絵画と女(Woman with paintings)/ヨハネスフェルメール
フェルメールの絵画には画中画(※絵画中に描かれた絵)が多くみられます。それには3つの側面があります。
1.当時のオランダでは庶民が家の中に絵を飾ることが流行っていたことによるもの。
それ以前の絵は王公貴族が己の権力を誇るために描かせたり、宗教施設が教えを広めるために描かせたりするものでした。17世紀のオランダはヨーロッパの他の地域より先んじて庶民の生活の中に飾られた庶民のための絵画が登場しました。
例えばフランスでは庶民のための絵画が描かれていったのは「印象派」の登場を待たなければなりませんでした。なんとそれは2世紀後の19世紀以降になります。
2.絵画中の人物の感情表現の比喩として画中画という表現が流行ったことによるもの。
西洋の絵画というものは登場人物の地位や功績を示すために肖像画の中に多くの説明的なオブジェを描き入れることが行われてきました。また宗教画ではその聖人や神が誰であるかを示すためにやはり特有のオブジェが描かれました。
その流れをくむように、画中画は登場人物の心情を表すために描かれることが多かったようです。
例えば手紙が恋文であることを示すために「愛の象徴であるキューピット」を描いた画中画を描いた「窓辺で手紙を読む女/ヨハネスフェルメール」。
日本人の我々から見ると「そこまで説明しなくてもええやん?( ゚Д゚)」という気もします。
3.フェルメールは画家の他に、宿屋の経営、画家ギルドの長の他に父レイニエの後を継いで画商を行っていたことによるもの。
画商を行っていたことから、フェルメールの家には常に多くの絵画が飾られていたようです。それに対してフェルメールは遅筆であったためフェルメール自身の絵は飾られていなかったかもしれません。実際「フェルメールを訪ねて行ったが彼の作品はなかった」という話が残っています。
「窓辺で手紙を読む女」に描かれていたキューピットの絵は「ヴァージナルの前に立つ女」でも描かれており、実際に飾られていた絵であると考えられています。
このような理由で、フェルメールの絵には多くの「画中画」が描かれたと考えられています。
未公開作品。制作年不明。収蔵元非公開。
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