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ケダモノ喰いの青(完全版)
それを蜪犬と言う。
身の丈は5尺近く。犬の形をした妖魔で、全身が青く人を食う。
男は、虎の顎でその一頭の頸椎を砕き、次いでもう一頭を虎の爪で裂いた。
しかめた顔の目より上は人間で、不快そうに眉根を寄せるとべっと残骸を吐き捨てた。
『童、誰そ彼時に山に入るなと教わらなんだか』
「……」
廃寺の軒先、妖魔に襲われかけた黒髪の少女が震えている。
『口がきけぬか?』
「あ、ありが」
『ケダモノ同士の縄張り
【兎屋】逆噴射小説大賞2020ライナーノーツ【書房】
兎です。
逆噴射小説大賞、みんなは書いたかな。
兎は3つ書きました。
なんかまとめるといいらしいですよ。
まとめますね?
1発目『殺しの左腕にマリッジリング』
「左腕」は「さわん」と読みます。noteはルビ機能を早く実装して役目でしょ。
兎はなーんも事前に考えてなかったので、応募期間が始まってから考えました。
少女に振り回されるおっさんっていいよね、分かりやすい武器と必殺技が欲しいなあ、とか、そ
ジョン”ザ・ヴァンパイア”ハンター
ロンドン、レスタースクウェアにその屋敷はあった。
出入口は二つ。
表通りに面したドアは、生きた患者や客のため。
裏通りに面したドアは、解剖教室で使う死体のため。
その夜、すっかり白くなった髪を撫で付け、ジョン・ハンターは、裏通りのドアから現れた。
間を空けず黒塗りの四輪馬車が目の前に止まり、ジョンは滑るように乗り込む。
「動いたか」
「ええ、先生の仰る通り見張りを付けて正解でした。チャールズ・
殺しの左腕(さわん)にマリッジリング
「ああ!畜生!何でこんな目に!」
地下駐車場。ガトリングの弾を浴び、背中を預けるコンクリート柱は端からじわじわと削られていく。
「おじさまがスケベだからじゃないかしら」
「まだ20代だ!畜生!写真じゃボインだったのに!騙された!」
家出少女の助けてメッセージ(ボインの写真付き!)を受けて、親切にも車で迎えに来たらこのザマだ。待っていたのは身なりはいいが貧相な少女とガトリングガン。車はとっくにお釈迦
魔法少女(少年)は邪神と別れたい
『ぼくと契約して魔法少女になってよ!』
あの日、僕は魔法少女になった。
そう、あの日。
夏の輝く太陽が、喧しい蝉の鳴き声が、暑い空気が、全てが唐突に消え失せた空間。
何もない空から、ソレはズルリと落ちてきて、べチャリと地面に張り付いた。
大きさは人間の子どもくらい。その見た目は控えめに言っても腐り溶けた海産物と粘菌の集合体。大きな一ツ目と無数の小さな目がこちらを見ている。
吐き気を催す臭いを
Quick Punisher〜3分クッキング〜
【例のBGM】
「こんにちは。3分クッキングのお時間です。今日の講師は“包丁女王”伊坂先生です。よろしくお願いします」
場面転換:エプロン姿の女性
「はい、お願いします。今私は大宇ホテルのエレベーターに乗って標的のいるフロアへと向かっています。まずは下拵えです」
テロップ:遠隔操作爆弾の個数、設置箇所
「今日は予め設置してある爆弾を使用しましょう」
スイッチオン
爆発音
同時に到着するエレベーター
機動強襲装甲力士マテバ
その日もマテバは飲んだくれていた。
適当な店で酒を飲む。相撲中継が始まれば変えさせる。
それがマテバの毎日だった。
その日までは。
「よぉ、探したぜ」
「エッ!?オヤカタ大佐!?」
夜の街を二人は歩く。
「まったく。元装甲化力士兵(アーマードリキシ)ともあろうもんが情けねえ」
「元装甲化力士兵だからですよ。敗戦で部隊は解散。お決まりの戦争アレルギーで戦場帰りは大相撲にも戻れねえ。安い恩給で酒
カフェ・ナインへようこそ!
…珈琲の香り…?
「おっ、目が覚めたみてえだぞ!」
眩しい…ここはどこだろう。
「大丈夫か兵隊さん。あんた脱出艇で落ちてきたんだ。おうウージー、ベレッタちゃんに頼んで水もらってこい」
数人の農作業姿の男性がこちらを覗き込んでいる。
「ここ…は?」
「ここか?ここはガニメデの」
「カフェ・ナインですよぉ。はいお水どーぞ。私は店主のベレッタです」
「タイプM92!?」
ベレッタと名乗った女性型ドロイド