マスクの下の笑顔
私は長年、自分の笑顔が嫌いだった。
笑顔慣れしてないから顔が引きつっているのか、見慣れないから好きになれないのか。
接客の仕事は今の仕事が初めてではない。その時は、かなり笑顔の指摘をされた。「もっとちゃんと笑顔して!」みたいな。
「もっとちゃんとした笑顔」って何。全然伝わらんし、分からんがな。と思っていた。その職場は飲食店だったけど、マスクはしないところだった。
さて、今の職場に就職したのは、この感染症真っ只中。今度は、もちろん食堂なので、平時もずっとマスクしている(らしい)のだが、入社した当時からマスクが当たり前なので、どういう状態がマスクなしの世界なのかよく分からない。
マスクをして接客。かなり笑顔が誤魔化せるというか、表情が見えないということで、内心ほっとした。
入社してすぐ、かちこちに緊張していて、笑顔がぎこちないとか、どうのこうのと言われていたら、笑顔コンプレックスがさらに拍車がかかって毎日憂鬱だっただろうなと思う。言われない職場でよかった。
お客さんもマスク。私もマスク。マスク社会万歳。
みんな平等にマスクをしていて、表情が読みにくい。見えにくい。笑顔だって同じ。
でも、ある時気づいた。
マスク越しであろうと、なかろうと相手が笑顔かどうかは、割とわかるものだということ。
声の調子だったり、目の感じだったり、マスクをしていても微かに分かる頬の動きとか。
職場の先輩で、マスク越しの笑顔が素敵な人がいる(素顔の笑顔も素敵)。
やってみようと思った。
マスク越しだから、微妙な笑顔でもなんとかなる。練習だ。
まずは、目の動き。
目が笑おうと思うと、同時に口元も引き上げないといけない。目を細めただけじゃ、笑顔にならない。
次は、声の明るさ。
声を明るくするには、口角を上げて、笑うように言葉を言うと、自然にトーンは明るくなる。
明るく元気よく、とはよく言ったもので、言うのは簡単、やるのは死ぬほど難しい。少なくとも私には。。。
目の動きを気をつけると、声がお留守になるし、声を明るくしようとすると、目まで構ってられない。
そんなこんな、就職してから、もうすぐ1年半。
もう笑顔が足りないとか、上手くできないとか、悩むことも忘れてしまったけど、一昨日美容院に行って、鏡に映る自分を見てはっとした。
マスク越しでも、私、ちゃんと笑えてるじゃない! と。
美容師さんの雑談なんて、嫌いの一言だったのに、相槌を打って、へえとか言って、笑ってる。ちゃんと目が笑ってる。
嬉しかった。
家に帰ってから、マスクなしで笑ってみた。
ちゃんと笑顔だ!!!
私、この笑顔が嫌いじゃないかもしれない。
とてもとても嬉しかった。
マスクで表情が読めないから、顔の表情筋肉がお留守だ。笑顔筋が弱った。という話はよく聞く。
逆もあるのだなと、自分のことで、手前味噌な話だけど発見して、嬉しかった。
このマスク期間は、笑顔の練習ができて、嫌いな自分の笑顔が好きになれる時間だった。
マスクの下でも、笑顔はできる。新しい発見。
もうすぐマスクがない生活に戻るらしい。食堂的には、口紅を塗る人が復活するので、湯のみの洗いが悩ましいことになるらしいけど、新しい私でいられるのが、ちょっとだけ楽しみ。
【余談】
昨日の記事で、落書きをイラストと称して載せたら、なんだかみなさんに見て頂けているようで、ものすごく恐縮している。嬉しかったです!!
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