柚子の守り神 中岡慎太郎
あらすじ:国事の為、民の為に紛争する倒幕派で薩長同盟と薩土盟約の奔走や大政奉還の影の立役者であり、幕末に活躍するフィクサー的存在の生きがいを描く!!ノンストップ幕末志士版宮沢賢治。
第1話 くそ真面目な賢い男
天保9年4月3日(1838年5月6日)、清流が流れる安芸郡北川郷柏木村にある茅葺き屋根の大庄屋の肘建築屋敷に、中岡小伝次と後妻のウシの間で待望の長男として生まれた。
中岡福太郎、後の中岡光次から慎太郎、本名は爲鎮から道正。
姓の中岡は藤原氏であり、大庄屋を継いだのが祖父の要七。
しかし、中岡要七は、郷士の北川助七郎に殺害され、御家断絶されそうになるものの、郷民の要望によって、嫡男の小伝次を新たに大庄屋の復職を得る。
先妻の娘に当たる3人の姉がおり、長姉の縫の子孫が劇団ひとり。
坂本龍馬の幼少期とは違う、素直な腕白坊主で、北川村に流れる奈半利川を、将来の妻となる少女の兼や友達と一緒に、郷民たちから恐れられている「巻の渕」と呼ばれる崖から平気で飛び降りて川遊びしたり、生家の裏庭あるナツメの木を登ったりする無邪気で勇敢な少年だった。
飼い犬の名前は『ぴょん助』
頭脳は、3歳で習字を、4歳で松林寺の禅定和尚に読書を習い、7歳から3時間往復して歩く足を早く鍛え、野友村の漢方医の島村策吾のもとで四書を学びながら、勉学に励み、父親の背中を見て将来は庄屋代行をするのではと期待してた。
三姉のカツはあの祖父の要七を殺した郷士の北川家に嫁ぐ。
嘉永2年の12歳に父の小伝次が病から逃れず、次姉の京の夫で義理の兄の中岡源平に養子として譲る。
同じく嘉永2年(1849年)の城下町の新町に武市半平太の剣術道場が開設された。
嘉永4年(1851年)、5月21日に母親のウシ(漢字は牛、庄屋の田島氏の娘)を亡くし、わずか成人した14歳で、島村塾の代講の教鞭を勤め、篠崎小竹の手本書の王義風の書を極め、田野郡校に通い始める。
嘉永5年(1853年)、16歳に高知城下町へ、尊王攘夷田野浦勤役の間崎哲馬と出会い師事する。
安政元年(1854年)、17歳に田野学館に入学。
安政2年(1855年)の18歳の頃、8月7日、安芸郡の藩校の田野学館で、白札の郷士の武市半平太の剣術の指導を受け、高知城下町の武市半平太の道場に通い、江ノ口村の間崎哲馬の塾や竹村東野の成美塾にも入門。
安政3年(1856年)の19歳、5月22日吉村鎌次郎の砲術学の門を叩く、武市半平太の跡を追って、桃井春蔵の道場に足を運ぶ江戸遊学中の安政5年(1856年)の9月頃に、父親の病気に倒れたという知らせを受け、大庄屋の家業職の後を継ぎ、高知城下町の新町に、武市半平太が開いた剣術道場に足繁く通う、そこに入ってみたら、自分と同い年の岡田以蔵とその幼い弟の啓吉少年もいた。
岡田以蔵は、長男として扱われていたが本当は次男で、長男の馬四郎が幼くして亡くなったため、毎日素振りや突き、漢学、経書、砲術学、寒暖差や痛みさえ感じず、丈夫な体とネズミやゴキブリなどを俊敏に取れたお陰で剣の腕前がピカ一だが、流行り病に引っ掛かりやすく、「七以」と呼ばれた統合失調症気味の青年。
幼き頃は他の子供とは背が高かったそんな「七以」5歳と、7歳で一寸(約3cm)に背が高い女だと思われていた幼くして女装した坂本龍馬であった『直子』とは幼馴染で、仲良くしていた。
岡田啓吉も、次男として扱われていたが本当は三男。
