揚げ物嫌いでもペロリと食べてしまえるカツ丼
子どもの頃、揚げ物全般が苦手だった。
フライ、カツ、天ぷら、すべて胸やけがしてダメだった。
かろうじて唐揚げが食べられるかなというくらい。
小4の頃、突然肉を食べたくなくなった。
なんで毎日肉使うんよと言って、母を困らせたこともある。
だから「肉」の「揚げ物」、トンカツはもっとも苦しいメニュー。
トンカツ定食、カツ丼、カツカレー、カツサンド…
でも、見た目にはおいしそうに見え、つい店で頼んで必ず後悔した。
噛んでジュワ~と出てくる油と脂に、たちまち胃が拒否反応を示す。
もう自分は二度とカツなど食べられないと思った。
***
神戸の〈かつ丼 吉兵衛〉にはいつも折り返しの大行列。
三宮センタープラザ西館地階にある〈吉兵衛〉本店だ。
カウンターだけの小さな店。
これは気になる、でもどうせ脂が…を3回ほど繰り返し、ついに意を決して入ってみたのが今から10年ほど前。
ほどなく出てきたカツ丼を見て、食べきれるか急に不安になる。
でも毎日の大行列の理由を知りたくて口に運ぶ。
うまい! ジューシー! でも脂っこくない!
これには心底びっくりした。
新鮮かつ絶妙なブレンドの揚げ油を使っているのだろうか。
少なくともラード臭はない。
それからというもの、カツ以外の揚げ物も少しずつ食べられるようになり、今では天ぷらOK、チキンカツOK。
〈吉兵衛〉さまさまだ。
***
昨日の昼休憩、久々に〈吉兵衛〉本店に。
午後から出かける用事があったため、5分で食べなくてはならない。
これこれ! このカツ丼!
これが、揚げ物嫌いでもペロリと食べてしまえるカツ丼。
1978年に建ったセンタープラザ西館は、昔ここにあった公設・三宮市場が集約され、1階や地階には今も卸だけやってそうな鮮魚、青果の店も並ぶ。
とくに地階はかなり異様で陰気、初めてだと引き返したくなる衝動に駆られるが、この〈吉兵衛〉は賑わっているので西館散歩はここから始めよう。
そうそう、この〈かつ丼 吉兵衛〉のすぐ近くに〈天丼 吉兵衛〉がある。
こんな近くで何を名前パクってんねん、とずっと思っていた。
ところが調べてみたら、なんと〈天丼〉が最初で、その後〈かつ丼〉を始め、さらにその後〈天丼〉を従業員に譲って〈かつ丼〉に専念したとある。
およよ、元祖のほうをパクリ扱いしてすみません。
5分きっかりで平らげ、急いで会社に戻ったら、すっかり店の様子を撮るのを忘れていることに気づいたので、この写真は借り物。
©食旅journal
〈吉兵衛〉のかつ丼は、ミニからとりぷるまでサイズ8種類、玉子とじやソース、最近はコチュジャンやカレーまであって、その日の気分で選べる。
あぁ、至福の5分、旨かったぁ。
(2021/9/18記)