日本美術研究者であるプリンセスの、オックスフォード留学記
「これ買いました」と呟いたのはいつだったか。
大正天皇の曾孫、三笠宮家・彬子女王殿下のオックスフォード留学記「赤と青のガウン」の感想をずっと書きたいと思っていました。
この本はなぜかSNSで話題になり、33万部のベストセラーとなったそう。
でも、なかなか読み終わらなくて・・というのは面白くないのではなく、
逆にすっごく面白いのだけど、章に分かれているので、一つ読むと違うことをして・・をくり返して今に至っているわけです・・・。
私は学生時代からヒトサマの海外留学のエッセイを読むのが大好き。
当時はそういう類の本はまだ少なかったから尚更で、留学や海外旅、海外生活の体験話を好んでよく読んでいました。
そのせいもあって「赤と青のガウン」を手にとってみたのだけど、
なにより、彬子さまが女性皇族初の博士号取得されたというところにも興味を持ちました。
博士号を取られたのは、日本美術。でも当初の専攻は古代ケルトだったといいます。
そのこと自体も本を読んで初めて知りました。
博士論文の研究テーマは「十九世紀末から二十世紀にかけて、西洋人が日本美術をどのようにみていたかを、大英博物館所蔵の日本美術コレクションを中心に明らかにする」というもの。
大英博物館は日本美術を約三万点も所蔵していて、
そのほとんどが明治時代に蒐集されたものだそうです。
美術に興味のある私は、このテーマだけでもちょっとわくわくするのだけど、それに加えて英国の生活の話、そのなかにちょこちょこ出てくる「皇族ならではのエピソード」がまた面白いのです。
例えば、エリザベス女王からアフタヌーン・ティーに招待されるとか!(しかも一対一で!!)
本を読んでいると、ほんとうに気さくで気取らない方だと感じるのは、こういう記述があるから。
ぜんぜん普通のお立場ではないのに、なんだか「普通」っぽく感じて親しみがわくのです。
普通っぽいのに普通じゃないのは、日本では一人で歩いたことがなく、生まれて初めて街をひとりで歩いたのは英国だった、という事実も。
皇族の側にいて守っている人たちのことを、側衛官というのも初めて知りました。
警視庁附属機関である皇宮警察本部に所属する皇宮護衛官だそうです。
「皇族を守ることを警衛、要人を守ることを警護、モノを守ることを警備という。」
って、知ってました?
私は知りませんでした。
各宮家についている人たちは、さりげなく近くから見守っているそうで、長年ついている人たちは家族のようなものなのだとか。
「買い物をしているときに意見を求めたり、愚痴を聞いてもらったりすることもある」というのには驚きました。愚痴も?!
三笠宮家の側衛官は猛者が多いけれど英語はだめで、外国で迷子になって、彬子さまのほうが探し回ったという話も笑えます。
ちなみにEU圏はなぜか「安全」だという理由で、二週間を超える滞在には護衛はつかないのだそう。
海外に日本の皇族が長期滞在する場合、現地の警察関係者に護衛を頼むのだそうだけど、そもそも英国では「女王陛下の従妹のこども」には護衛がつかないため、彬子さまにもつかなかったということです。
お父上は「ひげの殿下」と呼ばれた三笠宮寛仁親王で、2012年に亡くなっています。
私はそのときのことをなんとなく覚えていて、
まだお若いのに亡くなるなんて!と思ったのです。
男性皇族がどんどんいなくなってしまうなぁ・・と感じたのですよねえ。
文庫本の最後には、お父上についての思い出のエッセイが掲載されています。
もうひとつ興味深いなと思ったことは、
ふつう話し言葉にしても、文章にしても、自分の親に対して敬語は使わないですよね。
でも、「赤と青のガウン」のなかで、お父上について敬語を使っているのですね。それがシモジモの私からすると読んでいてなんとなく違和感があるのですが、皇族ってそういうものなのだなあ、と思ったのです。
そういえば、パスポートを持たないので入国時に引っかかったエピソードでも、「皇族って日本国民じゃないんだった」とあらためて気づいたのでした。
今日なぜこの投稿をしようと思ったかというと、
NHK総合で夜10:15から特集番組があるんですねー。
「京都ものがたりの道」も、ちかぢか読んでみようと思っています。
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