そんな岡田兄弟は、姉や妹にはいないから、フィクション作品では女郎として売り飛ばされたというのは家系図的には無理がたたる。
岡田以蔵は毎日、武市半平太の妻の親戚で才谷屋の分家にいる坂本龍馬の所に簡単な和歌(短歌)を教えて欲しいと願い出る。
武市半平太の道場に剣術を学びに行きたからずに足繁くこそこそ通い、武市半平太やその門弟たちに話と見に行くだけに、道場の門の柱に小便の用を足す坂本龍馬がいた。
元々はサラサラの髪質が、12歳から小栗流の剣術を学んだときにやられた髪はぐしゃぐしゃパーマの総髪で、胸を開けて柄物の着物をおしゃれに着こなす坂本龍馬のことを「武市先生の所に通う男は、先生の弟分だと聞いていたが、傾奇者みたいで変な人だな」と思う中岡光次。
中西派一刀流を修めた中岡光次は、身長が153cm、ソロバンの珠のような頬骨の顔立ち、お手製の裃(カミシモ)が中岡慎太郎館にも残されている。
中岡家の家紋は、丸に綿の実。
安政4年(1857年)、利岡彦次の長女の兼と結婚して、初夜を迎えてから、安政の大地震に遭遇した北川郷では川の堰の水が溢れ出すし、山林や家屋も崩れて、農民たちの田畑も喪失して、サツマイモや木の根を食い繋いで凌ぐ有り様という事態に陥る。
北川郷の大庄屋の見習いとして農民たちのために働く光次は、山に木を植えたり、田畑を立て直し、山谷の農民らの手立てを救う方法を見つけた。
蝋を取るためのハゼとともにするのが柚子の栽培だった。
「柚子に家の日陰の所や山のすそへ植樹せよ」と農民たちと手伝う中岡。
だが、昔から『桃栗三年柿八年、柚子はすいすい十五年、柚子の大馬鹿十八年』と伝われており、それにもめげない20代の中岡は、柚子の活用方法で、塩の代用として防腐と調味料に使えるかどうか試行錯誤していた。
「柚子酢(ゆのす)」というなどを作り出し、ポン酢の参考にしていた。
それは、味噌や醤油、塩が買えない農民たちの飢饉対策や換金性に着目していたからだ。
それでは飽き足らず、土佐藩の奉行所で、土佐藩家老の桐間蔵人に訴えながら、お米を乞いに、眠るにはいられず座ったまま刮目して、早朝まで、うとうとしていたところに奉行所の御代官は心が打たれ、お米の何俵ものをあげて、村人たちに沢山の米俵を貢献して投げ打った。
土佐藩にも、800両の支援金の援助してもらい、農民たちの復興にも繋いだ。
でも、兼との間に子が実らなかった。
小伝次に「父さん、俺はもう一回、遊学しに行きたい」に伝えたものの、許しを得ず。
第2話 土佐勤王党
下級武士ながらも、藩主と面会可能な白札郷士、鏡心明智流の桃井春蔵道場『士学館』の塾頭だった武市半平太の魅力に引き込まれた光次は、高知の武市半平太の道場を通っている時に、剣術はメキメキと師匠の半平太を超えるぐらい上達していた。
文久元年(1861年)、尊王攘夷と身分撤廃したい思いで土佐勤王党を立ち上げた領袖の武市半平太は、上士から下士らも参加させて「血判状と署名を!」と中岡光次たちは署名してから血判を押印する。
武市半平太 小楯が一番目だが、3歳年上のあの坂本龍馬が9番目で署名したのに、しかもなぜか武市半平太と吉村虎太郎の次の3番目で実質的に尊敬されている。
同じ田野学館の後輩の千屋寅之助と安岡金馬らがいた。
中岡はタバコと酒を呑み干し、平井収二郎と饅頭屋長次郎こと近藤長次郎に話聞いて、平井収二郎と千屋寅之助と岡田以蔵と啓吉と組み、城下町の上町の才谷屋坂本家へと通う。
