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私はうさぎではありません。私はカメです。
私はカメです。うさぎではありません。
「自分でありさえすればいい。自分自身であることが他人に対する最も大切な義務です。」
ーーー加藤諦三 (YouTubeチャンネル: フライヤー公式チャンネル)
私は小さい頃から誰かの希望や期待に沿えるよう努力してきました。
ピアノの練習は苦痛でしかありませんでした。
毎週レッスンに行けば、ヒステリーの先生に手の甲をつねられたり、叩かれたり、「あほか」と大きな声で怒鳴られました。
私はピアノが大嫌いでした。
それでも、6年以上習い続けました。
ピアノだけでも嫌で仕方なかったのに、バイオリンも習わせようとされました。
私は本当はバレエが習いたかった。
母に正直に言いました。
母は困って父に言いました。
父は「やめてくれよ」と言い、その話はなくなりました。
嫌いなピアノは上達しませんでした。
ピアノの発表会では、案の定失敗してしまいました。
母は怒って帰ってしまいました
授業参観で、給食の見学中に母が見ていると思うと、普段ならしないミスをしてしまいました。
スプーンを床に落としたり、牛乳をこぼしたりしました。
母は怒って帰ってしまいました。
その後、床にこぼれた牛乳を拭くのを手伝ってくれたのは、他の友達のお母さんでした。
母が望んでいる私ではありませんでした。
私は勉強も期待通りにはできませんでした。
土下座をして、泣きながら謝りました。
私は、母が望むような人間にはなれないと長い間悩みました。
それとは逆に、いつか母に喜んでもらえることをしようと一生懸命に無理をしました。
そして、好きな科目ができて、勉強が楽しくなり、成績もよくなりました。それでも、母は一度も褒めてくれることはありませんでした。
私は言いました。
「なぜ一度も褒めてくれないの?」
母は言いました。
「昔は誰も人のことは褒めなかった」
私は、いつも母が私を向いていないことを知っていました。
わたしはうさぎではなく、カメです。
ある日、私は二人目の子どもが生まれる頃、母に言いました。
「悲しかったし、怖かった」と。
母は言いました。泣いていました。
「イライラしていたし、世間体もあった」と。
お互いに、正直に話しました。
その後、関係がギクシャクし、今まで通りにはいかなくなりました。
それでも、私の人生はそこから始まったような気がします。
私は、親が恥ずかしいと言うようなことを好む人間です。
家族、世間、社会…。もし、世間の目を気にして、目に見える多くを得ようとし、自分の持っている器以上のものを求めて、カメなのにうさぎになろうとすると、幸せにはなれない。
毒親という言葉をよく聞きますが、そうだとしても、その毒親もまたその親から毒を受けてきたのではないでしょうか。
ああ、母もこうやっておばあちゃんから育てられたんだな、と。
連鎖という鎖の中で、お母さんも苦しんできたんだな。
きっと気がついていないだろうけど、それは、いつも感じてきました。
でも、そこはもう必要なくなりました。
全く傷つけない親なんているのでしょうか?
自分も気がついていないのに、本当は連鎖という硬い鎖に繋がれて、苦しいはずです。
それでも、目の前にいる自分が好きなようにコントロールしても良いと勘違いしてしまう存在に、ぶつけたり要求したりしていることにも気がついていません。
まだ、自分を生きていないのかもしれません。
何が幸せか分からないけれど、自分以上のものにはなれず、カメなりのカメの幸せがあれば、それだけで100点満点です。
いつか、いつか、って思っていました。うさぎになってお母さんを喜ばせよう。
そしたら、お母さんは私を褒めてくれるだろうか、きっとそうに違いない、と信じていた魔法が解けて、軽くなった足で歩んできたことを誇りに思います。
私は私の、母は母の。
加藤諦三さんは、次のように言っています。
「不幸を受け入れると、やるべきことが見えてくる。」
引用:flier公式チャンネル【悩みの本質】悩んでいる人が必ず言えないひと言とは?「聖書以上に必要」と言わしめた伝説の心理学書のメッセージ【社会心理学者 加藤諦三】(第2回/全2回)2023年7月29日
私は不幸です。
欲しかったものが得られませんでした。
私のままでいていいという、私をそのまま受け入れて私でいていい時を過ごせませんでした。
その不幸を受け入れます。
すると、何をすべきか?
あの時、私はバレエを習いたかった。
私は恥ずかしい人間ではありません。
私は私で十分価値のある人間です。
お母さん、あなたもそうです。
あなたも、価値のある人間でした。
私は私
母は母
そう言ってあげたい。けれど母はもう亡くなっています。
だけど、もううさぎになる魔法は溶けているのを私も母も知っています。