兎屋書房
みんながタマモキャットのご飯を食べて、ちょっぴり幸せになるお話詰め合わせ。 お話をたくさん追加した物理書籍通販中 https://ecs.toranoana.jp/tora/ec/item/040031069643/
九条林檎(元No.5)について人類が語ったnoteを蒐集する。 これは外典であり、人類による一方的な観測の結果であり、知ろうとする試みの一端であり、しかして正しさは保証されない。 併せて九条林檎本人のnote( https://note.mu/ringo_0_0_5 )を観測することを推奨する。
平成30年10月 兎は逆噴射小説大賞に応募した。
ゴン、ゴン、と執務室のドアが鳴る。 ノックと呼ぶには些か荒っぽく、そもそもこの部屋にはインターフォンが付いているのでノックの必要はないはずだった。 ゴン、ゴン、ゴン… 鳴り続く音の原因に検討はついていたが、それでもスネイルは手元のモニタを操作し、ドアの外と繋げた。 案の定、そこに映ったのはV.Ⅴホーキンスだ。 カメラが起動したことに気が付いたのだろう。爪先でドアを蹴るのを止め、微笑みとともに両手を塞ぐ2つのカップを掲げて見せる。 スネイルは、はあ、と溜め息をひとつ吐いてから、
⬛︎⬛︎⬛︎ 暗闇と静寂があった。 光もなく、音もなく、男の意識もあったのかどうか。 何時間経ったのか、それとも数分だったのか。暗闇の外から微かに伝わるブースターの音が静寂に終わりを齎す。 ACが一機。曖昧な意識の中でも、癖を通り越して本能に至った戦闘思考が迫り来るものを脳裏に描く。 だが、応戦しようという意思は湧かなかった。幸いなことに(彼にとっては不幸なことかもしれないが)、鼓膜を震わせる音は慣れ親しんだ味方機のもの。 暗闇の近くにACが着陸する。 ゴン……ゴン……と金属
お前は映画『ゴジラ×コング新たな帝国』をみたか? もしお前が怪獣が好きだったり、景気良く破壊されるピラミッドが好きだったり、ゴリラのシャワーシーンが好きだったり、ハイ&ローが好きだったりするのなら、今すぐ観にいくといいだろう。 なぜならお前が好きなものを見られるからだ。 『ゴジラ×コング』が真の怪獣えいがだ。 だが怪獣大好きなお前はこう思ってるだろう。 「どうせ8割方人間ドラマでしょ?ギークボーイが活躍して美人とくっついたりとか、親父が活躍して娘と仲直りとか。それも悪くない
「…………」 「…………」 「……」 「ちょっと、マスターちゃん、聞いてる?」 「えっ」 目の前には折田さん、いや、制服姿のジャンヌ・オルタがいた。 「えっ…と…?」 制服を着た自分を見つけ、次いで周囲をきょろきょろと見回す。喫茶店…? 「へえ、そう。私とのデートで居眠り?いい度胸してるわねアンタ」 テーブルを挟んだ向かいの席で、オルタが拗ねている。 わたしは慌てて首を振る。 そうだった。今日はオルタとのデートの日で、わたしたちは喫茶店へ入ったばかり。 拗ねるオルタに謝罪
深夜、カルデア、食堂で。 「みたらし団子が食べたいんだけど、作れるかな?」 「お安い御用だワン」 「すごい! ここでこんな美味しいみたらし団子が食べられる日が来るなんて!」 「ふっふーん。万物万象我が肉球にあり。何でも頼むが良いぞ」 「今日はオハギが食べたいなあ」 「任せるが良い!」 「苺大福」 「カステラ」 「草餅」 「水羊羹」 「いい加減にせぬか!」 注文されたは桜餅。 タマモキャットがテーブルに叩きつけたトレーには野菜炒め定食。 「注文したも
カルデアの食堂はシェフがたくさん。でも、その日その時、誰がいるかは運次第。 赤い弓兵はお母さん。みんなが落ち着く家庭の味。 小さな聖女は恋する乙女。背伸び夜更かし大人の階段。 狂気のケモノはサブチーフ。料理の腕は確かだが……? 「呼ばれて飛び出てジャガーマ~ン!」 「げ」 「いえーい! カルデア猫食堂サンオクニンの読者のみんな! おーまーたーせー! みんなの声に応えてー……ついに! やって来ちゃったよーん!」 深夜、どったんばったん足音響かせ、どかんと扉を開
カルデアの食堂は夜も賑やか。 でも、その日その時、誰がいるかは運次第。 赤い弓兵はバーテンダー。どんなカクテルも思いのまま。 酒呑みの鬼は酒造り。飲ませる相手はひとりだけ。 狂気のケモノはサブチーフ。大人の相手も得意だが……? からんからん、とドアベルが鳴る。 意を決して押し開けた扉の向こうはカルデアの食堂。いつもご飯を食べて、おやつをもらって、みんなと楽しくおしゃべりをする慣れ親しんだ場所。でも、この時間、夜の食堂は、見知らぬ大人の世界になっており、私