「酒臭いぞ、光次、大丈夫か!?」「中岡さん」と平井たちの声掛けに「おうよ、大丈夫やー!ヘロヘロ」と泥酔する中岡光次。
500坪の住宅地に噂通り驚かせていたが、中に入った中岡と寅之助は驚くも、城下町の地元の岡田以蔵、龍馬の幼なじみである平井収二郎らは驚かない。
「ほぅ、まるで迷路のようだ」を男言葉だが、いたいけな少女の声で呟く千屋寅之助。
「龍馬の部屋に行くぞ!」と平井収二郎。
「おう!」と応答する数名は、龍馬の部屋の内室にたどり着いた。
「おーい!!龍馬!平井だ!連れも来たぞー!!」
「ぶっっ!」と振り返る龍馬は「平井、平井の幻か!?」と連呼する。
12歳の頃、平井加尾の稽古の為、坂本乙女と一緒に平井家に遊びに女装しに行った昼間の収二郎の部屋に寝転び、突然と襲い掛かった平井収二郎から「才谷屋の見知らぬ珍しいおなご」として初キスされ、その時の名は慌てて「お直」と名乗り、両者ともにその気になって性行為未遂の初ディープキスされたことに、嫉妬した平井加尾に「お兄様ことが好きでしょ、お兄様と付き合いたいなら、うちと付き合え」と密かに脅されていて、姉の乙女にあてた千葉さな子と比べる手紙の最後には「平井、平井」と指したのは幼なじみの加尾ではなく、今でも付き合っている江戸の千葉さな子以外にも、片思いで未だに本当の初恋の相手でもある平井収二郎にはドキドキしていた。
女の声してる龍馬の身長は180cmぐらい、上士で勉学が優秀の男真っ直ぐな平井収二郎は170cm以上もある。
龍馬の両頬をブンッと振りつねった平井収二郎は「おんしは俺の亡霊でも夢でも見て思っちょるだろうがー」
平井につねられた嬉しさあまりに「痛たたぁー、いや~、以蔵と啓吉は相変わらず元気にしてますねって!?けんど、その2人はどちら様じゃ?!」と尋ねる龍馬に、平井収二郎は、「酔っぱらっちょる小柄の中岡光次と、千屋寅之助だ」
「どうもこんにちは、坂本さん、ちっちや、ととらのすけ!千屋寅之助と申します」と緊張して口走り土下座する千屋寅之助。
「龍馬さん、この間の短歌の勉強、お世話になりました」と以蔵。
岡田啓吉「龍馬先生こんにちはー、失礼ながら、平井さんと兄ちゃんに連れられた時の漢詩を大声で披露した時は、あれは酷いものでした。」
「寅之助だっけ、俺と同じかそれ以上にべっぴんなおなごの声をしちょるな」と坂本龍馬の言葉を遮って、「どうも、ひっく、中岡!光次だ!よろしくお願いします!ひっく、この前から覚えとらんだろ、おんしはオラのことを!忘れちょるきね!オラは武市先生の門柱で、おんしの小便してるところを時折、見てるぞ!あと、僕はね既婚者です」と詰める中岡。
「ありゃーすまん、失礼な証言されたもんだな、けんど、お漏らししたくないきに、ご祝儀おめでとうございます」と謝る小便小僧の坂本。
「ああ、そうかい!ヒック!」と泥酔中の中岡はそっぽを向いた。
「坂本龍馬先生は変わり者の女たらしだと聞きました!そんで、独身のオラの声のことは恥ずかしいき!しかも、先生もおなごの声はしちゅーやし…」と千屋寅之助。
「うん、そうかー、悪いこと言ってごめん寅之助君、女遊びしてた時期あることは認める」と龍馬。
「そうじゃぞ、坂本龍馬先生のアホが」と少年の啓吉。
「おい、やめろよ、啓吉!龍馬さんに対してなんちゅうことを言う!?」と叱る以蔵。
