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料理のレシピはネットで拾えても、喜びの実感はリアルにしか転がっていない

自分が食べたいと思っていてもなんとなく躊躇してるもんを、みんなもいるし一緒に食べたらいい、と思って、作る。
正月はそんな気分も一層もりあがるのが、いい。

いまひとり暮らしをしてる妹が正月休みで帰ってきた息子と娘を連れて実家に挨拶に来てくれきた。ふだんひとりだと食べたくても作らないのよと言いながらその3人は台所でおでんを手際よく仕込んでくれたその姿は微笑ましくそしてとても沁みた。
父と僕を入れて5人で囲んだ大鍋のおでんはあっという間に底が見えた。良く味がしゅんでて泣けるほど美味かった。

神戸では人気がないのでとんと作らないが昨晩は父と一緒に食べたくて久しぶりに粕汁を作った。酒粕が足りないと注文がついたがどーんと足したら、汗をかきながら父はうまいうまいとワシワシと食べてくれた。

今朝は福井越前出身の父が「味噌の雑煮を作ってくれないか」と言った。水を張った鍋の底に銀杏切りの大根(本来は蕪らしい)を何重か敷いてその上に切り餅(本来は丸餅らしい)を置いてじっくり炊いた。とろっとろになった次に味噌を溶き椀によそいいっぱいのかつおぶしを盛ってハフハフと食らった。父は満足そうに、やっぱり雑煮は味噌がいい!と喜んでくれた。俺も嬉しかった。

実家に帰ると真夜中に台所(なんというか「キッチン」とかましてや「調理場」とは違って、やっぱり「台所(だいどこ)」なんだな)に立つことが多い。
今夜はずっと憧れ続けているチリコンカンを作ってみた。西部劇で無骨で男臭いカウボーイが焚き火で無骨に作って使いにくそうなブリキのスプーンで掻き込む、あのTEX-MEXな豆料理だ。
浪人時代から洋画(MGMミュージカルと西部劇)を観るようになり大学時代からロカビリーにはまったあの頃の俺はアメリカ文化かぶれだった。その頃からチリコンカンは大好きだった。俺にとってDr.Pepperとラッキーストライクとチリコンカンとバーボンはアメリカの味だった。
実家に帰るとあの頃の自分や憧れていた文化をよく思い出す。それで作ってみたくなったのかもしれない。それと、トマト系、辛味系、豆系の好きな父に食べてほしいと思ったのも、その気になった理由のひとつにある。
赤くて平べったい豆は手に入らなかったので大豆で代用したのがビジュアル的になんとも正月和風的ではあるけれども、なかなかどうして、想像以上に美味かった。これなら明日の朝の父からダメ出しも注文もつかないだろう。

料理はいい。
今年は、まずはじぶんが、そしていっしょにすごしている大切なひとが幸せになれる料理を、ひとつでも多くやっていこう。
料理のレシピはいくらでもネットで拾えても、喜びの実感はリアルにしか転がっていないのだから。

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