名刺代わりの10冊?
名刺代わりの10冊、というお題を見かけるたびに、さて、自分だったら何だろう?と思う人は多いと思う。
だから、このタグで書いている人が多いんだろうな。
それで、私も書いてみることにしました。
何しろ、今、司書なんて本にどっぷりと関わる仕事をしているわけで。
司書さんがどんな本を読んできたかって、ちょっと気になりますよね?
と、思ったのですが・・・。
実は私、本をすごく読んだ時期と、全く読まなかった時期が交互にありまして。
記憶に残っているものを集めたら、とても人にお勧めできるものではなくなりました。
なので、お勧めの本というよりは、自分が衝撃を受けた本、10冊です。
読んだ年代順にならべています。
【1】『空とぶカバとなぞのパリポリ男』 鈴木 悦夫
絶版です。子供の頃に読んで記憶に残っているものがこれしかありません。
「おおばかばかがくけんきゅうしょ」という看板を探して歩く子供達。
「大バカ バカ学 研究所」と思いきや、「大場 カバ 科学研究所」なんでした〜!というのが、子供心に衝撃で、未だに覚えている理由になっています。
昔、子カバにはふわふわの羽が生えていたけれど、乱獲でいなくなってしまった、というお話です。
また読みたいなぁ・・・
【2】『果しなき流れの果に』 小松 左京
壮大なスケールと、難しい時空間理論に胸をわしづかみにされた一冊。
永遠に砂が落ち続ける砂時計。
しかもそれは、白亜紀の地層から発掘されたものだった!
それまで超能力物が好きだったのですが、以降ハードSFにどっぷり漬かることになります。
【3】『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』 村上 春樹
一番最初に読んだ村上春樹作品。
何が面白かったのか今ではもう思い出せないのだけど、文体に惚れたというか、何が書かれていてもとにかくかっこ良かった(笑)
ただ読んでいるだけでシビレてました。しょうがないですね。
【4】『幸福への挑戦―サイコ・サイバネティクス』 マクスウェル・マルツ
なんでこんな本がここにあったのだろう?
そんな出会い方をした本です。
当時働いていた事務所の、ファイルブックが押し込められていたスチールケースの中に見つけ、何の気なしに読み始め・・・
結果的に、仕事を辞めました。
それが良かったのかどうかはわかりませんが、あれから何十年も経って、まだ無事に生きているのだから、まぁ良しとしましょう。
思う事が実現する、という考え方は今ではよく聞きますが、その理屈を脳の機能面から説明してあったと思います。
正確には、思う事を実現させてしまう、というか。
絶版なので、記憶だけですが。
【5】『悪童日記』 アゴタ クリストフ
続きの『ふたりの証拠』『第三の噓』も読むことをお勧めしますが、何より最初の1冊がすごい。
本を開き、読んで、読み終わって顔を上げると、世界が変わっている・・・。
それほどの衝撃を受けた作品です。
自分の倫理観が揺さぶられ、それまで見ていた世界が、まるで違って見えてきます。
感情を、主観を、徹底的に排除する形でも文学が成立する驚き。
第2作では、第1作の設定がひっくり返されて、第3作ではさらにひっくり返されるという・・・人間業とは思えない構成力にも脱帽です。
【6】『不確定性原理―運命への挑戦』 都筑 卓司
【7】『ゲーデル・不完全性定理―“理性の限界”の発見』 吉永 良正
ほぼ同時期に読んだため、どっちがどっちなのかよくわからなくなっています。
題名すらややこしい。
ただ、これらを読んで、世界に正しいことは存在しないんだ、と思った記憶があります。
正しいことには境界がある、境界を区切った所にのみ、そこに通用する正しさは存在する、という感じでしょうか。
その時すごく病んでたんですが、気持ちが少し安らいだような。
あれから大分経ちますが、現在も、この指針は有効に機能しています。
【8】『四次元の冒険 第2版—幾何学・宇宙・想像力』 ルディ・ラッカー
2次元生物のスクエア氏に、3次元生物である主人公が、2次元とは、3次元とはを説明する物語?
2次元世界から見た3次元物体、3次元世界から見た4次元物体の説明に感動して、頭の中で頑張ってシミュレーションしてたなぁ。
この特訓が、後に役に立つ時が来ようとは。
【9】『ホモ・デウス:テクノロジーとサピエンスの未来』 ユヴァル・ノア・ハラリ
サピエンス全史の続編でしょうか。
ぞくぞくする刺激的な思索が展開します。
そうか、人類は、そうなるのか・・・と、衝撃なのか諦念なのかわからないけど、とにかくまぁ、すごいなと。
確かに、進み続けているものを止めることはできないだろうなぁと思います。
人間はどこまでも行ってしまう、というか、どこまでも行こうとするものだという点は、納得できるなと思いました。
【10】『三体』 劉 慈欣
最近読んで、一番面白かった小説です。
こんなに読み終わるのが勿体ないと思ったのは、何十年かぶりくらい。
それくらい面白かった!
11次元が4次元になった理由について、もちろん物理学的にはちゃんとした理論、推論もあるはずだけど、こういう文学的な発想も、小説なのでアリですよね。驚きました。
そして3次元、4次元の脳内シミュレーションの特訓(?)が、まさかここで役に立つなんて(笑)
映像化が楽しみです。
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記憶に残っているものを俯瞰してみると、どうも私は、何かの周辺というか世界のフチというか、自分というものの端っこを探り、それを拡張していく系の本に引かれる気がします。
年を取って、なかなかそういう本に出会えなくなりつつありますが、久しぶりに読んだ小説「三体」はとても面白かったです。
問題は、こんな趣味なんで・・・
小学生中学生向きの本が、なかなか選びづらいというか・・・。
目の前にいる子は、どんな本が好きかな?ということを、いつも考えながら選書しています。
その中に少しだけ、エッジの効いた本を混ぜ込むのが、秘かな愉しみです。
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