抄訳・源氏物語〜帚木 その七〜
空しいひとり寝に、源氏は落ち着いて寝られず目が冴えていた。
この部屋の北側に人のいる気配がして『ここに先程の話の空蝉がいるのか』
と関心を持ち、静かに起き上がって立ち聞きすると、先程の子供の声で
「ねぇ、どこにいるの」とかすれた声でかわいらしく言うと
「ここで横になっていますよ。お客様はもうお休みなられたのかしら。ここと近くて心配だったけど、大丈夫みたいですね」
と言う寝床からの声が、二人よく似ていたので、姉弟だとわかった。
「廂の間で寝られましたよ。噂通りのお姿を拝見できま