カルデアの食堂はお酒も豊富。でも、その日その時、誰がいるかは運次第。 赤い弓兵はワインも完璧。ソムリエだってお手のもの。 白い聖女は黒いの大好き。黒い人にはナイショだよ。 狂気のケモノはサブチーフ。お酒ももちろん詳しいが……? 最近酒呑のヤツが怪しい。いや、あいつは鬼で、もちろんいつだって怪しンだが、最近は特に、だ。デンジャラスキャットと内緒話をしたり、食堂にこそこそと何かを運び込んだりしてやがる。 「絶対怪しいぜ。ほっといて大丈夫なのかよ」 「君の心配も分からな
カルデアの食堂はスイーツも充実。でも、その日その時、誰がいるかは運次第。 赤い弓兵は大人気。ウェイターとしても大人気。 黒い聖女は甘いの大好き。お友達にはナイショだよ。 狂気のケモノはサブチーフ。お菓子の腕も確かだが……? 「あら、ジャンヌ。今日のティータイム担当はキャットさんだけみたいよ? 行かなくていいの?」 「えっ⁉︎ 本当ですか⁉︎」 マリーの言葉を受けて私は自室を飛び出した。 「ありがとうございます! このお礼はいずれ!」 「いってらっしゃい。あの
カルデアの食堂はスイーツも充実。でも、その日その時、誰がいるかは運次第。 赤い弓兵は大当たり。和菓子洋菓子何でもござれ。 二人組の少女はパンケーキ専門。形は変でもボリューム満点。 狂気のケモノはサブチーフ。お菓子の腕も確かだが……? ああ、私は一体何を間違えたのかしら。 午後三時過ぎ。ティータイム。カルデアの食堂で私は考える。 テーブルの向かいには忌々しい白い聖女。二人して注文した品を待っている。 この時間帯の食堂は、甘いものを求めるサーヴァントで混み
カルデアの食堂は今日も大繁盛。でも、その日その時、誰がいるかは運次第。 赤い弓兵は大当たり。栄養満点母の味。 黒い弓兵はSSR。出現率も味も五つ星。 狂気のケモノはサブチーフ。料理の腕は確かだが……? なんだか夜中に目が覚めて、なんだかそのまま眠れなくって、わたしはなんとなく部屋を出た。どこもかしこもまっくらで、廊下をうろうろさまよって、灯りを見つけて扉を開けると、出迎えたのは猫の人。 「おや、どこの夜ふかしガールかと思ったらバニヤンではないか。いらっしゃい
カルデアの食堂。かつて職員が虚しく保存食を貪っていたそこは、数多のサーヴァントの出現によって変貌を遂げた。あまりに貧しい食生活に憤慨した一部サーヴァントが厨房を占拠。否応無しに彼らの料理がふるまわれることとなったのだ。 とはいえ、その日その時、誰がいるかは運次第。 赤い弓兵は大当たり。マズイ飯など出るはずもなく。 色々と大きな少女は修行中。味には期待できないが、固定ファンは多い模様。 狂気のケモノはサブチーフ。料理の腕は確かだが……? 深夜、食堂の扉の
お前は映画「トップガン・マーヴェリック」観たか? 観ていないのなら今すぐ最寄りの劇場で上映スケジュールを調べ、観に行け。 迷っている場合じゃない。考えるな。行動しろ。 …まだ観に行くかどうか迷っているやつがいるのか。 仕方がないので、ひよっこのお前たちの背中をこの記事で押してやることにする。 ネタバレにはまあまあ配慮するが、各自自衛しろ。 おれはお前のママではない。インターネットの荒野で観てない映画の情報収集をするならそれくらいはやれ。 この映画は大昔の大ヒット映画「トッ
ザ・バットマンを観てきた。 観てきたのでつらつらと感想を書き連ねていくが、ネタバレに配慮などしないのであなたは自分の身を自分で守る必要がある。 ただ、この映画はネタバレを踏んだからといって面白さが大きく減衰するような映画ではないので気にせず読んでも良い。 兎としてはさっさとブラウザを閉じて映画館に行き、ザ・バットマンの次の回のチケットを買うことをお勧めするが、全てはあなたの選択だ。人生は選択の連続だ。 始めよう。 とにかく暗い あなたはザ・バットマンのポスターなり予告編
それを蜪犬と言う。 身の丈は5尺近く。犬の形をした妖魔で、全身が青く人を食う。 男は、虎の顎でその一頭の頸椎を砕き、次いでもう一頭を虎の爪で裂いた。 しかめた顔の目より上は人間で、不快そうに眉根を寄せるとべっと残骸を吐き捨てた。 『童、誰そ彼時に山に入るなと教わらなんだか』 「……」 廃寺の軒先、妖魔に襲われかけた黒髪の少女が震えている。 『口がきけぬか?』 「あ、ありが」 『ケダモノ同士の縄張り争いだ。礼などよせ。何があった』 「村に妖魔が、群れで、逃げて、兄様が、戻るって
それを蜪犬と言う。 身の丈は5尺近く。犬の形をした妖魔で、全身が青く人を食う。 男は、虎の顎でその一頭の頸椎を砕き、次いでもう一頭を虎の爪で裂いた。 しかめた顔の目より上は人間で、不快そうに眉根を寄せるとべっと残骸を吐き捨てた。 『童、誰そ彼時に山に入るなと教わらなんだか』 「……」 廃寺の軒先、妖魔に襲われかけた黒髪の少女が震えている。 『口がきけぬか?』 「あ、ありが」 『ケダモノ同士の縄張り争いだ。礼などよせ。何があった』 「村に妖魔が、群れで、逃げて、兄様が戻るって」