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〈Sion〉のカレーは今日にでもまた行きたいくらい

このところ僕のnoteは、さながら「オリエンタルホテル特集」となっているが、カレーの話をもっていったん締めくくろう。

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125年の歴史を誇った神戸の名門・オリエンタルホテルは、平成7年に震災で幕を引くまで、遠くヨーロッパまでその名を轟かすほど料理が評判だった。
この厨房で腕を鳴らした歴代の料理人たちはそれぞれに独立し、伝統に裏打ちされた料理を神戸の町に広げていった。

そうした店が今もいくつかあるが、比較的新しいのが西元町の〈Sion〉。
震災で消えたオリエンタルホテルの灯火を次代に繋ぐため、長田区にあった喫茶〈詩音〉がホテル最後のシェフを呼び寄せ、移転オープンしたという。

実はこの店、名前は聞きながら足を運んだことはなかったのだが、noteで仲よくさせてもらっている庵さんがご自身の記事で「最初に行った時は涙ものだった」と触れられていたので、今回ぜひにとやって来たのだ。

13時までのランチタイムはカレー、ビーフシチューのみという潔さ。
無類のカレー好きなので、ここは迷わずカレーを注文。

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ほどなく出てきたカレーに心躍り、いただきますもそこそこに口に運ぶ。
濃い、甘い、そして後味にくるほのかな辛み、これは文句なしに旨い。

30時間以上仕込んだというこのルーは、ホテルカレーによくあるスープみたいな裏ごしルーと違って結構ザラついていて、しっかり舌に絡んでくる。
どうやらソテーとフライのダブルオニオン、リンゴのなせる技らしい。

カレーについては以前こんな記事も書いたが、ここのカレーを食べてから書くべきだったかもしれない。

つけ合わせはラッキョウ、福神漬け、そしてなんとマンゴーの3種。
甘い薬味は初めてだったが、いったん口がリセットされる点で、アリだ。

初めての旧オリエンタルホテルの味、ごちそうさま。

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阪神・西元町、阪急・花隈、地下鉄・みなと元町のどこからもすぐ。

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余談をひとつ。

以前、阪神・三宮の駅構内に〈神戸居留地オリエンタル〉というカレースタンドがあった。
旧ホテルの味を受け継いだというポスターに誘われ入ってみたことがある。
結構ヒリヒリの辛さだった…あれ?
記憶の中の味も食感も、〈Sion〉とあまりに違いすぎる…
こちらも旧のシェフを招聘して再現したそうだが、実際どうなんだろう。

何より、破格の390円だった。
ダブルオニオン、30時間仕込みのコストはどこへ。
結局この店、すぐに閉店となった。
今は神戸を離れ明石でのみやっているらしいが、もう行くこともない。

〈Sion〉のカレーは今日にでもまた行きたいくらいだけど。

(2021/9/23記)

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へんいち
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