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【11月のAudible読書メモ③】

今週は3冊聴きました。
余韻が残る2冊と通勤電車ではニヤけた顔になってしまうので、家でしか聞けない1冊でした。


『さくら』西 加奈子

ヒーローだった兄ちゃんは、20歳4か月で死んだ。超美形の妹は、内に籠もった。母も肥満化し、酒に溺れた。僕も東京の大学に入った。あとは、「サクラ」となづけられた犬が一匹――。そんなある年の暮れ。家を出ていた父が戻ってきた…。

Amazon Kindle HPより 

家族の真ん中に犬のさくらがいて、家族が楽しい時も悲しい時もいつも朗らかに戯れ、家族を救ってくれた。この家族にさくらがいなかったら、どこに救いがあったのだろうかと考えた。

自分の好きな人、大切に思っている人が明日も変わらずそこにいてくれるとは限らないのだから、会いたい人には会って、伝えたいことはちゃんと伝えるべきだというメッセージが埋め込まれていたと思う。

幼少期の遊びや公園に行くといつもいる人の描写は、私自身の思い出をいくつも思い出させてくれた。物語が終わったあとも自分の中にそれらの場面が何度も何度も出てくるのは、私にも兄がいるからだろうか。


『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子


「大きくなること、それは悲劇である」──この警句を胸に11歳の身体のまま成長を止めた少年は、からくり人形を操りチェスを指す。その名もリトル・アリョーヒン。盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、自分の姿を見せずに指す独自のスタイルから、いつしか“盤下の詩人”と呼ばれ奇跡のように美しい棋譜を生み出す。架空の友人インディラとミイラ、海底チェス倶楽部、白い鳩を肩に載せた少女、老婆令嬢……少年の数奇な運命を切なく描く。小川洋子の到達点を示す傑作。

Amazon Audible HPより

静かで不思議な世界観の物語。少年が出会う人々の中で、チェスを教えてくれたマスターと深い愛情で少年の心をいつでもあたため、応援してくれた祖母の存在が忘れられない。少年が最後まできれいな心でそして強くいられたのは、思慮深い人々との出会いがあったからなのだろう。

少年の身体の小ささとチェス盤のサイズ感、それとの対比であるかのような
盤面の海、宇宙の広がり。駒を置くときの音、マスターが作るお菓子の甘い匂い、祖母がいつも使っているふきんの匂いや質感。この物語が残した小物たちや世界が、ずっと私の五感を刺激して静かな余韻が漂っている。

『新!店長がバカすぎて』早見和真

宮崎の山奥に異動になっていた山本猛元店長が、 三年ぶりに、吉祥寺本店に店長として復帰した。
張り切る店長だが、相変わらず、人を苛立たせる天才だ。しかし京子は、心の中で「お帰りなさい」とつぶやいた。
そんな中、本や書店を取り巻く環境はますます厳しくなってきたが、 それでも京子は、新人作家の才能に出逢い、打ちのめされ、 好きな作家の新作に心躍らせ、時には泣き、笑い、怒り、日々戦っています。
スタッフの磯田さんや、覆面作家だった大西先生や神楽坂で小料理屋を営む親父さんや、優しき先輩たちに、応援を受けながら――。
小説と書店の未来を、仕事の意味を、生きる希望を改めて深く問い直す、第二弾。

Amazon Audible HPより

2作目もしっかり面白い。

作家さんの自己批判や賛辞がちりばめられているような描写が物語の構成と相まって実に楽しい。

次作も期待したい。


今日、聴き始めたのは『ほろよい読書』という短編小説集。一日の終わりにゆっくりと楽しみたい話が多そうだ。


最後までお読みいただきありがとうございました。
また次のnoteでお会いしましょう。


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