抄訳・源氏物語〜空蝉 その四〜
軒端荻はだんだんと目が覚めて、思いもよらない出来事に驚いているだけであった。
源氏は空蝉の時のような、気の毒に思う気持ちが湧いてこなかった。
軒端荻が初めてのように感じだが、恥ずかしさで慌てたり、恥じらう様子はなかった。
源氏はこのまま自分だと言わないでおこうかとも思ったが、軒端荻が後からこのことを誰かに話したりして、噂になりあの冷たい空蝉のことまでもが知れてしまっては、空蝉が気の毒だと思った。度々方違えにこの家を選んでいたのは、あなたに会いたかったからだと言っておいた。それ