クロスロードの聖者(又はアクマ)の夢《Dream Diary 33》
xxxx年05月29日(x)
真夜中の十字路に立って辻説法をしている人がいた。聞いている者は私一人しかいない。自分はインドから来た聖者だと彼は言う。しかし私の見るところ、本物の聖者なのかどうか甚だ疑わしい。名前を尋ねると、自分はフーチー・クーチー・マンだと言う。ネットのブルース用語辞典には、「Hoochie Coochie Man:女たらし、絶倫男、それも魔術的なパワーを持った絶倫男のこと」と書いてある。なんか凄そうだぞ。でも、どうして黒人ブルース関係のスラングが、インドの聖者の名前なんだ? やっぱり怪しいぞ。ところで、私も拡声器を片手にこの十字路に立ち、社会問題や政治の腐敗について人々に訴えたいわけなんだが、どうもフーチー・クーチー・マンさんが邪魔ですね。何処かへ行ってくれないかな‥‥それはそうと、ロバート・ジョンソンが真夜中の十字路でアクマと契約して、ブルースギターの達人になったという言い伝えはよく知られている。『Cross Road Blues』という有名な曲もある。さてはこいつがそのアクマ野郎なのか? 聖者などと自称しているのが実に怪しい。インドって本当は西インド諸島のインドのことじゃないか? ハイチのブードゥー教の呪術師兼アクマやも知れぬ。すると私の思考を察知した聖者(又はアクマ)が言った。「なーにを仰るあなたこそ、真夜中の十字路に出没すると言う都市伝説のアクマじゃあーりませんか?」。それを聞いて私は、「いや私は社会や政治の問題を訴える振りをして、実は愚にも付かないポエトリー・リーディングを街頭でやって注目を集めて承認欲求を満たしたがっている何処の馬の骨とも分からんケチなポエト野郎に過ぎないんですけど」と、自分の個人情報と言うかつまり真相を語った。すると聖者(又はアクマ)は、「え? マジっすか!? 実はオレもそうなんスけど」と驚いた様子。私は前世からの同志に巡り合ったような懐かしい気持になった。「それじゃあひとつ即興のポエトリーラップを掛け合いでやったりましょうや」。「イイっすねそれ!」。しかしやがて始まったのは、さえない掛け合い漫才以下のだらけ切ったヘロヘロ日常会話以下のポエムともラップとも付かぬヘンテコな代物だった。ところがその頃、辺り一帯の民家では、密かな、それでいて騒々しいラップ現象が、家屋の至る所で生起していたのである。もっとも真夜中だから熟睡中の住人達が気付くことは無く、この不気味な超常現象が江湖に知れ渡ることは遂に無かったのだと言う。
Robert Johnson- 『Crossroad』
Muddy Waters, The Rolling Stones - 『Hoochie Coochie Man』 (Live)
Johnny Winter And 『Rock And Roll, Hoochie Koo』
↑↑↑「Hoochie Koo:安酒」ともブルース用語辞典にあった。
昔、バンドでレパートリーにしていた曲。
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