「まぁまぁ、以蔵、そんがん幼い弟に叱らなくて良いよ、俺は涙もろいし、『世の人は我をなんとも言えば言え我を成すことは我のみぞ知る』って和歌に書くぐらい、乙女姉さんらにしごかれてる情けない、退塾されたいじめられっ子で、馬鹿なことがあるんや」
龍馬は立て続けに頬を赤くなり決意した顔で平井収二郎に向かって「平井!あのさ、加尾から聞いたが、幼い頃のおまんの好きになっちょったあのおなごのことを知っちょる!」
「はぁ!!」と平井収二郎と一同は唖然とした。
「で?、あの日の出来事をどうして龍馬が知っちょるのかな?乙女と加尾は知っちょるのに…なんだろうか龍馬、あの幼い頃のおなごのことを詳しく申せ」と疑問に湧く収二郎。
龍馬は詳細に「ホンマのことは、加尾から聞いたのは嘘で、口封じに彼女から脅されて付き合っていため、本当は口付けして口吸いされたあの幼いおなごが、収二郎と同じ12の時に女装していた俺だ!黙っててすまん!」焦らしてしぼむ龍馬は土下座して、「平井収二郎、好きや!俺と付き合ってもう一回やり直そうかえ!?」
「えっー!!龍馬さんが!平井収二郎と!!加尾さんや千葉さな子も付き合っているのに!」と驚き、平井収二郎に顔を合わせる一同は「ヒュー!ヒュー!」とからかう。
赤っ恥かかせて顔を赤く染めた平井収二郎は、「何故だー!何故だが知らんが、龍馬の馬鹿たれ!嘘を言え!!今までなんで黙ってていたんだ!おまんの乙女姉さんや加尾たちもだ!だから下士であれでも、俺と好きになっちょったあのおなごというおまんに口付けして目合おうと女中らに寸止めされてしまった時の夜に親父には叱られて木に縛られたことが大変な目にあったんだぞ!!しかもあの時の偽名で『お直』って言ったな!!」
「あん時の俺は女装して見ようとしたらうっとりしちょって、うっかり平井の所に遊びに行ったき、うぅ、くぅわん、でも…、怒らんでくれよ、あの夜の俺は乙女姉さんが笑いながら家族に言いふらされて驚かせたんじゃ、けんど、俺のせいでお幸の母上を亡くしたかもしれんき、それが気が重く感じちょる、今も平井のことが好きで好きでもたまらなくて、江戸の千葉さな子に会ったあとの乙女姉さんに報告した手紙にも『平井、平井』って何度も綴り、加尾のことも指して思わせちょるが、おまんのことが無性に気にしちゅー、天の上のいる母上や、収二郎にも申し訳ない、ごめんなさい」「その上、退塾された理由も上士の同輩と喧嘩で「おまんは女々しい話し方しちょる」と斬りつけてられたき」平井に叱られて涙もろくなって訴える龍馬の告白。
その告白に打たれた平井収二郎も諦め顔で「もう良い、涙拭って顔を上げい、もし、おまんがべっぴんな女だったら目に浮かぶ、じゃが、本当に俺とおまんに付き合う前提で置いて聴くよ」と火照ってて泣いている龍馬の顔に用意された手ぬぐいで拭く。
平井収二郎の手ぬぐいと手の温もりで撫でられた泣き虫の龍馬は「ああ、ホンマに!!身長差あるけんど付き合おうね、俺もさなやおまんのこと好いちょるきに、また今度は女装してくるき、権平兄さんや乙女姉さんに怒られるかな」
「うわわー、平井収二郎と坂本龍馬が色眼鏡しちゅー、龍馬さんがしかも女装して来るのを楽しみや」とクスクスと笑った岡田以蔵と啓吉が戸惑うも無理ない、武市半平太にも親と同然のような存在で尊敬している。
「ゲホゲホ、ゼーゼーハーハー」と酔いが冷め、タバコのせいでの過呼吸気味の中岡は青ざめ、驚き隠せない。
