【ショートショート】右翼街宣車
右翼街宣車はとにかくうるさい。今日も蔵前通りを街宣車が拡張機を使って持論を主張している。ある意味、選挙カーと同じくらいうるさい。旋回するのも選挙カーと同じだ。
そんな右翼街宣車も気を遣ってか、平日にはあまり出てこない。祝日が一番うるさいのだ。
確かに今日は祝日だ。日本国民が祝うべき日である。でもね、仕事している人だっているんだよ。わざわざ祝日に出て来てね。
こちとら今、打ち合わせ中なんだよ!
右翼街宣車が我が社が入っているビルの前の交差点の信号で止まった。街宣車も静かになった。街宣車は停車すると静かになる。これも気を遣ってなのか、何かの対策なのかはわからない。
「ほんとにうるせえなあ」
と僕が呟くと、一緒に打ち合わせをしていた、いつもは物静かな後輩の上島君が、急に外に飛び出し、信号待ちをしている右翼街宣車の元に行き、助手席のドアを開けた。
「うるせえんだよ! お前ら! こっちは仕事をしてるんだよ! 迷惑なんだよ!」
凄い度胸だ。感心するぞ!
すると、すぐに運転手が降りて来た。
こ、こ、これは、やばいかもしれない!
と思ったその時、
「先輩! 申し訳ございませんでした。すぐに移動します!」
それから右翼街宣車は来なくなった。
(完)
※アゲさんの取材記事「街宣右翼に話しかけてみる。」を読んで思い出した、二十年前の出来事を元に書かせていただきました。↓
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