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36. 教員の質と免許制度:アメリカの研究が示す意外な事実

 文部科学省のウェブサイトに、登録日本語教員の経過措置に関する経験者講習の案内が掲載されていました。令和6年10月15日から、経過措置講習の申し込みが開始されるそうです。詳しくは下のリンクでご確認ください。
https://www.mext.go.jp/a_menu/nihongo_kyoiku/mext_02845.html

 どうやら、この講習はオンラインの動画視聴形式で行われるようです。

 私の場合、登録日本語教員になるための基礎試験、応用試験、実践研修は免除されています。「講習Ⅱ」を受け、その後に講習修了認定試験に合格すれば良いとのこと。これは非常にありがたいのですが、ここ数日、教育経済学者・中室牧子先生の著書『学力の経済学』を読んでいて、いろいろと考えさせられています。

 最近の研究によれば、教員研修が教員の質に与える因果関係は、必ずしも明確ではないという結論が増えているようです。アメリカで行われた実験や追跡調査でも、教員研修が教員の質に大きな影響を与えなかったという結果が報告されています。もちろん、これはアメリカでの事例であり、日本の状況と完全に一致するわけではありませんが、興味深い点だと思います。

 また、アメリカでは教員免許が教員の質にどのような影響を与えるのかも検証されています。その結果、免許の有無による教員の質の差は比較的小さいとされていますが、免許を持つ教員同士の質の差はかなり大きいということがわかっています。なんとその差は、免許を持っている教員と持っていない教員との違いの10倍にもなるそうです。

 つまり、登録日本語教員制度には、日本語教育の質の向上と教師の専門性を担保するという大きな目的がありますが、アメリカの事例を見るかぎり、免許制は必ずしも教員の質を保証するものではないかもしれないわけです。ただし、これはあくまでも一つの視点に過ぎず、日本における制度の意義を否定するものではないですよ。

 車の運転免許制度に置き換えて考えるとわかりやすいと思います。免許を持っている人の中でも運転技術にものすごく差があり、免許を持っていなくても運転が上手な人もいますよね。これは一つの例えに過ぎませんが、教員免許も同様の側面があるのかもしれません。

 では、実際に教員の質を向上させるためには、どのようなアプローチが有効なのでしょうね?今後、調査や研究が進められることが重要だと思いますが、登録日本語教員制度が、どのような研究結果に基づいて作られたのかも気になりました。教員の質を高めるための具体的な方策が議論されることを期待したいです。

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