「えぇ?!」と戸惑う千屋寅之助も夢にも思いません。
寅之助が五十人組に組んでから人斬りになり、土方歳三と衆道で付き合うとは誰も当の本人さえも知らぬ、まだまだ先の別の話。
全員が龍馬のもとで立ち去ったあと、平井収二郎と坂本龍馬はより一層、両者の家族に「酒飲みに行ってくる」と嘘を言いながら、宿で一夜を共に過ごす男の契りを交わしベタベタと照れくさそうに付き合い始める。
女装している龍馬が、街で闊歩し、通り過ぎただけでも、うっとりさせるほどの町中の人から噂が絶えない。
後藤象二郎と岩崎弥太郎、綺麗好きで高知一番の悪ガキの乾退助もその噂にすぐさま駆けつけ
乾退助「なぁ、あのいたいけな娘は誰だろう、あの美人に惚れたけど、背丈が高いな、名前でも、聞いてみよか、やす」
後藤象二郎「ああ、天下一とは言えんでも町一番の国色娘になれそうね、いのす」
岩崎弥太郎「あの娘に話しかけましょうぜ!」
乾退助「あの~ちょっとそこの娘、名はなんという」
乾退助にお尻をつねられて聞かれたおなごの龍馬「才谷屋のお直です」
後藤「はて、才谷屋のお直って聞いたことがないぞ」
誰かの女装用の荷物を包み風呂敷で隠して持っている龍馬「あそこに働き始めた女中ですので、用事があるので失礼します」
岩崎弥太郎「後藤さん、退助さん、やりましたぜ!国色の娘に話しかけるのは愛でたいことでしょう」
「ウ~ン」と、とんちんかんに唸る2人。
我が物顔で、武市半平太の道場へ大柄の美女が現れた。
道場の門弟たちや勤王党一員も「誰だろう、道場に上がり込んだあのべっぴんなおなごは」
子が作れないと悩んでた武市半平太と武市富子夫妻もあっけにとられて、美術の腕のある半平太は「あの美しい女性を美人画で模写したいね、なぁ富」
富子「まぁ、旦那様たっら、私以外の女はとらん言ってた癖に、もう!しかし、あの娘、坂本の乙女さんかしら」
門弟「そこの綺麗なおなご、ここは武市先生の剣術道場だぞ!おなごいえども引っ込め!」
おなごは笑いながら「おなごじゃないからってのに、竹刀で勝負する?」クスクス笑う
おなごの為に剣道道具持ってきた門弟「何を〜おのれ!かかってこい」
平井収二郎ですら気づかない女装している龍馬の姿を見破れなかった。
門弟である土佐勤王党の1人は「ああ、やろうではないか、手籠めにしてやる!」
囲むかのように襲い掛かる門弟たちの竹刀に体をヒョイと交わして1人一撃ずつ連続で倒し、女装している姿のまま竹刀で勝った龍馬。
「もう良いではないか!やめんか!」と窮地に現れて怒鳴る武市半平太。
龍馬「待ってたぞアギ〜!!アギ!!俺が町で歩いていたら、町中は噂に持ち切りで、町一番の国色娘だと、色眼鏡にされたぞ!しかも、後藤象二郎と乾退助にナンパされたもんじゃき、しかも俺だと分からず門弟らにも「手籠めしてやる」とかほざいてた、もう困っちょる」
半平太「ホンマにアザ(龍馬のこと)なのか!?龍馬の女装した姿は見事じゃのうて、けんど、うちの門弟たちに気をやらせるようなマネしてしもうたな」
龍馬「うんうん、良かよ」
以蔵「先生、龍馬の宣言通りにやってきましたき」
半平太「以蔵!おんしが黙ったのか!?」
照れくさそうに岡田以蔵は弁明して「いえいえ、僕以外にも弟や中岡も平井収二郎と千屋寅之助も聞いちょりました!原因は龍馬ですが、平井もです、最近の2人はベタベタ感たっぷり付き合うとは思いませんでしたきに」と口をニカニカとしてた。
