海辺のレストラン
梅雨の合間の日曜日に
小学校のマラソン大会があった
一年生と二年生が合同で走り
女の子のきみは三十九人中の三十番
お昼ご飯は海辺のレストランへ
「二年生なのに情けない」
パスタランチを食べながら
お母さんとお祖母ちゃんが嘆く
「七人ぐらいぬいたよ」
キッズランチを食べながら
きみは抗議をしている
「がんばって走っていたぞ」
パスタランチを食べながら
ぼくはきみの肩を持つ
内心では 来年に向けて
星一徹ばりの鬼コーチに
変身する決意を固めているのだ
海を望むガラス張りのレストラン
ゆったりと波打つ海上を
汽笛を短く鳴らしながら
タンカーがゆっくりと横切って行く
赤い船底が色鮮やかだ
みんなは暫しフォークを止めて
タンカーを眺めている
「でっかいなー」
「うん」
「でっかいねー」
「うん」
海上遠くにタンカーを見送り
食後のコーヒーを飲み終えた頃
鬼コーチ就任の件は
きれいさっぱり忘れてしまった