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多様性を失わないために「fairground-ガーリーバイブル in LONDON-」でロンドンガールたちの輝きにふれる|読書記録
人間は年を重ねるごとに多様性を失っていく。筆者は、ふとした瞬間にそう思っては、狭量なおっさんと化していく自分の姿に怯えている。だから、普段自分と接点の少ない情報に飢えているし、自分が持っていない感性を持っている人間と接する機会を創ろうと思っている。
しかしながら現実は、年を重ねるごとに哀れなおっさんへと成り果てていく自らをどうすることもできず、気付けば日々同じような情報を取り入れ、少ない数の知り合いとばかりコミュニケーションを取り、判を押したような毎日を繰り返している。致命的なほどにまずいと思いつつも、変われない。おっさんの性である。
さりとて危機感を持っているのは確かである。このままでは偏屈で惨めなおっさんに成り果ててしまう。好き好んで偏屈で惨めなおっさんになりたいと思う人間がいようか、いるはずはないのだ。ということで、ぬま大学の10期生の厚意を頼り、紹介して頂いた本を読むことにした。
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紹介頂いた本は、「fairground-ガーリーバイブル in LONDON-」である。
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現地のファッショニスタに紹介してもらう、隠れたヴィンテージショップやカフェにマーケット、ロンドンガールたちの私服コーティネートに部屋紹介など、ロンドンの「ガーリー」が満載の1冊。
更に女の子が大好きな世界を、ロンドンで活躍するスタイリストによるフォトストーリーで表現。
開くたびにワクワクする、リアル・ロンドンが詰まった「ガーリーバイブル」!
どうだろう。明らかに偏屈で惨めなおっさんに片足を突っ込んでいる人間が自らの意思で手に取るのは難しそうな一冊でなかろうか。もっとも前述の理由から、女性雑誌やウェブメディアになるべく目を通そうと日々意識している筆者だと、割と興味本位で手に取る可能性はある。
だが、実際問題として存在を知らなければ手に取りようがない。本書は、ぬま大学の講義の際に教えていただいた一冊で、その際に目を通したとき、煌びやかな世界観が目に留まり、ぜひ読んでみたいと思った一冊である。教えてくれてマジ感謝といった感じだ。
というわけで、今回の読書記録は、「fairground-ガーリーバイブル in LONDON-」について書こうと思う。ちなみに写真場所はくるくる喫茶うつみである。意図的に撮影場所を選んだわけでなく、たまたまタイミングが合っただけだが、何となく本書の雰囲気にほんのりとマッチしている気がしないでもない。
「fairground-ガーリーバイブル in LONDON-」|美しい世界観と眩しい価値観が編纂された一冊を読む
「fairground-ガーリーバイブル in LONDON-」は、ロンドンでの生活が長い著者が、素晴らしい感性や輝きを持ったクリエイターや女の子たちに取材をして得た回答、彼女たちのファッショナブルな姿やアーティスティックな景色が写し出された写真を一冊に編纂した書籍である。
ひと目見たときの印象は、『なんて煌びやかで美しい世界観が集められた一冊だろうか』である。ファッション誌のようでありながら、確かに多様な女の子たちの声、思考、想いが記された文学誌でもあるのだ。12名の女の子たちへの取材は、すべて質問が統一されている。
1. イギリスにいる女の子は、自立していて、自分のヴィジョンもしっかりもっていると思います。でもキュート。その秘密を教えて。
2. 子どもの頃のキラキラした心を忘れないようにするには? またどうしたらその頃の気持ちを思い出せると思いますか?
3. インスパイアされるもの、場所
4. ロンドンの好きな場所やショップは?
5. ロンドンについてどう思う? あなたにとってロンドンとは?
6. あなたにとってベッドルームはどんな空間?
7. どんなファッションが好き?
取材先の女の子たちの魅力を存分に引き出し、読者にとって知りたい内容もしっかりと汲み取れる絶妙な質問の数々に舌を巻く。12名の女の子たちに対して同じ質問が投げかけられ、一人一人が自分自身を見事に映し出す回答をしているものだから、強烈な個性、多様性を感じられる。
しかも女の子たちの回答の一つ一つが等身大の彼女たちを赤裸々に伝えていて、だからこそ読んでいると、眩しさのような煌めきを強く感じられるのだ。読者によっては青春時代を思い出して元気になれるだろうし、自分自身の中に若々しさを取り戻して明日を頑張ろうと思えるに違いない。
インタビューへの回答と合わせて掲載されている写真がまた、彼女たちの声を鮮烈に映し出す素晴らしいアイコンになっていて目を奪われる。何せ日常の一コマのような写真の数々が映し出しているのは、等身大の彼女たちの姿だ。それでいてとても絵になっている。
ロンドンの街もヴィンテージの衣服、装飾品、雑貨の数々も、彼女たちの部屋も、そのすべてが等身大の世界でありながら、どこか幻想的で、見れば見るほど引き込まれるのだ。自宅の部屋で撮った写真がこれほどまでに芸術的な1枚として掲載されている本は、中々ないのではなかろうか。
ロンドンという街は、街だけでなく個々の自宅の一室さえアーティスティックで、女の子たちの姿を魅力的に見せる魔法に溢れた世界なのかと思わせられる。本書は、「fairground=移動遊園地」をテーマに掲げているが、1ページ1ページ、すべてがその言葉を体現しているかのようだ。
