんおすすめの本が目立つようにレイアウトされているが、図書館は「自分で本を探す」感じ。新しい本との出会いがあるのが好き。

・次に読みたい本は?
高校生のころから現代小説のメジャーなもの(本屋大賞など)を追いかけるのが好き。
でも、大学生のうちに、昔の文豪の作品や新書など、娯楽としてだけじゃなくて勉強として本を読みたいと思っている。

森田真生『数学する身体』
数学を通して人間の身体を学ぶことができる。
数学に詳しくなくても読みやすい一冊。

『夏への扉』
夏が始まるタイミングで本屋さんに行ったときに見つけた。
表紙がかわいいなと思って気になっている。

・本棚企画員からのコメント
現代日本文学が充実した今回の本棚。
伊坂幸太郎、江國香織、村上春樹など、日常を舞台にしつつも、どこかふわふわと非日常を感じさせる作品が占めています。並んでいる小説たちの雰囲気に、持ち主の好きな世界観が表れているように思いました。一冊一冊が丁寧に読み込まれている様子も、持ち主の本への愛情が感じられます。


一人として同じ人間がいないように、一つとして同じ本棚はありません。これを機にじっくり自分の本棚を眺めてみるのはいかがでしょうか?
 個性豊かなマス研員が作りだすフリーペーパー「ワセキチ」は以下のリンクから読むことができます!

早稲田で最もアツイ出版サークル-早稲田大学マスコミ研究会 (waseda-massken.com)

次回もお楽しみに!

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