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ハン・ガン『少年が来る』を読み、濱口竜介『親密さ』を見た
12/21/24
ハン・ガン『少年が来る』
1980年5月18日に起きた光州事件に関する膨大な資料をもとに書かれた小説だ。
戒厳軍に殺された少年は魂となってゆらゆらと自分の死体を見つめる。その描写が、なんて正確なのだろう、と息を呑む。死者と魂についての、なんと美しく悲しい細やかな表現だろう。まさにそれは想像するしかないことなのに、作家はどうしてそれがわかってしまうのだろう?まるで見てきたかのように。そして、わたしはどうしてそれが正しいと思うのだろう。
無条件に説得力を持つ文章を前にして、この人の書くものは全部読まねばならないという突き動かされるような衝動と感動をおぼえた。
ハン・ガンが同時代に存在してくれて、とても嬉しい。
p63
そうこうして正午近くになったとき、ふと気付いたんだ。
ここに君は居なかった。
ここに居ないだけでなく、君はまだ生きていた。つまり、魂ってものは近くに魂が居たってそれが誰かは分からないくせに、誰が死んで誰が生きているかは、懸命に考えれば分かるものだったんだ。このなじみのない茂みの下で、腐っていくたくさんの体の間で、誰一人知った人が居ないと思ったら僕は怖くなった。
p79
音が聞こえたのはそのときだったよ。
一度に数千発の花火を打ち上げるような爆薬の炸裂音。遠い悲鳴。いっぺんに息絶える音。
驚いた魂たちが体からどっと飛び出す気配。
そのとき君は死んだんだ。
それがどこなのかは分からないまま、君が死んだ瞬間だけを僕は感じたんだ。
12/22/24
濱口竜介『親密さ』(2012)
劇団の稽古をする若者たち。脚本家の男が理屈っぽく、更に悪いことに演出家の彼女に対して暴力を振るうのでムカついてしまう。心のなかで女に対して「別れろ別れろ!」と言いながらながら見ていた。しかし前半の最後、夜明けの橋を渡る長い場面で、言葉と想像力を電車と降りる駅に例えたセリフを語りながら、いつの間にかふたりの手が繋がれていることに気付く。あれ?これで仲直りしたの?
後半は、演劇の本番舞台。前半でセリフのなかった役者たちが前面に躍り出て、まるで異なる姿を見せるのに驚く。ずっとオーラを隠していたかのように。
最後の展開は、ええ?!と思いながらも、こういうこともあるかもしれない、と妙に納得した。映画は電車で始まり電車で終わる。最後が良すぎたおかげで、すべてが良かったと思える映画だった。
写真はSHIN-ONSAIで初めて見た北村蕗のライブ。とても好きな音楽、そして、ファッションや髪型なども含め、とても好きな雰囲気。彼女には、自分がこんなふうに若い頃を過ごせたらどんなによかっただろう、と思うような自由があった。またライブに行きたいな。