その意味で、「fairground=移動遊園地」は本書にうってつけの一言であるし、ロンドンという街そのものが「fairground=移動遊園地」に思えてならない。さしづめ女の子たちは、移動遊園地で戯れる妖精といったところだろうか。何せ妖精という表現がぴったりなくらい、彼女たちは魅力的に描かれているのだ。
「fairground-ガーリーバイブル in LONDON-」で語られるクリエイティヴィティの力が照らす田舎暮らし
「fairground-ガーリーバイブル in LONDON-」のインタビュー回答の中で、とくに印象的だったのは、Beth Siveyerの回答である。Beth Siveyerは、Zineと呼ばれる個人や小規模グループによって創られる個人雑誌のクリエイター活動などで有名な人物だ。
彼女の掲げる11のマニフェストの中に、以下の文言がある。
退屈、憂鬱な気分をクリエイティヴィティーによって解決すること。たとえばバンドを始めたり、Zineやアート作品を作ったりしましょう。
筆者がライターだからというわけでないが、退屈な気分や憂鬱な気分をクリエイティヴィティで解決する考え方には大いに共感する。またとても素晴らしい考えだと強く感じる。退屈さや憂鬱さは、ともすると人間を邪悪な世界の住人にしてしまう。
退屈な日々が続くと人間は刺激を求めたがり、法や道徳、倫理観を見失ってしまいがちである。ちょっとした出来心や好奇心で犯罪に手を染めてしまう人間は、世の人々が想像するより多く存在する。また憂鬱さは、人間の命を奪う。憂鬱な日々の繰り返しに耐えられない人間はやはり多い。
退屈な日々の中で憂鬱さを感じられる対象としてよく語られるのが田舎だ。退屈を理由に田舎を捨て、都会へと旅立っていく人々は多い。その考えを筆者は否定しないし、いっそ理解し、共感もする。一方で、退屈さや憂鬱さは、結局のところ自分の心が生み出すものでしかないとも思う。
退屈さや憂鬱さは、自分の在り方次第でどうとでもできる。Beth Siveyerの言葉には、そのたった一つの真実めいたものが詰まっているように感じられた。彼女が言うように、退屈さや憂鬱さは、クリエイティヴィティでどうとでも塗り替えられる。自分の感情はクリエイトできるものなのだ。
たとえば気仙沼市を例に考えてみる。気仙沼市は、よくある地方の田舎町の一つだ。都会に比べたら娯楽は少ないどころから無いに等しい。日常に刺激が同居している都会と違い、日常に刺激なんてまるでないのだ。けれど、人々の誰もが退屈さや憂鬱さに心を沈ませているかというとそうではない。
気仙沼市では、音楽をやっている人々がとても多い。老若男女問わず、多くの人々が楽器を奏で、歌を歌い、何かある都度持ち前のクリエイティヴィティを披露して多くの人々を楽しませている。演奏会などのイベントが、驚くほどに多い。音楽を楽しんでいる人々の心中に退屈さや憂鬱さがあろうはずがない。
気仙沼市には、デザイナーが多い。イラストレーターの姿も見られる。地方の田舎町とは思えないほど、クリエイティブを仕事にしている人々たちがいる。そして彼ら彼女らの多くが、退屈さや憂鬱さをクリエイティヴィティで塗り替えて、面白い町を創ろうと奮闘している。
『自分は楽器なんてできないし、歌も歌えない。デザインとかクリエイティブとかそんな高度な技能は持っていない』そう思う人々は多いかもしれない。しかしながら、クリエイティヴィティを手に入れるのは、それほど難しいことではない。それこそBeth Siveyerが語っている。
ずっと自分のZineを作りたいと思っていたの。でも、実際に手に取ったことがなかったから、どうやって作ったらいいか、その頃はまったくわからなかった。でも何年か前に、友だちがイラストのZineを見せてくれて、Zineってけっこう簡単に作れるんだって気づいたの!
たとえばZine。手作りの雑誌と聞くと『自分に雑誌なんて作れない』と思うかもしれない。しかしそれは大きな誤解である。何せZineには『こう作らないといけない』なんてルールはない。だから、1枚のイラストが描かれた紙であっても、作った人間がZineだと言えばZineである。楽書きを何枚も束ねれば大作だ。
本屋に並んでいる立派に装丁された雑誌だけが雑誌ではないのだ。そもそも今あなたが目にしているnoteには、「マガジン」と呼ばれる機能がある。「マガジン」とは、そう雑誌を指す。けれどnoteの「マガジン」は、本屋に並んでいるような雑誌とは全く違う。
今あなたが読んでいるnoteの記事をまとめたものが「マガジン」である。結局、Zineにしても雑誌にしてもマガジンにしても、作り手が言い張れば、それがZineであり、雑誌であり、マガジンになる。つまりは、クリエイティヴィティなんて、誰が持っているし、誰だって形にできる。
だから、退屈な気分になったり、憂鬱な気分になったりしたら、そうしたネガティブな感情に心を染めるのではなく、目の前の紙にその時の気持ちを書いてZineだと言い張れば良い。きっと、たったそれだけの行動で、あなたの心に浮かんだ退屈さや憂鬱さは塗りつぶせる。
Beth Siveyerが言う通り、退屈な気分や憂鬱な気分はクリエイティヴィティで解決するのが良い。何せ、暗い気持ちを抱えて沈んでいても、幸せな気分にはなれない。クリエイティヴィティに取り組めば、達成感が得られるに違いない。それを誰かに共有すれば、共感してくれる友人ができるかもしれない。
Beth Siveyerは、そんなとても単純で、けれど日常をほんのりとハッピーにしてくれる素敵な真理に気付かせてくれたのだ。もちろんBeth Siveyer以外にも素敵な言葉を届けてきた女の子たちは多い。ぜひあなたも「fairground-ガーリーバイブル in LONDON-」を読んで、あなただけの感動的な言葉や写真を見つけて欲しい。
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