吉村虎太郎、中岡と寅之助や啓吉も美しい女装している龍馬の姿をただ見て呆然とした。
武市半平太の後についてきた呆れ顔の武市富子「龍馬さんったら、また来たのかー、今度は女装しに家の門柱で小便かけるつもり!?」と話しかける。
以蔵の言葉に耳で聞いた平井収二郎はハッと我に返り、龍馬の晴れ姿を見て「武市先生申し訳ございませんでした、龍馬…そんなけったいな姿で何しちょる、子供の時より大人の姿もいいねあ」
龍馬はデレデレの女言葉で「うふふ、あら、収二郎さんったら!」と平井収二郎に抱きつく
その光景に門弟や勤王党一員も愕然とする。
龍馬「中岡!手みあげに持ってきたぞ」と風呂敷の中から女の着物の何着かが用意された。
中岡光次「えぇっ!!これを着ろ言うが?」
龍馬「あぁ~そうじゃ」
吉村虎太郎「龍馬が言うなら、武市瑞山先生の絵筆の模型にしちょけ、な!みんなも中岡も一緒に」
千屋寅之助「ええ!早うしちょいてとーせ、中岡さん!男真っ直ぐな男前ですが、女装しちゅー姿は見たこと無いけんど、僕はお断りします、絵筆担当か見学だけでもいいき」
以蔵「先生の絵筆の模型のためなら、人肌脱いで、僕もやります」
半平太「……、よし、分かった、何名かで美人画の模型やろうではないか」
武市半平太が残したあの有名な緑色の着物が着た美人画が岡田以蔵だった。
武市半平太の絵筆の下絵に手伝う千屋寅之助は、手塚治虫や葛飾北斎、石ノ森章太郎には勝てないが、高速に俊敏な絵筆を上手に描き、武市富子に手伝われる武市半平太が上書きでなぞり、数名の絵が完成した。
中岡慎太郎と坂本龍馬の両者の絵も完成した。
それは、中岡光次は三味線弾きの芸者で、中岡の後ろには坂本龍馬が立ち姿の芸者風に描かれた。
第3話 隠密者坂本龍馬
だが、しかし、坂本龍馬には秘密があった。土佐勤王党を探る土佐藩上士福岡家の密偵として働いてた!!
その証拠として、なぜなら、実際、脱藩後の龍馬の手紙には百何通ものを送れるぐらい土佐藩が許されているからだ。
早速、龍馬は、後日の福岡家に訪ねてきた。
福岡孝順「坂本龍馬直陰、土佐勤王党の近況を申せ」
龍馬「はっ!!私が女装しに武市道場に上がり込み、皆が盛り上がる勢いで、美人画を描いておりました」
福岡孝順「ほう、そなたは、何故、女装しに参ったのか!?」
龍馬「福岡様、あー、実は、武市瑞山や幼なじみの平井収二郎に見せたかったからなのです、何名かの女物の着物を着せさせるように差し上げました!その上、道場に来る直前、昼間に出歩いたら、後藤象二郎と乾退助、岩崎弥太郎らしき人物とばったり遭ってしまいました、乾退助から無防備ながら尻をつねられてしまいました」
福岡孝順「ワシの息子らと組んでいるおこぜ組の3人が面白そうに駆けつけるとは、直陰も変わった趣味をお持ちでな」
龍馬「ははー、申し訳なく思いました」
福岡孝順「直陰よ、江戸の千葉道場に婚約者の千葉さなの以外、この土佐に男と付き合っておるとの噂が絶えない話があるそうだ」
龍馬「それは与太話だとございます!!」
福岡孝順「どれどれ、試しとして、長男の小姓にならぬか?」
坂本龍馬「はぁ?はぇ?どうしてですか?福岡様も気が狂ったのですか?」
福岡孝順「いやー、うちの長男の精馬は勉学に教えこむ先生としてはできても、虚弱な体で、丈夫な体があれば本来ならば家督を譲れるはずが、吉田東洋の塾に通うワシの次男の藤次に家督譲らさてしまう事態に陥っている」
