樹木の名前《#虎吉の交流部屋初企画》
🌳☘️
森で弦楽器をつま弾いても
私は樹木の名前を知らないから
旋律は湖面の光に砕かれてしまう
山麓に歌声を響かせても
樹木が名前を告げてくれないから
コトバは青空遠くへ飛び去ってしまう
樹木はいつだって
樹木だけれど
私は名前を
知りたいのです
🌱🍃
待ち焦がれた 七月の祝祭の日
恋人の胸に飛び込むように
私は森へと 一目散に駆けて行く
森では樹々のそこかしこで
夏の子ども達が忙しく水を運び
葉叢の奥の暗がりから
こだま達が顔を覗かせている
私が呼びかけると
樹木の名前を告げる前に
夏の子ども達は露の玉になって
葉っぱから転がり落ちてしまう
見つめていると
樹木の名前を告げる前に
こだま達は葉叢の奥に引っ込んで
森は星空のように静まり返ってしまう
仕方がないから
私は草むらの中に寝転んで
山麓から運ばれて来る
微かな風鳴りの音を聴いていたら
🌳🪲
やがて森は眩い光の海に変わり
見渡す限りの大海原の向こうから
賑やかな楽隊のパレードがやって来た
夏の子ども達が踊りながら
海の上のパレードに付いて来る
こだま達は翅の生えた魚になって
入道雲から飛び降りて海を泳ぎ
口から大きなあぶくを吐き出してゆく
たくさんのカラフルなあぶくが
大海原をぷかぷか浮かびながら
みんなバラバラに弾けていって
その中から夥しい数の
樹木の名前が飛び出して来た
🐠💦
私が目覚めてしまったのは
🐜働き蟻が耳の穴に迷い込んで来たから
夢の中の樹木の名前は
忙しく働く蟻達に変わってしまった
だけど 耳を澄ませてごらん
還って来たんだよ
つま弾いた弦楽器の旋律が
口ずさんだコトバが
森じゅうに響き渡っているよ
☘️🌲
樹木はいつだって
樹木だから
名前は謎のままで
いいんです
🧜♀️🌳🐛🎻🍃🐟🐜🌲🪲🧜♂️🐠🌱
*虎吉さんの交流部屋初企画に参加させていただきます。
*実を言うと、七月半ば頃に投稿するつもりで以前から作成中だった作品なのですが、最近になって虎吉さんの企画を知り、これで参加できないかなぁと思ったのです。
*虎吉さんの示された季語一覧の中に、必ずしもそのものズバリの言葉は無いのですが(「夏の海」とかはあるけど‥)、〈七月・季語〉でググったところ、いろいろ出てきました。
「七月」「森林浴」「夏の山」「夏の海」あたりで、参加できるかなと思った次第です。元々の詩作の動機としては、「七月の魅力」「七月の樹木の魅力」そして「夏の山や森」「夏の海」のそれぞれの魅力ということです。