池袋にキングはもういない
それは2015年の冬
東京に行くまで、わりと真剣に池袋に行けばカラーギャングがいると思っていた。それを上京した際、先輩に言ったら「お前何言ってんの?」と本気で心配され、その時初めて失言に気づく。
よくよく調べてみると、池袋ウエストゲートパークは2000年から放送されたドラマだった。当時すでに15年の月日が過ぎていて、カラーギャングは絶滅していたのである。
時間の流れがちがった
カラーギャングのいない池袋はなんだか小綺麗な場所で、何かが起こりそうなワクワクも、思わず食い入るように見てしまうような奇怪な人もいない。のっぺりした空気の流れる丁度いい感じの街に変貌を遂げていた。
結局することもないので、いけふくろうだけ写真におさめ、すぐに帰宅。その日以来足を踏み入れてもいない気がする。
都会は街が変化するスピードが目まぐるしい。ファミマが壊されたかと思えば、弁当屋ができ、それが潰れると牛丼屋に様変わり。狭い場所で再生と破壊を繰り返し経済が回っている。
だが東京から家に帰るのに軽く6時間以上かかる田舎に生まれた人間は、そんなことも知らなかったのである。だって地元にはボンタンを履きこなし、裏地や裏ボタンに妙にこだわる輩で溢れていたから。
田舎でヤンキーは絶滅危惧種ではない
今も昔も少年誌にはヤンキー漫画が常にあり、映画やドラマになることも多い。「ごくせん」「クローズ」「今日から俺は」最近だと「東京リベンジャーズ」「WIND BREAKER」などなど、あげればキリが無いくらいいっぱいある。
もしかしたらヤンキー特有のタテヨコの関係、仲間や絆、タイマンや拳の語り合い的なものにノスタルジーを感じる人も多いのかもしれない。
もう絶滅したかのように、アニメや漫画に描かれるヤンキー。
だが一応平成に生まれ、ゆとり世代ど真ん中くらいの年代である私の中で、ああいう人たちは周りにいっぱいいる先輩であり、友達であり、後輩だった。
IWGPに憧れて
変形学ランを着て、ボロボロの便所サンダルをどこにでも履いていくような先輩が一目置かれていた学生時代。それに見慣れた人間にとって初めてみたIWGPのキングのかっこよさは衝撃的だった。
「都会はヤンキーもなんかおしゃれ」その瞬間胸に刻まれた言葉だ。
残念ながら池袋に彼らはいなかったが。
だがある日の平日、中途半端な時間だったからかガラガラの山の手線の車内で、めちゃくちゃ豪快にカップラーメンを食べる女子高生を目撃したことがある。
なんだ、やっぱり東京にもギャルはまだいた。
この際マナー云々は片隅に置いておこう。電車でラーメンを食べる強者がいたことに、ちょっとばかり安心してしまったことは内緒だ。