坂本龍馬「うちの勤王党のことを書生論だと愚弄した福岡の次男様のことは、武市に親しい上に情報収集している私にとっては良くないと思いますが、さて、正直に言って、なんで精馬様の小姓を命ずるのかがわかりません」
福岡孝順「まぁ、ワシの次男には土佐勤王党のことを小さく思ってただろうさ、直陰よ、身辺調査だ、直陰は女の声をしているのに、立派な男の体をしていて、なおかつ、生まれた時には背中にタテガミがあるという話も君の兄上や父君からも聞いたが、それはまことか?」
坂本龍馬「はは、もったいないほどでございます、先程の発言に無礼を申し訳なく存じ上げます、けれど、『龍馬』と名付けられたタテガミ持つ毛深い私にとっては無くてはならぬ宿命でございます」
福岡孝順「ふふ、そうじゃな、実際、直陰も将棋の駒の名前と同じ変わった名前持つもの同士だ、幼少の直陰は『龍馬』と名付ける前は病弱だから『直子』として魔除けに女装してたな」
坂本龍馬「はい、坂本家の次男でありながら四女として育ち、新留守居組の平井収二郎に口付けされたほどで、ごもっとも、塾にも亡き父上から辞めさせられ、実母の幸が先立たれて、男としての自分を磨き取り戻すために、日根野弁治先生の道場へ通わせ、父上や姉たちにしごかれ始めたのが原因ではと思っていますが、幼少の頃から料理や裁縫などの女仕事をもこなし、男としての精神や丈夫な体を持つほど自信に満ちております」
うんと認める福岡孝順「ふん、高知の皆がお前の幼少の頃がお寝所はしているとの噂が絶えない、けれど、実際はお寝所はしてない可哀想な幼少の時期だけど、立派な男になったことだ、獣の捌き方や裁縫ができるなら大坂の緒方洪庵や華岡流の医術を学んでいてもおかしくない」と龍馬の肩を手で叩く
龍馬「はは、福岡家の小姓として一肌脱ぎ、魔除けの女装した過去を帳消しさせて頂き、有難き幸せでございます、福岡様、ご報告ですが幼少の頃のことの詳しい話には至りませんが、平井収二郎、岡田以蔵と啓吉兄弟と中岡光次、千屋寅之助にはバラしてしまい、平井から叱られてしました」と平井収二郎の交際をただ黙るしか無いと覚悟した。
なにか悟った福岡孝順「ふぬ、そういうことなのか……、うちの精馬は美男子だから、付き合っても安心せい」
龍馬は「はい、承知しました」と付き合いたくない男性と寝取るとは夢心地しなかった。
「ただいま戻りました」その日の夜に帰宅した龍馬のしょんぼりとした顔を見た高松太郎と坂本春猪は「おかえりなさい、龍馬の叔父さんどうしたのだろう?福岡様に何かされたのかだろうか?」と首を傾げる。
女中「おかえりなさい、龍馬坊っちゃん、高松太郎様が遊びにお見えになりました」
龍馬「ああー、太郎が来たのか、春猪も俺の顔見てどうする?」
高松太郎「龍馬叔父さんどうしたのですか?いつもうちの高松のお宅にお邪魔させるいつもの明るい叔父さんはどこに行ったのですか?」
土佐勤王党に加盟した高松太郎は、高松順蔵の長男で、後の名前は坂本直。次弟の高松習吉(後の坂本直寛)、高松順蔵の母方の曽祖父の井上好春に当たり、はとこである母親が、坂本八平直足(旧名が山本常八郎)と坂本幸の娘であり、兄の坂本権平直方、坂本乙女や龍馬の長姉の坂本千鶴。
そう、高松太郎と高松習吉は龍馬の甥っ子。
心配してる春猪は、坂本権平直方の長女。
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