ミントの鉢
窓辺に置いた
ミニ観葉植物
ポトス
アレカヤシ
パキラ
ワイヤープラント
ガジュマル
そして
ミントの鉢
みんなカタカナの
名前だから
誰もいなくなると
午後の浜辺で
キラリと光る
ガラス粒の話を
カタカナで
するらしいよ
自分は石英だと
思っていたら
実はガラス粒だった
という話
これを教訓に
それぞれわが身を
振り返ってみたら
ポトスは実は
アレカヤシ
アレカヤシは実は
パキラ
パキラは実は
ワイヤープラント
ワイヤープラントは実は
ガジュマル
ガジュマルは実は
ポトスだったことが
判明した
みんなは少しの間
パニックになったけど
それじゃあ
ミントは何?
誰かが言って
その場に沈黙が流れた
もとよりミントは
観葉植物というより
お菓子に添えたり
料理のアクセントにしたり
オイルを採ったり
みんなの中で
浮いた存在だったから
いずれこうなる事は
分かっていた
やがてミントは
神妙な面持ちで
実はぼくは
うす暗いJR高架下の
打ちっぱなしの
コンクリート壁に付いた
水滴なんだよ
と告白した
きみは偉いなあ
みんなはしきりに
感心している
水滴のぼくは
やがて蒸発して
ひつじ雲になったり
遠くの町の道標を
白く煙らせる
霧になったりするんだ
そしてミントは
これまで旅した
空や海や山や
町や都会や
キスしてくれた
少女の話をした
みんなは感激のあまり
むせび泣いている
不覚にも
私も少しばかり
もらい泣きして
しまった