病院と診察室の夢《Dream Diary 36》
xxxx年/06/04(x)
私は病院の待合室にいた。見ると診察室のドアが開いている。中を覗くと、診察ベッドに高校時代の同級生Kが仰向けに寝ていた。すると、夢の中でしばしば私の傍らにいて、お節介な口を挟んでくるもやもやした雲のようなものが、今回は医師の姿になって診察ベッドの方へ漂って行き、Kのお腹に聴診器を当てて診察し始めた。私の耳にKの心音が聴こえて来る。Kの体内を流れる血液や、リンパ流の音も聴こえて来る。Kの胃の蠕動音や、小腸や大腸を消化中の食物やガスが送られて行く音も聴こえて来る。何て騒々しいんだ。それらの音に紛れて、昔観た映画のオープニング曲が、始めは微かに、次第にはっきりと聴こえて来た。その映画のタイトルにもなっていた、『ブルーベルベット』という曲だ。映画はカイル・マクラクランが主人公を演じていたけど、彼の名前を聞くと決まってギタリストのジョン・マクラフリンを思い出すのはどういう訳なんだ? マッツ・ミケルセンという俳優の名前を聞くと、決まってミッツ・マングローブという名前の兄ちゃんを思い出すのと同じ仕掛けが、病院のボイラー室で作動しているからに違いない。などと思考していたら、待合室に一組の男女が入って来た。映画『ブルー・ベルベット』に出ていた、イザベラ・ロッセリーニとデニス・ホッパーの二人だ。イザベラ・ロッセリーニが言うには、診察してもらいたいのはデニス・ホッパーの方だが、今日はもう夜遅いので、医師に症状の説明だけしたいとのことだった。待合室まで漂って来た雲のような医師に向かって、イザベラ・ロッセリーニがデニス・ホッパーの症状を説明している。重度のメンヘラサイコ野郎症候群らしい。映画の役柄と同じだな。すると診察ベッドに寝ていたKが、「何だよあんたら、明日にすればいいだろう!」と叫んでいる。診察が中断されて相当腹を立てているようだ。もやもやした雲のような医師は彼女の話を聞き終わると、再びKの診察に戻った。やがて診察が終わり、Kはブツブツ文句を言いながら帰って行った。私とイザベラ・ロッセリーニと、メンヘラサイコ野郎のデニス・ホッパーと、もやもやした雲のような医師の四人が待合室に残された。突然、窓の方でコツコツ音がしたので皆が振り向くと、黄金虫に変身して飛んで来たKが、網戸を突き破って診察室に入って来ようとしている。しかし内側のガラス戸が閉まっているので、黄金虫は入ることができなかった。
場面が変わり、私と同級生Kは、殺風景なビルの一室で四・五人の仲間と一緒に床に座り込み、新聞のような印刷物を広げて読んでいた。皆の前には昔レフトの活動家だったローラ・ダーンが立っていて、じゃなかった映画『ブルー・ベルベット』のヒロインだったローラ・ダーンが立っていて、政治・社会的な問題についてレクチャーしている。しかし私もKもそんな事には全く興味がなく、退屈してアクビを繰り返していた。ふと見ると、手にしていた印刷物が白い砂糖菓子に変わっている。私はそれをガリッと齧った。その途端、同級生のKが黄金虫に変身した。昔レフトの活動家だったローラ・ダーン、じゃなかった『ブルー・ベルベット』のローラ・ダーンも、ハラ減った~、ハラ減った~、と歌いながら、自分の砂糖菓子をガリッと齧った。それを見て黄金虫のKがアハハと笑った。私はさほど面白いとは思わなかったが、Kとの付き合いもあるので、フッ、とニヒルな笑いを漏らす振りをした。
『Blue Velvet』(歌)Bobby Vinton
https://www.youtube.com/watch?v=G9vphhob5L0