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ビジョンの先にある胡散臭さと戦う


「ビジョンを持って経営する」と言えば聞こえはいいが、私は日本でビジョンを持って仕事をすることの難しさを日々痛感している。


日本でビジョンを持つと、その先にあるのは「胡散臭さ」
海外でビジョンを持つと、その先にあるのは「賞賛」


「ビジョン」を辞書で引くと、「将来のあるべき姿を描いたもの。将来の見通し。構想。未来図。未来像。」とあります(大辞林(第3版))。一括りにすることはできませんが、私の感覚だと日本は未来図が現実の延長線沿いにあることを美徳としており、海外では未来図が現実と離れていることをムーンショットと呼び賞賛する。(もちろん海外にも否定的な人は沢山いるだろうが...)


ムーンショット(moonshot)とは、非常に困難で独創的だが、実現すれば大きなインパクトをもたらしイノベーション(新機軸や革新)を生む、壮大な計画や挑戦、目標のこと。研究分野や、地球規模もしくは国規模の課題解決におけるアプローチとして掲げられることが多く、スタートアップビジネスや大手先進企業でも用いられることがある。ムーンショットは、莫大な費用がかかったりさまざまな障壁が立ちはだかる中でも、独創的なアイデアの可能性を信じるというポジティブな側面を持つ。一般的には以下の3つの要素を含む。

inspire:人々を魅了する
credible:信憑性がある
imaginative:独創的である

アメリカの第35代大統領ジョン・F・ケネディによる、アポロ計画を開始するきっかけとなった1961年5月25日のスピーチ(*)の「月に向けたロケットの打ち上げ(ムーンショット)」が、その由来である。

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2019年 8月号 [雑誌] より


現実の延長線沿いに未来をみる日本と、
新しい世界を創造しようとする海外。



平成元年と平成30年の世界時価総額ランキングを比較する度に絶望するが、日本が時価総額ランキングのトップに立っていた時代は確かにあったのだ。現実の延長線沿いに未来を創造する時代が世界一を独占する時代は確かに存在した。しかし30年後の未来は悲惨としか言いようがない。

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言語・立地・政治などの要素が大きく絡んでいるため、この時価総額ランキングの変化と考え方の違いを直結させるのは短絡的すぎる。しかし相関関係が低いと私は思わない。何か根拠があるわけではないが...




壮大なビジョンを持つことが正義なのか?

日本でも壮大なビジョンを持ち、挑戦者を賞賛するべきだ!!と言いたいところだが、コトはそれほど単純ではない。現にアメリカでも「ムーンショット」という考えが時代遅れになりつつある。

ムーンショットは時代遅れで、これからの時代に必要なのは「明確なゴール」だと言われている。ムーンショットが曖昧なコンセプトや、成功へのはっきりした道筋が見えないことを正当化するための言い訳へと成り下がってしまったと指摘しているのだ。この指摘は正直耳が痛くなる。

私は前職でもビジョンを掲げる会社に入社したが、ビジョンがどんな批判・指摘を受けてもカウンタートークができるように抽象化を加速させた。その結果どんな人にでも一定の説得力をもたせることはできたが、現実がビジョンへ前進することはなくなった。ビジョンに酔い、現実を無理やり正当化した先には何もなかった。


ビジョンは正義じゃない。
ビジョンは胡散臭い。


心からそう思った。



ビジョンに共感することをやめた

退職を決断すると同時に、もう2度とビジョンに共感することをしないと決断した。ビジョン共感の先にあるのは、ビジョンに踊らされる人生なんだと教訓になった。これは前職が悪いわけじゃなく、僕が共感という薄っぺらい感情で決断したことが問題だった。


「ビジョンは共感するものでなく、ビジョンは覚悟するもの」なんだと知った。


ビジョンと共に働くとは会社が目指す将来像を明確にし、その未来を実現するまでに起こるであろう理不尽、矛盾、壁、トラブルの全てを乗り越えて実現する覚悟。苦闘に何度も心を破壊され、なぜ自分がこの場所に立っているのかわからなくなっても立ち上がり、意味を自分で創造するために努力すること。道の途中で自分よりも優秀な人間が現れ、今まで積み上げてきた全てが否定されても未来のために受け入れ、惨めさと戦うこと。沢山の苦労を乗り越えて小さな成功を成し遂げても、社会からは胡散臭いと叩かれる。またスタート地点に戻り、改善を繰り返し小さな成功を追求する。信用とは「出来事と解釈」のような瞬間的なものではなく、この小さな成功を積み重ねた歴史の先にある。難易度の高いすごろくをクリアすることでなく、何週したかが問われてくる。


この現実を受け入れて戦うこと。諦めたくなる理由が10000以上見つかる中で、たった1つの諦めない理由を守ること。孤独と戦い続けた先に仲間としか乗り越えられない壁があり、仲間と戦い続けた先にビジョンがある。だから同じ目的に向かって、同じ覚悟で戦える仲間が見つけられたら幸せだ。というか、奇跡だ。

世の中ではこの奇跡を必然だと言う人もいる。
なんとなくそうだなと思える自分もいるが、まだわからないことも多い。今まで以上に人生経験値を高め、この謎を解明していきたい。



最後に

ビジョンに共感することは悪じゃないし、大きなビジョンを掲げることが正義でもない。ただ自分はこう思いましたよという一意見をまとめたnoteでしかない。

あなたにはあなたの世界がある。
それでいいのだと思う。





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