僕は54年間ずっと僕なのだし
京都に来ている。
今日、明日とこちらでまたハードワーク。
今晩おそらくまた徹夜かな。
昨晩は前乗りなので気楽な京都の夜を楽しんだ。
京都は大学の4年間を過ごした町だけど、あの頃はお金なんてこれっぽっちもなかったから、案外街を知らない。
知っているのは吉田山と吉田神社、吉田キャンパスと吉田づくし。
夜の京都を楽しめるようになったのは、大人になってからだ。
出張で訪れる京都は、また違った街に見えた。
とある愛媛の社長さんに連れられて、一見さんお断りの祇園の茶屋で舞妓さんと扇子を投げて遊んだこともあるが、そうした夜はもちろん稀。
たいていはちまちまと京の呑み屋を探しては暖簾をくぐるのだ。
京都らしい、おばんざいの居酒屋も好きだ。
ビアホールのようなクラシックな酒場もいい。
ちょっと洒落たワインバーももちろん。
でも結局落ち着くのは、なんてことない居酒屋だったりする。
そんな、なんてことない居酒屋(失礼だな)で、お気に入りの店がある。
10年ほど前、京都大丸での販売で、年に1回四条烏丸に10日間ほど滞在したが、そのたびに学生インターンと繰り出した店。
四条通新町西入ルの〈ニューシンマチ〉だ。
まさかまだ存続しているとは思っていなかったから嬉しかった。
道路に面した入口は全面ビニールシート。
ちょっとした屋台風だ。
昔はこの写真に写っているあたりにもカウンターがあって、座るとビニールシートがべったりと背に当たったものだ。
何はなくとも、とりあえず。
カンパーイ。
一人呑みの淋しさと気楽さを噛みしめる瞬間だ。
ちくわ磯辺揚げとか。
ハムカツとか。
こういう店に来たらなぜか頼んでまうよな。
というかハムカツなど、こういう店でしか食べたことがない。
続いて角ハイ。
いやぁ、キツい炭酸がまたこれ最高やん?
もっとゆっくりしたかったが、そのあとキャリコン養成講座の同期とのオンライン同窓会が予定されていたので、早くも〆。
この店でもっともお気に入りのメニューを頼んだ。
チキンラーメンだ。
あのチキンラーメンがお湯とともに鉢に入ってラップ状態で出てくる。
3分待ってから食べてくださいね、と。
どうみても手抜きにしか見えないこのメニューがなぜか好きだ。
昔来たときには、注文したら店員がソワソワ相談を始め、一人がダッシュで出ていったと思ったらコンビニの袋をぶら下げて帰ってきたこともある。
非常食の代表ともいえるチキンラーメンのストックをどうか切らさないでいただきたい。
そんないい加減さの一切合財が好きなのかもしれない。
ごちそうさま。
10年来のお礼を込めて。
昔、こっちにもカウンターありましたよね、とビニールシートのあたりを指しながら店員に言ってみた。
「そうなんですか?」
店員は全員学生バイト、もちろん当時を知るはずもない。
「それだとビニールシートが背に当たって、なんか嫌ですね」
そう、なんか嫌だったのだ。
店員の反応はどうせ「そうなんですか」止まりだろうと思っていたから、なんか嫌だった記憶を共有できてちょっぴり嬉しかった。
バイトは新しくてなっても、店は店として受け継がれているのだ。
細胞は入れ替わっても、僕は54年間ずっと僕なのだし。
(2024/9/19記)
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