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とあるケアラーの1日

朝。
両親を定期通院に連れていく。
事故のこともあるが、高齢になってきた両親はどちらもあちこちガタがきており、通院・服薬が欠かせない。多くても30日分しかお薬はもらえないので、できるだけ調整して、お薬がなくならないように管理している。

今は便利で、アプリで予約できるクリニックが増えているのでありがたい。
待ち時間が長いとそれだけでストレスになるし、今の時期もらいたくない感染症をもらうリスクも避けられる。
家の近くの薬局をかかりつけにしておいたのも正解で、あちこちの薬局にいくと一回ずつ説明しないといけないが、その手間も省ける。

しなくて良い苦労はできるだけしない。
これが多重介護における最も重要なテーマの一つだ。

午後。
今度は伯父の面会と祖母の施設へ。

入院すると心細くなるのか、伯父は今まで以上に「いつきてくれるの?」が口癖になった。私としてもできる限り面会には行きたいが、時間が制限されている上に予約制なので、思うように面会時間が取れずにいる。
ここは少しもどかしい。

それにしても、輸血が必要なほどの大手術だったのに、もりもりお菓子を食べる伯父を見ていると、この人は本当に生命力に溢れているなと実感する。見習わなければ。口を開けば祖母の様子ばかり気にしていたので、祖母の施設から電話をかけるからねと言って、病院をあとにした。

伯父と祖母は相変わらず二人の世界で、私はそれぞれの使者として会いに行ったような扱いだった。まぁそれでも良いかと思いつつ、適当に相槌を打っていたら、祖母が「今度は貴女が健康な子どもを産めるようにお祈りするからね」と言われた。この言葉だけは受け流せなかった。

今の、この、この状況で。
どうやって結婚して子どもを持てと言うのだ。
正直ぎょっとした。

できるだけ言葉を選びつつ、それでもストレートにこんな状況で結婚や出産なんてとんでもない。考えられないし、物理的に不可能だと話すと、祖母はひどくショックをうけたようだった。
祖母は結婚も出産も諦めてほしくないと言う。
そうでないと、自分たちのせいで結婚できなかったと自責の念にかられるし、なんとお詫びのしようもない。とのこと。

夜。
ようやく家族のことが終わったので少しだけ仕事をする。
ある意味仕事の時間が一番気が楽かもしれない。
家族と関わるとそれだけ心が揺れ動くし、感情の波が激しいと疲れてしまう。家族は皆ケアされることを求めており、私は常に与える側。
その構図も搾取され続けているような気がして時々辛い。

とはいえ家族のことを責めるつもりはない。
私はきっとそういう星の元に生まれたのだ、と最近は割り切って考えられている。今の仕事はこうやって介護をしながらもなんとかやれているし、人生それなりに充実もしている。

結婚して家庭に入ることこそが幸せだという価値観で生きていないのだと、祖母に伝えても、強がりにしか聞こえていないようだった。祖母にとっての当たり前と今の時代は大きく違うから、わからなくて当然かもしれない。
なにせ祖母は18で結婚して19で伯父を産んだ。

祖母と私は生きている世界線が違いすぎる。
どちらがいいとか悪いとかではなく、違いすぎるだけなのだ。



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小春ゆら
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