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心と技-良い専門職は良い人間なのか?
良い先生や良い医師とは?
良い先生や良い医師を思い浮かべる時、皆さんは何を思い浮かべますか?
私には、昔脇に脂肪腫ができて外科手術を受けた経験があります。
その時、担当してくれた先生は、私をリラックスさせるために、手術室で「恋はみずいろ」の音楽をかけてくれました。
さらに、極度の痛みに弱い私の訴えに応じて麻酔を増やし、声をかけながら施術してくれました。
そのおかげで、術後の経過も良く、先生の腕が良いことが分かりました。
知識と人間性の重要性
良い先生が良い人間だと感じる瞬間は、知識や技術だけではなく、患者を人として扱ってくれる時です。
もし知識や技術があっても、人として扱ってくれなければ「良い先生」とは言えません。「腕が良い先生」とは言うかもしれませんが。
良い人だけでは評価されない
それに対して、時々「良い人だけど…」という話も耳にします。
良い人だけでは評価されません。
その人が果たすべき役割を果たしていない場合、そういった評価がされるのではないでしょうか?
両方を必要とする職種
良い人間でもあることが求められる職種があると思いますが、困難な状況にある人々は、ただ良い人間や良い技術を求めるのではなく、両方を必要としているのではないでしょうか?
「良い歯科衛生士」とは?
私は良い歯科衛生士だったのだろうか。
開業医で働いていた頃、院長から「腕の良い歯科衛生士だ」と褒められたことがあります。
しかし、それが必ずしも「良い人間だったか?」ということには繋がらないのではないかと思います。
患者やクライエントとの相互関係において成り立つ評価が「良い」というものではないか、そう感じています。
阿南慈子さんと医師の人間性
阿南慈子(あなみ いつこ)さんは1954年生まれの作家で、多発性硬化症で33歳で失明し、重い障害を抱えながらも執筆し、『ありがとう、あなたへ』などを出版しました。2000年に46歳で亡くなりましたが、彼女は「良い人間だと思い、信じられる医師に出会えたことを感謝している」と記しています。
E・V・フランクルという精神科医が著者で、その中で言われていた次の一言に私はこう思った。「良い医者は、必ず良い人間でもありますから・・・・・」(90頁)を読んで、私はすぐ今の二人の自分の主治医、上田祥博先生と安井浩明先生を思った。そして良い人間だと信じられる主治医を与えられていることに、深く感謝したのだった。
バイスティックの書籍から学ぶ
バイスティックの書籍では、人間性について次のように書かれています。
人間性はそれぞれ個別的なかたちで存在している。・・・人それぞれの性質とは、いかなる他者のやり方とも異なる方法で、その人がもっている精神の力を統合したり、ある方向へその力を向けることができるものである。
それは、その人が持っている独特な思考や感情、行動の傾向です。そして、その性質を活かして、その人は他の誰とも違う方法で自分のエネルギーや能力を使い、目標に向かって進むことができるということです。
力を向ける方向を決めるのはその人の力
「ある方向へその力を向けることができる」という点に注目しました。つまり、何をするかを決めるのも、その人を突き動かす独特の思考や感情、行動である、ということです。
「良い人間だけど、仕事ができない人」を、例えば良い〇〇とは言いません。この性質と専門性が合致して、初めて「良い〇〇」として評価されるのです。
自己理解と向き合うことの大切さ
バイスティックの著書には、自分を理解し、自分と向き合うことが他者を援助する上で不可欠であると書かれています。
他者を援助する上で不可欠な要素の一つは、われわれが自分を理解し、自分自身と向き合うことである。
温かさや思いを伝えることの重要性
クライエントを理解し、共に感じることを願い、それを言葉ではなく、温かさや思いで伝えることが大切だと述べています。
ワーカーはクライエントと彼の問題を知的および情緒的側面の両方で理解し、クライエントに援助の手を差し出すのである。ただしこのとき、ケースワーカーはクライエントとまったく「同じように」感じるのではなく、「ともに」感じるのである。・・・その願望を伝えようとするとき、どのような言葉で伝えるかが重要ではなく、温かさやクライエントに対する思いが伝わることが大切なのである。
良い社会福祉士とは?
良い社会福祉士とは、技術や知識を自己研鑽することに加え、自己理解やクライエントの問題を知的・精神的に理解し、共に感じることを願い、それを言葉ではなく温かさや思いで伝えることに、知識やスキルを乗せて責任を果たすことでもあると思います。
良い社会福祉士=良い人間
それを問いながら、「より良くなりたい」と願いながら学び続け、経験を積み、気づきを得て人間性を磨いていきたい。学ぶ姿勢を持ち、他者との関わりを通じて気づきを得て、自分の行動を振り返り改善する。完璧を求めず、成長し続けることを大切にする。
「良い〇〇とは、良い人間でもある」という言葉は、スキルや知識とともに「人としての在り方」が大切だということです。
その視点を持つことが、仕事でも人生でも本当に価値のあるものを生み出すのかもしれませんね。
以上、考察してみましたが、いかがでしょうか。
皆さんは、「良い〇〇」という役割が求められる中で、良い人間であることの方が大切だと感じる時はありませんか?